『小正月』は毎年1月15日に行われ、旧暦では正月の日でした。『餅花』や『繭玉』を飾り、小豆がゆを食べるほか、各地で『どんど焼き』などの行事が行われます。
目次
小正月はいつ行われ、どのような意味を持つ日なのでしょうか?まずは、正月との違いや旧暦との関係性も含めて詳しく解説します。
小正月はいつ・どんな日?
■小正月は毎年1月15日に行われる
小正月は毎年1月15日に行われる行事で、地域によっては14〜16日にかけて祝われます。正月の締めくくりとしての意味を持ち、『大正月』(1月1日)に比べて家族中心の穏やかな行事です。
女性たちが年始の慌ただしさを終え、家の中で落ち着いて新しい年を迎える日とされてきたことから、大正月が『男正月』と呼ばれるのに対し、小正月は『女正月』とも呼ばれます。
この時期には正月飾りを片付けて、一年の区切りを付ける習慣も見られます。地域によっては7日や20日に行う場合もあり、小正月は『正月事終い』としての意味合いも持っているのです。
■小正月は旧暦の正月
小正月が1月15日に定められた背景には、旧暦(太陰太陽暦)の考え方が深く関係しています。かつて日本では、月の満ち欠けを基準に暦を作り、新月を1日、満月を15日としていました。
1月15日は、一年で最初の満月の日にあたることから特別な意味を持っており、昔はこの満月の日を正月として祝っていたそうです。後に新暦が採用され、1月1日が正月として定着した後も、この満月を祝う風習は小正月として残りました。
古くからこの日は、豊作や家族の健康を願う祈りの行事が行われ、人々が一年の安寧を祈る大切な節目とされてきたのです。
小正月の主な風習と行事

日本各地で、さまざまな伝統的な風習・行事が今も大切に受け継がれています。ここでは、特徴的な飾りや祭り、行事食など幅広く紹介します。
■餅花・繭玉
伝統的な風習として、『餅花(もちばな)』と『繭玉(まゆだま)』があります。
餅花は、柳やヌルデなどの木の枝に、小さく丸めた紅白の餅・団子を付けた飾りで、稲穂に見立てているのが特徴です。五穀豊穣を願う予祝行事として、各地に伝わっています。
一方の繭玉は、蚕の繭を模した白い団子で、養蚕が盛んだった地域では特に重要視されてきました。「蚕が大きく立派な繭をたくさん作るように」という願いが込められています。
これらを神棚や家の周りに飾ることで、一年の豊作や幸運を祈願したのです。地域によって呼び名が異なり、『粟穂稗穂(あわぼひえぼ)』『稲の花』『団子飾り』などと呼ばれています。
■どんど焼き・左義長
小正月に欠かせない伝統行事として挙げられるのが、『どんど焼き』です。この行事は地域によって『左義長(さぎちょう)』『道祖神祭(どうそじんまつり)』『鬼火たき』など、さまざまな名で呼ばれています。
どんど焼きは、青竹やわらでやぐらを組み、各家庭から集めた正月飾りや書初め、前年のお守りなどを一斉に焼く火祭りです。
この火には神聖な意味があり、年神様をお送りするための送り火の役割を果たします。また、五穀豊穣や無病息災、家内安全を願う重要な儀式でもあるそうです。
火祭りの起源は、平安時代の宮中行事である左義長にさかのぼるといわれています。陰陽師がうたいながら縁起物を焼く儀式が、民間にも広がっていったと考えられています。
■小豆がゆ・かゆ占い
小正月には、赤い小豆を入れたかゆ『小豆がゆ』を食べる風習があります。この赤色には邪気を払う力があると古くから信じられており、その年の無病息災を願う意味が込められています。
平安時代の『枕草子』や『土佐日記』にも小豆がゆの記述があり、伝統ある行事食であることが分かるでしょう。西日本では小豆がゆではなく、おぜんざいを食べる地域も見られます。
小豆がゆには占いの側面もあり、これを『かゆ占(かゆうら)』と呼びます。竹筒や棒をかゆの中に入れてかき回し、それに付いた米粒・小豆の数で、一年の天候や作物の豊凶を占うのです。
かつては各家庭で行われていた行事ですが、現代では主に神社の祭礼として残っています。
地域に残る小正月と関連する行事

地域によって、小正月にまつわる多種多様な行事が伝承されてきました。最後に、古くから続く地域色豊かな伝統行事について詳しく見ていきましょう。
■庭田植え・もぐら打ち
『庭田植え』は、主に東北地方で見られる豊作祈願の行事です。一家の主人や年男が、庭の雪にもみ殻をまいて畝(うね)を作り、松葉や切り藁を早苗に見立てて挿します。
この田植えの動作を模倣することで、豊作を祈願するのです。神社では『御田祭り』『田遊び』として神事化されており、農耕文化の中で大切に受け継がれてきました。
『もぐら打ち』は、全国各地で行われる伝統行事で、特に東北・北陸・九州など各地に分布する豊作祈願・害獣除けの儀式です。内容は地域ごとに異なり、例えば九州では竹や棒で地面を叩き、作物を荒らすモグラなどの害獣を追い払って豊作を願います。
同様に『鳥追い』という行事もあり、田畑を荒らす鳥を追い払うことで豊作を祈ります。いずれも害獣・害鳥から作物を守るという、実用的な意味を持つ伝統行事です。
■スネカ・アマハゲ
小正月には訪問神が家々を巡り、五穀豊穣や無病息災を願う独特な行事も残っています。
岩手県に伝わる『スネカ』は、小正月の晩に家々を訪れる来訪神です。犬のような面を着け、海辺の地域らしくアワビの貝殻を衣装に付けており、歩くとガラガラと音を立てて子どもたちを怖がらせます。
名前の由来は、囲炉裏で怠けて赤くなった脛(すね)の皮を剥ぐという意味の『脛皮たくり』から来ています。
一方、山形県では、若者たちが鬼や翁の面を着け、ケンダンと呼ばれるわらの衣装をまとって各家を訪問する『アマハゲ』が有名です。集落ごとに特徴が異なり、甲高い奇声を上げながら訪れる集落もあれば、完全に無言で回る集落もあります。
風習を大切にし、小正月を祝おう

小正月は、毎年1月15日を中心とした行事で、大正月を締めくくる節目として古くから祝われてきました。餅花や繭玉といった飾り付け、どんど焼きや左義長などの行事、小豆がゆを食べる習慣など、さまざまな風習が伝わっています。
また、庭田植えやもぐら打ち、スネカやアマハゲなど、地域独自の伝統行事も数多く残されています。これらの風習は地方によって特色があり、日本の季節の節目を彩る大切な文化です。今もなお各地で受け継がれ、小正月の豊かな伝統を守り続けています。
構成/編集部







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