
2025年8月27日、YouTubeの日本版ブログは「ハイプ」という新機能の提供についての説明を公表した。
これは言わば、新人YouTuberが目立ちやすくなるためのポイントシステムである。
条件を満たして収益化しているYouTuberは、視聴者からスーパーサンクスやスーパーチャットをもらうことができる。これが俗に言う「投げ銭機能」であるが、ハイプはそうした直接的かつ金銭的な利益をYouTuberにもたらすものではない。獲得したポイントに応じてその動画が視聴者の目に留まる形で紹介される、と説明すればよいか。頭角を現してはいるが、まだまだ「有名YouTuber」とは言い切れない配信者に注目の場を与えるための機能である。
「レッドオーシャン」と言われて久しいYouTubeでの動画配信。それに新たな息吹を与えてくれる可能性があるのだ。
Youtuber黎明期の「2017年」は既に大昔
YouTuber事務所のUUUMが東証マザーズ(現在は東証グロース)に上場したのは、2017年8月のこと。この当時、YouTuberは「成功すれば大金を稼げる新しい職業」として大いに注目されていた。
そして、この前後からYouTubeは「趣味で作った動画を公開するためのプラットフォーム」ではなく「副業または本業として動画を作っている人のためのプラットフォーム」と見なされるようになる。YouTuberとして有名になった人が、それまでの仕事をやめて動画配信だけで生活するようになった例も珍しくなくなった。また、そのような一獲千金を目論んで自らが犯罪を犯したり、他人の家に押しかけたりという行為を配信する「迷惑系YouTuber」なる人たちも登場した。
2017年とは、誰しもがYouTubeに夢を抱いていた時代だったのだ。
しかし、その状況は徐々に、そして大きく変わっていく。スマホを縦に保持した状態で矢継ぎ早に視聴できる「ショート動画」が登場すると、それまでの広告モデルが変化し、YouTuberに対する収益が細分化されてしまったのだ。さらにYouTuberそのものの数が増えたことで、チャンネル登録者数を得ることが難しい環境になってしまったという要因も見受けられる。
2025年の今は、2017年に比べて「動画配信を続けるためのモチベーション」がなかなか得られなくなったというのは事実である。
小規模のチャンネルにより大きなポイントが
そうした時代に登場した新機能・ハイプは、チャンネル登録者数500人~50万人までの配信者を対象にしている。
視聴者は、過去7日以内にアップロードされた動画に対して週3回まで無料のハイプを送ることができる(それ以上は有料)。このハイプはポイントとして加算され、最もポイント数の多い上位100位以内の動画が「ハイプ」という項目で特別に紹介される仕組みだ。
面白いのは、登録者数が多いチャンネルの動画はポイントが得られにくい設計になっているという点。たとえば、最近登録者数が5,000人を超えたばかりの筆者のチャンネルの動画では、1回のハイプに3,000ポイントが発生する。これが500人の場合は7,500ポイントになるそうだが、逆に50万人の場合は50ポイントにしかならないという。
このハイプ機能が、YouTubeにとっての新たな潤滑油として十分に機能する可能性はあるだろう。だが、実際にチャンネルを運営している筆者の率直な感想は「機能自体の知名度が高くない」である。
あまり知られていない機能?
上述の通り、ハイプは週3回まで無料で送ることができる。筆者のチャンネルにも毎回コメントを書いてくれるファンがいるから、その人たちがたくさん投げてくれるだろう……と思ったら、実際はそうではない。
視聴回数が上手く伸びている動画でも、ハイプはまったく投げられていないということもよくある。というより、そのような動画のほうが圧倒的に多い。
これは結局、ハイプ機能そのものの知名度不足、言い換えるとYouTubeのPR不足の問題ではないか。YouTubeアプリを開いてみても、ハイプ上位100位を確認するまでに2回のタップを要さなければならない仕組みだ。ハイプ機能について大々的に謳っている様子も見受けられない。
たとえば、YouTube パートナー プログラム(YPP)の申請条件が大幅緩和された時や、そのポリシーが変更された時はあらゆるメディアが蜂の巣をつついたような騒ぎになる。単にYouTubeの声明を引用するのみならず、「その緩和はいつ行われるのか?」「どのような動画がポリシーに引っかかるのか?」を推測する記事が大量に配信される。そのような大騒ぎが、ハイプ機能に関してはまったく起きていないのだ。
残念ながら、現時点においてハイプ機能に対する視聴者とクリエイターからの期待値や注目度は決して高くはない。
しかしそれを根拠に、ハイプ機能自体を否定的に解釈することもできない。YouTubeが「未知の才能」の発掘に関心を示していること、そしてようやく収益化にこぎつけた配信者に新たなチャンスを与えようとしていることは、大いに評価するべきだ。
ハイプ機能が、今後新たなスター配信者を見出す可能性は十分にあるだろう。
【参考】
ハイプ: 新人クリエイターの発見をサポートする新機能-YouTube公式ブログ
動画のハイプ機能-YouTubeヘルプ
文/澤田真一
780円の選択。YouTubeの廉価版プラン「Premium Lite」は加入すべきか?
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