きこえない・きこえにくいトップアスリートが世界中から集い、静かな熱戦を繰り広げる『東京2025デフリンピック』が、11月15日に開幕した。
創設されてから25回目、100周年記念となる今大会は、81の国と地域から、史上最多の3081名の選手がエントリー。日本選手団も過去最多の約270人が参加予定で、26日まで都内中心の19会場で21競技209種目が実施される。
開会式が行われたのは、東京都渋谷区の東京体育館。約1万人を収容できる会場の前には、午後2時の開場前から事前応募した観客たちが集まり、日本で初開催されるデフリンピックに期待感を高めていた。
式典前には「ヘブンアーティスト」がパフォーマンスを披露
訪れた観客たちをまず楽しませてくれたのが、式典前プログラム。
東京都が実施している審査会に合格し、ライセンスを取得し普段は公共施設や民間施設などでその技を披露している「ヘブンアーティスト」に登録しているパフォーマーの面々。日本の伝統芸能を取り入れたさまざまなアクロバティックな表現で、開会式を盛り上げるのに一役買っていた。
世界からの選手団のお迎えは「阿波踊り」のリズムとパフォーマンス
カウントダウン、オープニングに続いては阿波踊りを通して、きこえない人に対する理解を深め、手話への関心を社会に広めていきたいという練馬区聴覚障害者協会会員の思いから手話サークル練馬こぶし会の協力を得て発足した『だいこん連』が登場。
デフリンピック発祥国であるフランスを先頭に入場してくる選手団を、阿波踊りのリズムとパフォーマンスで迎え入れた。
そして選手入場。戦禍にあるウクライナも参加の列に。全身グリーンのリトアニア、イギリスのジーンズなど、各国の選手団の個性あふれるユニフォームも目を引いた。
開催国の日本は、旗手の小倉涼選手(空手女子)を先頭に最後に入場。会場内は、両手をひらひらとふる手話言語の拍手と声援で溢れ、盛り上がる。選手たちもそれに手を振って思いっきりの笑顔で応えた。
DIMEで取材した女子バレーの長谷山優美選手も元気に入場。活躍を期待したい。
選手団の入場が終わると、一般財団法人全日本ろうあ連盟理事長石橋大吾氏、東京都知事小池百合子氏、内閣総理大臣高市早苗氏が挨拶。秋篠宮皇嗣殿下ご一家も各国の選手団を見守り、手話言語で拍手を送られた。
そして秋篠宮様は「大会が、きこえない・きこえにくい人ときこえる人が互いの違いを認め、尊重し合い、誰もが個性を活かし、力を発揮できるインクルーシブ社会の実現に寄与することを祈念します」というお言葉を述べられた。
選手宣誓は陸上の山田真樹選手とテコンドーの星野萌選手。「私は、すべての選手の名において、この第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025に参加することを誓います」と手話で力強く宣誓を行なった。
「共生社会~未来へ」がテーマ。『100年の1日』
開会式の最後は、アーティスティックプログラム『100年の1日』の披露で締めくくられた。この作品は、きこえない・きこえにくい人ときこえる人、そして大人や子どものさまざまな背景を持つ人々の「共生社会~未来へ」がテーマ。そしてステージ上だけではなく客席にもパフォーマーを配置。選手団や来場者までを巻き込んで、会場全体で一体感のある演出が施されていた。
また、個々人の違いを互いに尊重するとともに、それぞれの個性を活かして共に表現することで、今大会後もレガシーとして後世に語り語り継がれていくに違いない。まさに、これから始まる12日間のデフアスリートたちの熱戦を予感させるパフォーマンスだった。
この開会式を通して感じられたのは、世界から集まった選手や関係者、そして観客たちの期待と熱気。そして、日本選手団は前回の30個を超えるメダルが期待されている。
開催は11月26日(水)まで。今週末22日(土)からの3連休は、陸上、水泳、バレーボールなど、都内各所で、多くの競技が開催されている。興味のある競技日程や種目が行われる会場を「東京2025デフリンピック」のHPで確認して、会場でそしてライブ配信で観戦、日本はもちろん、世界のデフアスリートたちに熱い声援を送りに行こう!
【第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025 開催概要】
大会期間/開催中 2025年11月26日(水)
参加国/81か国・地域
参加選手数/約3000人(ほかスタッフ約3000人)
競技数/21競技(陸上、バドミントン、バスケットボール、ビーチバレーボール、ボウリング、自転車(ロード、マウンテンバイク)、サッカー、ゴルフ、ハンドボール、柔道、空手、オリエンテーリング、射撃、水泳、卓球、テコンドー、テニス、バレーボール、レスリング(フリースタイル・グレコローマン)
競技会場/東京体育館、駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場、東京高速道路及び首都高速道路高速八重洲線の一部ほか
https://deaflympics2025-games.jp/#gsc.tab=0
取材・文/松尾直俊 撮影/藤岡雅樹
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