この秋、日本で初めて開催されている『東京2025デフリンピック』。
デフ(Deaf)は、英語で耳がきこえないという意味で、聴覚障がいのあるアスリートが出場する大会だ。
「オリンピックやパラリンピックと同じように、IOC(国際オリンピック委員会)公認の国際大会で、70~80か国・地域から約3000人の選手が参加します」とは、同大会の広報担当、東京都スポーツ推進本部の金澤聖訓さん。夏季大会は1924年の第1回フランス大会以降、ほぼ4年おきに行なわれており、今回は100周年の記念すべき大会になる。
参加資格を持つのは、裸耳で聞こえる音が55dB以上で各国のろう者スポーツ協会に登録しているアスリート。55dB以上というと車や地下鉄構内の騒音はきこえるが、会話は困難なレベル。選手たちは会場に入ると、練習、試合に関わらず補聴器などの装着は禁止されている。
「実施される21競技は、基本的にオリンピックと同じルールで運営。主に国際手話によるコミュニケーションや情報全てが視覚的に保証された競技環境です」(金澤さん)
とはいえ、手話言語は200以上あり、国際手話を知らない選手も。そこで音の代わりに光や動作、デジタルデバイスなどを使い、目で見てわかる合図の工夫もされている。
「競技の観戦は無料、開会式と閉会式以外は事前申し込みも必要ありません。ぜひ多くの方に会場に足を運んでいただき、選手たちにエールを送ってほしい」と金澤さん。
前回のブラジル大会は、コロナ禍で途中帰国を余儀なくされたが、その中でも日本選手団は金メダル12個に銀メダル8個、銅メダル10個を獲得する好成績を挙げていて、今回はそれ以上のメダルが期待されている。そんな選手たちに向けて、日本の手話言語をベースにした、動作で応援する〝サインエール〟も開発。こうした新たな応援方法や最新デバイスを活用し、会場で、オンラインで、共に大会を盛り上げたい。


『第23回 夏季デフリンピック競技大会 サムスン2017』大会開会式と、男子4×100mリレー金メダリスト4選手(右から三枝浩基選手・山田真樹選手・設楽明寿選手・佐々木琢磨選手)。
開催概要
第25回 夏季デフリンピック競技大会 東京2025
[大会期間]2025年11月15~26日(12日間)
[参加国]70~80か国・地域
[参加選手数]約3000人(ほかスタッフ約3000人)
[競技数]21競技
[競技会場]東京体育館、駒沢オリンピック公園総合運動場・陸上競技場、東京高速道路および首都高速道路高速八重洲線の一部ほか
音の代わりに「目」でわかる合図を送る!
例えば陸上や競泳のスタートの合図は、〝スタートランプ〟の発光。ほかにも空手の判定はランプを使い、サッカーでは主審もフラッグを使って選手たちに合図を送っている。


写真提供 : 一般財団法人全日本ろうあ連盟(上4点)
UC(ユニバーサルコミュニケーション)を
サポートする最新技術が続々
写真提供:株式会社方角・早稲田大学岩田研究室


写真提供:東京都
競技や会場の音を擬音にして試合状況を伝える「ミルオト」(写真上)や、都庁舎などで使われている音声を文字にする多言語対応の透明ディスプレイ(写真下)ほかのデバイスを導入予定。
デフスポーツの新スタイルサインエールで応援!
写真提供:東京都

サインエールは「行け!」「大丈夫 勝つ」「日本 メダルを つかみ取れ!」の3つが基本。デフアスリートと共に開発され、実演を通してブラッシュアップ中。サイトで確認できる。

※ネーミングは、直接的に日本の手話言語の意味を示すものでありません。
取材・文/松尾直俊







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