人が生活するうえで、毎日使うトイレ。これまでのトイレといえば、きれいに、快適に使えること、つまり物理的な性能だけが求められていた。
しかしそれに、デジタルの力で新しい価値を持たせようと挑戦しているメーカーがある。住宅設備機器メーカー大手のTOTOだ。
同社は今年8月から、新機能「便スキャン」を搭載したウォシュレット一体形便器『ネオレストLS-W/AS-W』(54万2300円〜/49万3900円~)の販売を開始した。「便スキャン」とは、読んで字の如く、使用者の便をスキャンする機能。便の形・量・色を自動で計測し、スマホアプリに分析結果や役立つ情報を届けてくれる。
便スキャンセンサーが投光・受光を繰り返して便情報を読み取り!

便スキャンのセンサーには、バーコードやコピー機のスキャナーにも用いられる「ラインセンサー」を採用している。便が便器の中に落ちていく動きを連続で撮影し、複数の像を組み合わせて1枚の画像を生成。便の形状や色を捉える。コピー機の場合はセンサー本体が動いて読み取りを行なうが、便スキャンの場合は固定されたセンサーが、落下する便を検知するしくみだ。
ウォシュレット内蔵のセンサーが落下する便をスキャン

「便スキャン」の心臓部であるセンサーの開発を担ったTOTO ウォシュレット開発第一部の酒井雄太さんによると、その構想は5年以上前からあったという。
「2019年冬から構想がスタートし、21年のCESで『トイレでのデータ活用を始める』という趣旨の発表を行ないました。当時は様々な機能を盛り込みたいと考えていましたが、技術的な障壁もあり、今回は『便スキャン』単独での搭載となりました」
酒井さんが「便スキャン」の開発において苦労したポイントは、分類基準の数値化だ。というのも、便の状態分類は、従来「バナナ状」といった見た目の表現に頼っていた。しかし「便スキャン」を開発するうえで、これを定量的な指標にする必要があった。そこで、測定データと便の写真を社外の有識者に分類してもらう形で基準を策定。大きな壁を突破した。
毎日の便の状態をアプリが通知してくれる!
毎日の便の情報はアプリに送られ、グラフ化される。1週間・1か月の傾向を分析したレポートに加え、運動のすすめや、睡眠環境の提案など、最新の状況に基づいたアドバイスも受けられる。

長い開発期間を経て、「便スキャン」を搭載した機種が誕生した。24年4月から、TOTOはこれまで掲げていた企業の重要課題「きれいと快適」に対して「健康」を新たに加えた。酒井さんは「まだまだトイレの中で取れる情報はあると考えています。新たな気づきとなる情報をお客様に提供するため、日々模索しています」と語る。TOTOの今後の取り組みにも期待したいところだ。
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取材・文/畑野壮太
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