昆虫博士が絶賛！虫のくらしや生態を学ぶのにおすすめの3冊

小さな体で地球を制した昆虫たち。その驚くべき生存戦略には、私たちの暮らしや社会に応用できるヒントが隠されている。擬態、共生、進化の工夫――昆虫の視点で自然を見つめ直すと、世界の見え方が変わるかも？

今回は、昆虫の知恵と魅力を深く味わえる3冊をご紹介します。

〈選者〉昆虫博士 牧田 習さん
博士（農学）。2020年に北海道大学理学部を卒業。同年、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学し、2025年3月に同大学院博士課程を修了。著書に『昆虫博士・牧田 習の虫とり完全攻略本』（小学館）などがある。

昆虫たちの生きる術から新たな視点を──

『昆虫たちの世渡り術』

著／海野和男　河出書房新社　1430円

　昆虫たちは地球で最も繁栄した生き物で、それぞれの種類が独自の術で生き抜いてきた。本書は日本を代表する昆虫写真家である著者がそんな昆虫たちの〝世渡り術〟について分かりやすく記した本である。

　忍者顔負けの巧みな擬態術に始まり、共生や求愛、集団行動といった私たちが実感しやすいジャンルの術も長年にわたる著者の経験や目線に基づいて記されており、昆虫から学べることの豊かさを感じられる。これはまさしく昆虫たちの生存戦略の賜物と言えるであろう。また、昆虫から学べる術は多いが、彼らを苦手とする人の割合は増えつつある。本書では、〝嫌われものの虫〟についてもまとめられており、非常に興味深い。

　人類よりも遥かに長い間、繁栄してきた地球の先輩である昆虫たちの世渡り術を学ぶことで、私たちのくらしに生かせる新たな視点が生まれるはずだ。

これを読めばチョウを見る目が変わる！

『チョウが語る自然史　―南九州・琉球をめぐって―』

著／福田晴夫　南方新社　3080円

　チョウは昆虫の中でも特に自然環境の変化を受けやすいグループであり、私たち人類に様々なことを教えてくれる。本書では南九州・琉球地域に焦点をあて、現在にいたるまでどのような自然史をたどってきたかが語られている。加えて、そこでチョウをはじめとする生き物たちがどのような道を歩んできたかについても記されている。気候変動や人間の活動などによって現代も変化しつづけているチョウ類の分布の変化などについてもまとめられており、本書を読むと日常で見かけるチョウたちを見る目も変わるに違いない。

　また、長年チョウの研究をしてきた著者より、今後、私たちが昆虫や自然とどのように向き合っていくべきかについても提言がなされている。環境問題が注目される現代において、チョウを通して自然環境について深く考えることのできる本書をおすすめしたい。

驚きの見た目や生態を持つ昆虫を解説

『やりすぎ昆虫図鑑　進化しすぎの虫たち』

監修／岡村 茂　イラスト／川崎悟司　宝島社　1320円

　地球上では私たち人類が発見しているだけで100万種以上の昆虫が知られているが、それぞれの種類が素晴らしい個性を持っている。本書では、その中でも目を疑うような衝撃的な見た目を持つ種類や驚きの生態を持つ種類など、まさに〝やりすぎ〟な昆虫70種を立体感のある可愛らしいイラストとともに紹介している。それぞれの種類の外見のポイントや個性的な生態などの〝見せどころ〟を分かりやすく表現しており、昆虫が苦手な人でも興味を持って読みやすい。また、昆虫図鑑らしく、それぞれの基本情報などもしっかり記されており、理解をより深めることもできる。

　地球上の生物の約6割は昆虫と言われており、生物多様性の根幹をなす生き物といえるが、本書を読めば見た目や暮らしぶりなど、様々な観点から彼らの多様性を感じ取れるに違いない。

撮影／黒石あみ（書籍）、土橋位広（人物）　編集／寺田剛治