人気お笑いコンビ・EXITりんたろー。さんが2025年11月14日に絵本作家としてデビュー! 東京・青山ブックセンター本店で開催されたトークイベントでは絵本に込めた想いを、笑いを交えながら、時折真剣な表情で、ファンを前に語った。
伝えたい想いを届けるのに、絵本がちょうどいい
「絵本作家のりんたろー。です!」 登場と同時に、絵本を手にした客席からは割れんばかりの拍手が鳴り響く。絵本作家誕生の瞬間を皆で祝うような温かい空間。ファンの期待を上回る作品への賞賛に満ちた喝采はしばらく止まなかった。
柔らかいタッチで描かれた、愛らしい「とかげくん」が表紙を飾る『しっぽのみじかいとかげくん』は、絵も、ストーリーも、りんたろー。さん本人の作。
これまでも絵本制作のオファーはあったが、絵を描いたこともストーリーを考えたこともなく、EXITとしてのコンビの活動も忙しいことを理由に断っていた。
しかし今回挑戦してみようと思ったのは、「発信したいメッセージがあって、SNSで語ると強すぎるようなことも、絵本なら、ちょうどいい具合に伝えられるのではないかと思った」からだそう。
社会を見回したとき、生きづらそうにしている人たちがいることに気付きはじめ、気付いたものの、このままでいいのかな?という気持ちが高まっていった。そのタイミングで今回のオファーがあり、「伝えたい想いとその熱量があれば、絵本もEXITとしての活動もやりきれるのではないか」と踏み切ったと語る。
心が途切れたときに、修復し、繋ぎ止める力
『しっぽのみじかいとかげくん』は、しっぽが切れても生えてこない「とかげくん」をみんなが笑うなか、「くまくん」がただひとり寄り添い、少しずつ心を通わせていくストーリー。
りんたろー。さんは、こう問いかける。
「この世の中には僕たちが何気なく、ごくごく当たり前にやってきたことが、何かのボタンの掛け違いでできなくなってしまった人がいます。一旦、絡まってしまった心の糸はもう2度と解けないのでしょうか」
主人公のとかげくんには、しっぽを失っても再生する「修復し、繋ぎ止める力」や、擬態のように人の心の揺らぎを感じとり「心を通わせる力」を投影する。
そして、不自由を感じず、誰かの生きづらさに気付くこともなく生きてきた人も、くまくんが何気なく「ふつうは…」と考えてしまうところに自分を重ねたり、まっすぐに向き合おうとする優しさに力をもらうのだろう。
描きたいタッチに近づけるため絵画教室に通った
トークイベントで出た「絵本のどこが一番大変だったか」という質問には、「全部」と即答。企画から1年、仕事の合間、家族が寝静まってから、時間をみつけて少しずつ仕上げていった。
書きたいメッセージは固まっていたが、作画は「iPadを買って、アプリを使ってみることからのスタート」だったと苦笑する。さらに「絵画教室に通って…」と思わぬ秘話も飛び出し、会場にはどよめきが起こった。相方の兼近大樹さんには「AIで描いた?」と言われたと笑いを誘ったが、地道な努力の積み重ねがあったことが明かされた。
続いて「絵本のどのページが気に入っているか」との質問には、目の前に並ぶ“最初の読者”に逆質問。各々気に入ったページを壇上のりんたろー。さんに向けると、「ああ、いいよねー」「うん、そこもいいね」と嬉しそうな笑顔を返す。
声に出して読みたくなる絵本
子育て情報番組でMCを務め、日々育児に奮闘中のりんたろー。さん。「子どもができてから、子どもが見るもの、形に残るものを作りたいという思いが強くなった」とパパの顔も覗かせる。
とかげくんはふんわりと柔らかいピンク色をベースとしているが、実は子どもが好きな色なのだとか。オノマトペや、会話のリズムも大事にしたといい、これから自身が読み聞かせたり、絵本に触れていく我が子の姿に楽しみも滲ませる。「息子が読んだ感想? 令和の『ぐりとぐら』だって」と冗談めかすが、数年後にはそんな名言が本当に飛び出すかも!?
りんたろー。
1986年、静岡県生まれ。2008年4月、NSC東京に14期生として入学。兼近大樹を誘い、2017年末にお笑いコンビ「EXIT」を結成。ネオ渋谷系チャラ男漫才と称するしゃべくり漫才のツッコミを担当。ネタ作りも担う。アパレルブランドのプロデュースや音楽活動など、テレビや劇場以外でも活躍中。著書に『自分を大切にする練習』(講談社)、共著に『「見た目が9割」をどう生きる』(小学館)がある。1児の父。
りんたろー。さんの優しい世界『しっぽのみじかいとかげくん』好評発売中
「とかげくん」のしっぽは、切れても生えてこず、短いまま。とかげのしっぽが短いのはおかしいと、みんなが笑うなか、ただひとり「くまくん」が寄り添います。しかしくまくんは、みんなが怒っているより笑っている方がいいという、とかげくんの気持ちがわかりません。「ふつうってなに?」とばかり聞くとかげくんに、くまくんは次第に嫌気がさして…。ふたりはどのように心を通わせていくのでしょうか。
柔らかなタッチの絵と、リズムにのせて進むふたりの会話、散りばめられたオノマトペは、3~5歳ごろの幼児向けでありながら親世代もほっこりと楽しめて、読み聞かせ時間を豊かにします。
■関連情報
https://www.shogakukan.co.jp/books/09725434
構成/DIME編集部 撮影/田中麻以(小学館)







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