日産自動車は、生成AIを活用した車載エージェントシステム「AutoDJ」を発表した。
同システムは、ドライバーとの自然な音声での対話を通して目的地を提案しドライバーをサポートするほか、目的地に応じて生成される観光案内など、パーソナライズされたコンテンツをAIラジオとして楽しむことが可能となっている。
対話を通して目的地を提案
この「AutoDJ」の最大の特徴は、デジタルの枠にとらわれず生成AIを活用すると同時に、システムに身体性を持たせたことでより親近感を感じられる点。
日産のマスコットキャラクター「エポロ」をAIエージェントとして活用した「AutoDJ」は、フィギュアをクルマのダッシュボードにセットすることで使用が可能になる。
そしてスマホ画面には、ドライバーとのチャット形式の会話ログと「エポロ」の3Dモデルが登場し、画面に映る「エポロ」の表情や動きがまるで画面越しにフィギュアを見ているような視覚効果を生み出す。
これは、画面の中にとどまらず、実際に「エポロ」がそこにいるように感じられるモビリティ&AI研究所のこだわりで、遊び心あるAI活用を体現している。
さらに「エポロ」はドライバーからの呼びかけに応じて、目的地の提案や特定地域の天気予報を教えてくれるなど、豊富な知識でドライブをサポート。
※「エポロ(EPORO)」とは、日産のぶつからない車の研究から生まれた、群走行するぶつからないロボットカーのこと
また、「エポロ」には、「サムライエポロ」や「おじさんエポロ」など様々な姿が用意されており、それぞれ異なる性格や口調のセリフが生成される。
ほかにも専用アプリを使用することで、「エポロ」以外のキャラクターを写真から自動で生成することが可能となっている。そのキャラクターをAIエージェントに設定することで、これまでにないパーソナライズの形を模索している。
みなとみらいをリアルな3Dに置き換えた「ジオラマナビ」
「AutoDJ」に加え、みなとみらいを走るモビリティサービス車両の動きをリアルに見ることができる「ジオラマナビ」を自動運転モビリティサービス実証実験のプロトタイプに搭載し公開。
「ジオラマナビ」は立体的なジオラマの姿をしたナビゲーションシステムで、再現されたミニチュアの街の中で豆粒大のクルマの模型が磁力で操作されて動き回り、現在地をリアルタイムに示す。
また、ジオラマナビの下部にはレトロな見た目のラジオが設置される。
デザインには、あえて物理的に操作するためのつまみやプッシュ式のボタン、さらにはエポロをはじめとしたラジオのパーソナリティと話すことができる受話器が取り入れられ、タッチパネルなどが普及する現代に失われつつある「操作する楽しさ」を作りあげている。
また、AIラジオには複数のパーソナライズされたコンテンツがあり、ナビ情報に対応して生成される観光案内などを楽しむことができる。
AIでコンテンツを生成するため毎回異なるシナリオが流れ、乗車する度に新たな発見があり、何度でも街を訪れたくなるユニークな体験を届ける。
同プロジェクトを担当する上田哲郎氏(モビリティ&AI研究所 エキスパートリーダー)は、次のように語っている。
「日産は、20年以上前からAutoDJを製品に搭載していました。
その頃から、目指す姿は運転に必要な情報のスムーズな提供であり大きく変わっていませんが、当時は現在のような高度なAIは無く、決められたルールで天気や交通情報を提供することにとどまっていました。これを最新の生成AIの力を使って再チャレンジした姿が今回のAutoDJです。
いまや日産を含む誰もが追い求めているAIによる効率化や安全性の確保だけでなく、AI活用に遊び心や楽しさを盛り込もうと考えました。フィギュアを用いたAIエージェントやジオラマナビなど、このデジタルの時代に一見非効率な物理インタフェースを採用しているのはそのためです。
未来への道筋は決して一直線ではありません。今の技術では再現しきれないと思われる絵空ごとも、辛抱強くやっているといつかは達成できると信じて研究しています
」
上田氏率いるモビリティ&AI研究所は、「AutoDJ」を含む数々のイノベーションで、日産の精神である「他のやらぬことを、やる」を体現し、既成概念にとらわれない発想から、ワクワクする移動体験を届けていく。
関連情報:https://www.nissan-global.com/
構成/土屋嘉久







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