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カプコンのeスポーツ大会はなぜ有料になったのか?オワコンへの道を辿るeスポーツ事業の現状

2025.11.19

カプコンがeスポーツ大会の「CAPCOM CUP12」と「ストリートファイターリーグ: ワールドチャンピオンシップ 2025」のライブ視聴を有料化すると発表し、物議を醸しています。

背景には、日本のeスポーツ市場が盛り上がりを欠いていることもあり、成長期待が高かった産業そのものの問題点を露呈しているようにも見えます。

突然の有料宣言に戸惑うファンたち

「CAPCOM CUP12」は優勝賞金100万ドル(およそ1億5000万円)であり、eスポーツ大会の中でも高額賞金がかけられている注目度の高いイベント。前回の大会では来場者数が1万4000人、1000万回以上のオンライン視聴数を記録しています。

次の大会では単日のオンライン観戦チケットが4000円、セットチケットが6000円に設定されました。これまでは無料で視聴できたことから、突然の有料化に戸惑うファンが絶えませんでした。

また、会場観戦の自由席2000円であり、オンライン観戦料金が「高すぎる」という批判も招くことになったのです。

カプコンは有料化の背景として、eSports事業を中長期的に持続可能な形で推進するために必要だった旨の説明をしています。会社目線で有料化に踏み切ったことも、反感を買う結果となりました。

SNSでは、「サッカーの世界大会ですら無料で見られるのに」「eスポーツ大会は広告費として考えるべき」「eスポーツのライト層を弾くことになる」など、様々な意見が溢れています。

しかし、カプコンのeスポーツ事業を取り巻く実状を観察すると、オンライン観戦の有料化もやむなしという複雑な事情が見えてきます。

突き抜けることができない日本のeスポーツ市場

カプコンのeスポーツ事業は利益が出ていません。3期連続で10億円を超える営業赤字を出しており、今期も11億円の損失見通し。今期の売上高は9億円であり、売上を超過するほどの大赤字を出しています。前期は8億円の売上に対して、12億円の損失でした。

背景には、eスポーツの収益化が極めて難しいという問題があります。

「CAPCOM CUP11」は、全世界累計販売本数500万を突破した人気タイトル「ストリートファイター6」の世界最強を決めるという注目度の高いイベントですが、来場者数は1万4000人。

ゲームとは違いますが、2025年11月にリリースしたアルバム「音故知新」が100万枚を突破したアイドルグループSnow Manは、「Snow Man Dome Tour 2024 RAYS」というドームツアーで61.5万人を動員しました。

サイバーエージェントのABEMAはかつて、サッカー・ワールドカップのカタール大会全試合を配信しました。このとき、1000万台だった1週間あたりのABEMAの利用者数は3400万まで跳ね上がっています。

「CAPCOM CUP11」は、視聴回数で1000万であり、主要な放送局に放映権料をつけて販売できるイベントに育っているようには見えません。

つまり、国内のeスポーツ市場は育ってきたとはいっても決して大きくはないのです。

一方で、大型のイベントは設営や運営、警備などに多額の費用がかかります。しかも、最近はインフレで資材や人件費が高騰しています。

そうかといって、カプコンの看板タイトルの一つである、ストリートファイターの名を冠する大会の規模を縮小する判断はしづらいでしょう。

カプコンは大会のオフィシャルスポンサーとして、スズキなどと契約を結んでいます。それでも赤字を埋めることができないという厳しい現実があるのです。

経営上も成長期待が高いeスポーツ事業

eスポーツの収益化は、経営戦略と密接な関係があることもポイントです。

カプコンは毎期営業利益10%増という高い経営目標を掲げており、10期連続それを達成している稀有な会社。今期も11%程度の営業増益を見込んでいます。

当たり外れが大きいゲーム業界において、毎期着実に利益を積み上げられる会社は多くありません。

カプコンはモンスターハンターやバイオハザード、ストリートファイターなどの人気シリーズの新作を世に送り出し、ヒットさせて成長しています。しかし、新作をハイペースでリリースするわけにはいかないため、主な新作が欠けている年は拡張コンテンツの販売や、原価が低い過去作のダウンロード版をセールで売り出して巧みに利益を出しています。

しかし、これを続けるためには人気シリーズの最新作を確実にヒットさせなければなりません。一度外してしまうと、その影響が後に続いてしまう懸念があるのです。

そうした中、中長期的な成長に期待をかけているのがeスポーツでした。

eスポーツ事業を広告宣伝費とすればよいとの声が聞こえてきますが、利益を生み出して会社の成長を担う重要度の高いビジネスに位置づけられているのです。

大会終了後は無料配信を予定

「CAPCOM CUP12」の有料化はeスポーツのライト層を置き去りにするとの見方もありますが、その点に対する配慮もあります。大会後に無料放送を配信予定であると宣言しているからです。

カプコンが、有料のライブ配信を視聴するほどのeスポーツに対して高い熱量を持つファンを育てようとしているのは確かでしょう。

VTuberの「にじさんじ」の大型イベントである「にじさんじフェス 2023」では、来場チケットを6万5000枚、オンラインチケットを18万枚販売しました。このイベントのチケット売上は6億4000万円に達しています。

中長期的には同程度のイベント規模にする必要があるのではないでしょうか。

文/不破聡

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大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融、経営戦略を中心とした記事を執筆中。得意分野は外食、ホテル、映画・ゲーム、エンターテインメント業界など。

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