
2025年は「バーチャルカード」という言葉が注目される年でもあった。これは良い意味も悪い意味も含まれている。
バーチャルカードが特殊詐欺を実行するための一手段として利用されてしまうこともあったが、それは当事者のリテラシーの問題が大きい。バーチャルカードの仕組み、即ち物理的なカードよりも先にスマホで表示するためのカードを発行するという仕組みは、個人向け金融サービスの可能性を大きく拡張するものである。
そんな中、JR東日本グループの株式会社ビューカードが発行する『ビューカード スタンダード』の「バーチャルカード対応」が始まった。これと同時に、大量のJRE POINTの付与を伴うキャンペーンも開始。実はこのあたりは、近年目覚ましい勢いを見せるクレカタッチ決済乗車システムに対する、JR東日本の回答であるかもしれないのだ。
バーチャルカードの安全性
2025年3月11日、筆者は@DIMEで『むしろ安全!?特殊詐欺事件で話題の「バーチャルカード」に関する誤解と正しい使い方』という記事を配信した。
むしろ安全!?特殊詐欺事件で話題の「バーチャルカード」に関する誤解と正しい使い方
「バーチャルカード」が、悪い意味で話題になってしまった。バーチャルカードを利用した特殊詐欺事件が発生し、中学生がその被害者になってしまったからだ。 この事件が報…
この当時、特殊詐欺に引っかかって言われるがままにデビットカードやプリペイドカードのバーチャルカードを作成し、その情報を詐欺犯に教えてしまった10代の若者が話題になっていた。もちろん、そのバーチャルカードにはまとまった金額が入金されている。
この事件を「バーチャルカードの危険性が露呈した」と捉える向きもあった。しかしこれは、自宅にやって来た受け子に銀行のキャッシュカードを暗証番号付きで渡してしまう高齢者の例と構図としては大差ない。こういうことがあるからといって、「銀行がキャッシュカードなどというものを発行するから悪い」とはならないはずだ。バーチャルカードも、それと同様である。
物理カードと比較して、バーチャルカードは携帯性だけでなくセキュリティー性でも優れている。物理カードは万が一盗まれたらそのまま利用されてしまうことがあるが、スマホの中のバーチャルカードは何かしらの手段でロックを破らない限り、持ち主以外の誰かが使うことはできない。
そうした理由もあり、日本国内のカード発行会社は一斉にバーチャルカード発行対応に舵を切った。その中で、ビューカード スタンダードのバーチャルカード発行開始は「ようやく」「ついに」という言葉がどうしても相応しくなってしまう。ビューカード スタンダードの発行開始は2024年11月15日。それまでの「ベーシック・シリーズ」がリニューアルされる形での登場だった。そこから1年近くを経て、ようやくバーチャルカード発行対応が実現したのだった。
1万円以上のポイントが!
さて、このビューカード スタンダードのバーチャルカード発行対応開始に伴い、11月30日まで『ビューカード スタンダード新規入会キャンペーン』が開催されている。
PR TIMESのプレスリリースによると、
新規入会&ご利用&JRE BANK口座設定で最大10,000ポイントのJRE POINTをプレゼントします。
(~申込完了から最短5分で発行ができる~即時発行(バーチャルカード)の受付を開始します!-PR TIMES)
とのことで、これは要するに1万円分のポイントがもらえるという意味だ。
それと並行する形で、ビューカードは『即時発行(バーチャルカード)限定! Apple Pay モバイルSuicaチャージキャンペーン』も行っている。こちらも11月30日まで。
即時発行(バーチャルカード)により入会したカードを用いてApple Pay決済によるモバイルSuicaチャージを行うと、ご利用金額の最大20%のJRE POINTをプレゼントします。
9月、10月、11月と毎月獲得することが可能なため、早期入会がおトクです!
(同上)
Apple Pay限定のキャンペーンで、なおかつ獲得できる毎月のポイントの上限は925ポイントという点に注意が必要だが、それでも9月にビューカード スタンダードのバーチャルカードを入手した人は前述のキャンペーンと合わせておよそ1万3,000円分のJRE POINTを頂戴できるという計算である。
このJRE POINTは、そのままSuicaの残高に回すことができる。株式会社ビューカード……いや、JR東日本の思惑は、まさにこの部分に表れているのではないだろうか。
「タッチ決済乗車大連合」にどう立ち向かう?
来年春、首都圏・関東の公民鉄11社が「クレカタッチ決済乗車の相互利用」を開始する。
路線の相互直通などの複数社が絡む乗り方の場合、タッチ決済乗車システムは現時点では対応できていない。東京メトロ管理の駅から乗ったとしたら、必ず東京メトロ管理の駅で降りなければならないのだ。が、タッチ決済乗車の相互利用が始まれば、他社管理駅で降車することもできるように。
これは言わば、「タッチ決済乗車大連合」である。
その連合に対して、JR東日本はどう出るか。JR線でタッチ決済乗車が取り入れられる可能性は高くないとは以前から言われていたが、ビューカード スタンダードの「大盤振る舞い」とも言えるキャンペーンを見るに、やはり「JR全線でのタッチ決済乗車導入」は夢物語と判断したほうが良さそうだ。ビューカード、そしてJR東日本の方向性は「クレカを使えばJRE POINTが貯まる仕組み」の構築であり、それは即ち「Suicaのより一層の利活用」に他ならないからだ。
それらを突き詰めて考えれば、Suicaとビューカードはユーザーの関心を維持するため、今後も大型キャンペーンを継続的に企画・展開していくのではと予想することができる。
【参考・画像】
~申込完了から最短5分で発行ができる~即時発行(バーチャルカード)の受付を開始します!-PR TIMES
文/澤田真一
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