造り手それぞれの、土地それぞれの個性を活かしたビールとして認知も進み、すでに国内に1000近い醸造所が誕生しているクラフトビール。おそらく『@DIME』読者の皆さんの中にも愛好家が多くおられるはずだ。
中でもキリンビールが展開するクラフトビール「SPRING VALLEY BREWERY」(以下SVB)は台風の目。その規模感からみても「SVBを起点に日本にクラフトビール文化を根付かせてみせる!」というキリンビールの強い決心が伺える。
1870年横浜で創業した「スプリングバレー・ブルワリー」。キリンビールはその跡地に開業した醸造所から生まれたルーツがあり、現在でも「キリンビール横浜工場」を操業するなどつながりは強い。そのキリンビールと横浜市、および横浜発のクラフトブルワリーが「クラフトビールと言えば横浜!」と言われる街づくりを実現すべくタッグを組むこととなった。
全国的にも珍しいクラフトビールの大規模な官民連携
クラフトビールはもとより地域と造り手、そしてファンのつながりが深いビールである。キリンにとって横浜はゆかりの地であり、横浜には多くのクラフトブルワリーがある。そしてエリアである横浜市には多くの市民、多くの観光客を集めるオンリーワンの魅力がある……。クラフトビール=横浜を打ち出すことは、三者にとって、いや市民やファンを含めた四者にとってメリットしかない。
だが事は簡単ではない。それぞれに固有の狙い、そろばん勘定があるだろうから。今回立ち上がった「Yokohama クラフトビールアソシエーション」の会長に就任したキリンビールのクラフトビール事業部長の大谷哲司氏は、
「これまで以上の連携をはかると同時に品質の向上を通じて商品の魅力を高め、クラフトビールシティ横浜を実現させたい。主役はあくまでブルワリーの皆さんです!」とその狙いを語る。全国的にも珍しいクラフトビールの大規模な官民連携であると同時に、キリンビール(大企業)や横浜(自治体)主導ではなく、あくまで地の物、ハマのクラフトビールが主役であると強調する。
キリンビールにとっても、横浜市にとっても、この連携を通じてヨコハマクラフトが周知されればメリットがあるはずだが、狙いはその逆。つまり横浜との横浜のクラフトビールが知られ、ファンが生まれれば、波及効果として両者にもメリットが生まれるという利他的プロジェクトという側面が大きい。要するに、キリンビールも横浜市も、クラフトビールブルワリーと共に汗を流したいのだ。5年、10年のスパンで目標を達成に漕ぎつける長期展望だ。
周知に向けてのターボイベントとして最大のものは2027年開催の「横浜国際園芸博覧会」である。国内外からの観光客が見込まれるこのイベントで「ヨコハマ=クラフトビール」を一気に知らしめたい狙い、そのための今このタイミングでのヨーイドンなのである。
またアソシエーション参加ブルワリーのひとつであるSVBにとっても、新しい“コト始め”。
それというのも「キリンビール横浜工場」内の小規模醸造所を「SPRING VALLEY BREWERY 横浜」と新たに命名し、ブリュワーの創造性に特化した商品を「BREWERS LINE」シリーズとして展開するからだ。
「BREWERS LINE」シリーズ「#0」/11月18日よりAmazonおよび横浜市内のイオン11店舗で取扱中。価格オープン。数量限定醸造で約2万本を販売というから取り急ぎゲットすべし!
さっそく栓を抜いて注いでみれば、説明書きにいつわりなし! ほとんどスパークリングワインのような液色、小さめの泡と香り高さは、一般的なピルスナービールとも、クラフトビールの代名詞IPAとも明確に異なるキャラクター。パチパチとスピーディに弾けるスパーク感は、新シリーズの開幕に相応しい祝祭感の表現か。祝祭、祭典つながりで、ストラヴィンスキーの「春の祭典」を聴きながら楽しめば、、、とも思ったが、奇妙な変拍子に悪酔いしてしまうかも知れない、やめておこう(笑)
2026年の酒税一本化によりビールには追い風が吹くと予想される。人口が減少に向かい、若手は必ずしもお酒を嗜まない時世においてなお、土地とビールが人を惹きつけるトリガーになることは容易に想像がつく。
「Yokohama クラフトビールアソシエーション」とSVB新シリーズ「BREWERS LINE」の成功と飛躍を祈願して、乾杯!
取材・文/前田賢紀
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