初夢はいつ？「一富士二鷹三茄子」の後に続く「四扇五煙草六座頭」の意味

『初夢』を気にするのは、日本特有の文化です。しかし、いつ見る夢のことなのか、はっきり分からない人もいるのではないでしょうか。

まずは、いつ見るのが初夢になるのか、由来と併せて解説します。

初夢はいつ見るもの？

■新年を迎えて最初に見る夢のこと

初夢とは、一般的に1月1～2日にかけての夜に見る夢を指します。しかし、大みそかから元日、または1月2～3日に見る夢だという説も間違いではありません。

例えば、1日の夜に見なかった場合は、2日の夜に見た夢を初夢とする考え方もあります。鎌倉時代には、節分から翌日にかけて見た夢を初夢と考えており、現在のように大みそかから1月3日までのいずれかとなったのは、江戸時代に入ってからだといわれています。

あまり厳密に考えすぎず、年が明けてから最初に見た夢だと捉えておけばよいでしょう。

■初夢の由来は夢占い

初夢の由来は、古くから日本人が大切にしてきた『夢占い』にあります。鎌倉時代には既に『初夢』という考え方が存在し、関連する短歌も読まれていました。

当時の人々は、夢を神仏からのお告げと考え、特に新年に見る夢はその年の運勢を占う重要な手がかりとして重視していたのです。江戸時代になると、初夢は特に縁起を担ぐ文化として発展しました。

『一富士二鷹三茄子』という言葉も、この頃に広まったとされています。また、室町時代からは良い夢を見るために、枕の下に宝船が描かれた絵を敷いて寝るという風習も生まれました。

縁起の良い夢とされる「一富士二鷹三茄子」

縁起の良い初夢として知られる『一富士二鷹三茄子』は、江戸時代から伝わる日本の伝統的な言い伝えです。初夢にこれらが登場すると、その年が幸運に恵まれるとされています。

それぞれどのような意味を持ち、なぜ縁起が良いとされるのか見ていきましょう。

■「一富士」は不死や立身出世の象徴

富士山が出てくる初夢は、特に縁起が良いとされています。日本一高い富士山は、古来より立身出世や運気上昇を象徴する存在だからです。

『富士』という言葉は、『不死（ふし）』『無事（ぶじ）』に通じることから、健康長寿・家内安全を願う縁起物として重宝されてきました。富士山の広大な裾野は末広がりの形をしており、商売や子孫繁栄の象徴ともされています。

また、富士山は見る方角や季節、気象条件によって姿が千変万化する山です。特に、夏の朝日に照らされて赤く染まる『赤富士』は珍しい山姿で、厄よけや商売繁盛、願望成就などの効果があるともいわれています。

■「二鷹」は運気上昇の意味

2番目の『鷹』は、運気上昇を象徴する存在です。空高く舞い上がる鷹の姿は、その年が『飛躍の一年』になることを暗示しています。

鋭い目で獲物を見つけ、強い爪でしっかりと捕らえる鷹の習性から、『チャンスを確実につかみ取る』運気の象徴ともされています。また、『鷹』と『高い』という語呂合わせから、地位や名誉の向上、大きな目標の達成などを表すといわれている初夢です。

『二鷹』というのは、かつて2番目に高い山といわれていた『愛鷹山（あしたかやま）』に由来しているという説もあります。

■「三茄子」は「成す」の語呂合わせ

3番目に挙げられる『茄子（なすび）』は、『成す』という言葉との語呂合わせが由来となっています。何かを『成し遂げる』、願いを『成就させる』という意味合いから、初夢に茄子が出てくると、その年の目標達成・計画の実現が期待できるとされています。

江戸時代の茄子は、現代と違って高級な野菜でした。特に静岡市の三保地区で栽培された初物の茄子は、徳川家康も好んだとされる貴重な品だといわれています。

また、茄子は種が多いことから、子孫繁栄の象徴とも考えられていました。初夢に茄子が出てくることは、家族の繁栄や子孫の発展も意味しています。

あまり知られていない「四扇五煙草六座頭」

『一富士二鷹三茄子』の後に続く『四扇五煙草六座頭』も、縁起の良い初夢です。以下、それぞれの具体的な意味や由来について見ていきましょう。

■「四扇」は子孫繁栄・商売繁盛

『四扇（しおうぎ・しせん）』は、新年の商売繁盛や家運隆盛の吉兆と考えられています。

扇の最大の特徴は、末広がりの形状です。この形が将来への発展や広がりの象徴となり、子孫繁栄・商売繁盛を願う縁起物として古くから親しまれてきました。

また、扇は祭り・舞踊などの伝統芸能で頻繁に使われる小道具でもあり、祝いごとや幸福を連想させます。扇は『あおぐ』という動作にも通じており、物事が順調に進む追い風を得られるという意味としても受け取られます。

■「五煙草」は運気上昇

『五煙草（ごたばこ）』は、縁起が良いとされる5番目のモチーフです。由来には、江戸時代の文化的背景が深く関わっています。

江戸時代の煙草は、現代よりもはるかに価値の高い嗜好品で、特に祭り・宴会など人々が集う場で楽しまれる特別なものとして扱われていました。この『ハレの場』の象徴としての性質が、縁起物としての地位を確立させたのです。

また、煙草を吸ったときに煙が昇る様子が、『運気の上昇』『出世』の象徴として捉えられています。

■「六座頭」は「けがなし」の意味

『六座頭（ざとう）』の『座頭』とは盲目の琵琶法師や、近世では三味線の演奏・按摩・鍼治療などを行う人々を指します。

座頭が縁起物とされる理由は、髪をそった姿の『毛がない』と『けがない』の語呂合わせにあり、無事故・家内安全を示唆すると考えられていました。

江戸時代の人々の生活に身近だった座頭は、現代では少しなじみが薄くなりましたが、今もなおその年の無病息災を示す吉兆と受け取る考え方が残っています。

初夢に見ると縁起が良いとされるその他の夢

見ると縁起が良い夢は、ほかにもいくつかあります。例えば、『蛇』『お金』『太陽』などは、基本的にポジティブな兆候の現れというのが、夢占いによる考え方です。それぞれの夢について、具体的に見ていきましょう。

■蛇

初夢で蛇が登場する場合、一般的に金運・財運の上昇を示す吉兆と捉えられています。古来、蛇は東洋・西洋問わず、幸運をもたらす神聖な生き物として崇められてきました。

特に、白蛇や金色の蛇は強い縁起物とされ、夢に出てくるとその年の金運アップが期待できるといわれています。白い蛇は、神様に仕える神聖な存在の象徴であり、家の守り神としても大切にされてきました。

蛇は、脱皮する特性から『再生』『変容』のシンボルでもあり、人生における重要な転機・変化を示唆することもあります。一方で、黒い蛇や獰猛な蛇に襲われる夢は、何らかの警告を示していることもあるため、状況によって解釈が変わります。

■お金や宝物

お金や宝物は、その年の金運上昇を暗示する縁起物です。初夢に出てくると、転機や目標達成が近づいている吉兆といわれています。

ただし、夢の中でのお金の状況によって解釈は変わります。例えば、お金を払う場合は逆夢として捉えられ、予期せぬ臨時収入が期待できるという解釈です。対照的に、お金を見つける夢は、お金や友情をなくす可能性を警告するメッセージとして受け取れます。

お金や宝物の夢を見たら、状況も併せて判断してみるとよいでしょう。また、宝船や七福神が現れるのも縁起が良い初夢です。

■太陽

太陽が現れるのも、縁起が良い兆しとされています。太陽は、古代から多くの文化で神聖な存在として崇められてきました。その強大なパワーと生命を育む力から、夢の中の太陽は新たな出発や幸運の象徴とされているのです。

特に朝日や昇る太陽の夢は、運気上昇のサインと考えられています。太陽の放つ光は暗闇を照らし、私たちに活力と希望をもたらしてくれるからです。

太陽のパワーを感じる初夢を見たら、何か新しいことを始めてみるチャンスかもしれません。

縁起が悪いといわれる夢

夢の中には、見ると縁起が良くないとされているものもあります。最後に、代表的な二つの夢と、縁起の悪い夢を見たときの対処法を紹介します。

■歯が抜ける

日本の夢占いにおいて、歯は『家族』『健康』『生命力』の象徴です。そのため、歯が抜ける夢は、家族の不幸や健康問題を暗示する不吉な兆しといわれています。

また、食事に欠かせない歯の状態が健康や生命力に直結するため、解釈によっては健康面での注意が必要なサインと取れる場合もあるでしょう。抜けた歯の部位によっても、意味が異なります。

ただし、抜けた後にすっきりした気分で目覚めた場合は、むしろ問題からの解放を意味するメッセージとも考えられるでしょう。

■追いかけられる

追いかけられる夢は、現実生活の焦り・ストレスが反映されたものと考えられています。何かに追われている状況は、仕事の締め切りや課題、人間関係など、日常のプレッシャーから逃れたい気持ちの表れです。

また、追いかけてくる存在によって意味も変わります。知らない異性なら恋愛・性に関する不安、友人・同僚なら対人関係のプレッシャー、動物なら直面している問題から逃げたい気持ちの表れと位置付けられています。

何かから追いかけられる初夢を見た場合は、自分の抱えているストレス・不安を見つめ直す機会と捉え、適切な休息とリフレッシュを心がけましょう。

■縁起の悪い夢を見たときの対処法

昔から、縁起の悪い夢を見たときにはさまざまな対処法が伝えられています。例えば、『バク』に夢を食べてもらうという考えから、「この夢をバクに食べてもらいます」と唱えたり、「バクバクバク」と3回繰り返したりする方法があります。

また、悪夢を誰かに話すことも、古くからある対処法の一つです。夢を話すことで『現実には起こらない』とされ、心理的な解放効果も期待できます。起きてすぐに、信頼できる人に話すのがよいでしょう。

さらに、『逆夢』という考え方も役立ちます。一見不吉な夢も、逆に幸運の前兆と解釈する方法です。初夢に限らず、縁起の悪い夢を見たときはポジティブに捉え直すことで、心の負担を軽減できます。

初夢は元旦に限らず新年最初に見る夢のこと

初夢は、年が明けて最初に見る夢のことで、いつ見るものなのかという定義には複数の説があります。古くから縁起が良いとされている初夢の代表格は、『一富士二鷹三茄子』です。

あまり知られていないものの、『四扇五煙草六座頭』も縁起の良い初夢だといわれています。夢の中には、不吉な兆しの暗示だといわれているものもありますが、自分の現在の状況を見直すきっかけとして、ポジティブに捉えてみましょう。

どうしても気がかりなときは、今回紹介した対処法を試してみるのもおすすめです。

構成／編集部