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なぜ今「モキュメンタリー」が熱いのか?空前のホラーブームを巻き起こした理由

2025.12.12

映画やテレビ番組、YouTubeで注目を集めている「モキュメンタリー」。特にホラージャンルで人気を集めるこの表現手法について、言葉の意味や人気の理由、代表作などをまとめた。

映画・小説・YouTubeなど媒体を問わず近年人気を集めている「モキュメンタリー」。ネット等で見かけることはあっても、どのような内容なのか、なぜ人気なのかは知らないという人も多いだろう。

本記事では、「モキュメンタリー」の意味や言葉の由来、発展の歴史、代表作や楽しみ方について解説する。

モキュメンタリーとは?言葉の意味や語源、作品の特徴

最初に、モキュメンタリーの意味や由来、フェイクドキュメンタリーとの違いといった基礎知識を解説する。

■モキュメンタリーの意味と語源

モキュメンタリー(mockumentary)とは、「Mock(擬似・模造)」と「Documentary(ドキュメンタリー)」を組み合わせた造語だ。フィクション作品でありながら、ドキュメンタリー映像のように、作中にナレーションやインタビュー、関係者の証言などを交えることで、事実として伝える体裁を取っている作品群を指す。日本では「フェイクドキュメンタリー」「ハーフドキュメンタリー」といった呼び方がされる場合もある。

■モキュメンタリーとフェイクドキュメンタリーの違いは?

「モキュメンタリー」と「フェイクドキュメンタリー」は、基本的に同義語として扱われる。

「モキュメンタリー」は、英語圏における一般的な呼び名であり、オックスフォード英語辞典にも1965年から掲載されている。一方、「フェイクドキュメンタリー」は日本で広まった和製英語的な呼び名だ。どちらも「虚構の物語を事実のように描く手法」を指しており、使い分けに厳密なルールはないものの、映画業界や作品批評では「モキュメンタリー」の用語が使われるケースが多い。

■モキュメンタリーの特徴的な演出手法とは

モキュメンタリー作品には、ドキュメンタリーらしさを演出するための特徴的な演出手法が用いられる。代表的なモキュメンタリーの演出は以下の通り。

・インタビュー形式や関係者の証言映像の挿入

架空のインタビューやニュース映像を織り交ぜることで、作品に真実味を持たせる。

・手ブレやキメの粗い映像処理

手持ちカメラによる手ブレの多い映像や、キメの粗い映像処理、洗練されていない撮影技術、現実の記録映像との組み合わせなどにより、実際にあった出来事としての臨場感を高める。

・ナレーションによる進行

撮影者の独白やナレーターによる内容解説が入ることで、視聴者はドキュメンタリーを観ているようなリアリティを味わえる。

モキュメンタリーの歴史と発展

モキュメンタリーの歴史は古く、映画などの映像技術が登場する以前から同様の演出手法による作品が発表されていた。モキュメンタリーの歴史と現在までの流れを紹介する。

■モキュメンタリーの起源

モキュメンタリーというジャンルの起源は明らかになっていないが、1938年にオーソン・ウェルズが手がけたラジオドラマ『宇宙戦争』は、火星人の襲来を伝える架空のニュースという体裁を取っており、モキュメンタリーの先駆例として知られる。

映像の世界でも1950年代にはすでにモキュメンタリー的な作品が現れている。1977年にイギリスで放送されたテレビドラマ『第三の選択』は、アポロ計画以前から月に基地があるという陰謀論をまるで事実であるかのように描き、モキュメンタリーの先駆けとして有名だ。

■現代のモキュメンタリーブーム

1990年代末になるとモキュメンタリーは新たな転機を迎える。1999年に公開された『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』は、森で遭難した若者たちの遺したビデオ映像という設定の低予算映画で、興行収入面で大きな成功を収めた。

この成功の背景には、デジタルビデオカメラの普及がある。一般人が手軽に映像を撮影できるようになったことで、モキュメンタリー作品の制作が容易となった。

また、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』は、ウェブを利用し、現実の映像と錯覚させる宣伝戦略でも話題を呼んだ。

2000年代以降になると、インターネットやSNSの発展により、モキュメンタリーはさらに広がりを見せる。視聴者が作品について考察し、謎解きを楽しむ文化が生まれ、口コミによる拡散が作品の成功を後押しするようになった。

YouTubeなどの動画配信プラットフォームの台頭により、個人が映像作品を発表できる環境が整ったこともブームを加速させる要因となっている。

モキュメンタリーはどこで観られる?主な媒体とおすすめ作品

モキュメンタリーは現在、映画・テレビ番組・YouTube・小説&漫画など様々な媒体で楽しめる。それぞれの代表作を見ていこう。

■映画のモキュメンタリー

映画界には数多くのモキュメンタリー作品があるが、特にホラージャンルでの成功が目立つ。

『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)は、モキュメンタリーホラーの金字塔。魔女伝説を追う学生たちの姿を全編手持ちカメラで撮影し、低予算ながら莫大な成功を収めた。

『パラノーマル・アクティビティ』(2007年)は、固定カメラ視点で恋人同士の間に起きる怪現象を描いたモキュメンタリーホラーで、シリーズ化されるほどの人気を博した。

日本では、白石晃士監督による『ノロイ』(2005年)が、国産モキュメンタリーホラーの傑作として高く評価されている。

ホラー作品以外では、ウディ・アレン監督の『カメレオンマン』(1983年)が、実際の記録映像に架空の人物を合成する手法で話題となった。

また、『スパイナル・タップ』(1984年)も架空のロックバンドを追ったコメディ作品として評価が高い。

■テレビ番組のモキュメンタリー

『放送禁止』シリーズ(FOD公式サイトより引用)

日本のテレビ業界でも、モキュメンタリー番組が注目されている。

フジテレビとイーストが制作する『放送禁止』シリーズ(2003年~)は、「ある事情で放送禁止となったVTRを再編集し放送する」という設定のモキュメンタリーで、深夜枠を中心に長く人気を保っている。

2024年からはテレビ東京が『TXQ FICTION』と題する一連のモキュメンタリー番組プロジェクトを展開し、『SIX HACK』など、様々なモキュメンタリー作品を不定期に放送している。

■YouTubeのモキュメンタリー

フェイクドキュメンタリー「Q」(YouTubeより引用)

YouTube上では、個人制作のモキュメンタリー作品が数多く公開されている。視聴者のコメントや反応がリアルタイムで共有され、作品の考察や謎解きが盛り上がりやすい点が特徴だ。

『フェイク・ドキュメンタリー「Q」』は、YouTubeチャンネルで配信されている人気ホラーシリーズ。地上波で放送されなかったファウンド・フッテージもの(「偶然発見された未編集の映像」という設定のモキュメンタリー)として多くの視聴者を獲得している。

また、YouTuberのだいにぐるーぷによる『樹海の奥地にある、少し不思議な村で1週間生活してみた。』は、西尾知之主演、岩田涼太脚本による本格的なモキュメンタリー作品として注目を集めた。

■小説・漫画のモキュメンタリー

シリーズ累計700万部突破!最新作『変な地図』(著/雨穴)

映像作品に限らず、小説や漫画でもモキュメンタリー手法を使った人気作品は多い。

雨穴による『変な家』シリーズは、間取り図やイラストといった視覚的情報によって、その家が実在するかのようなリアリティを物語に付与し、シリーズ累計発行部数250万部を突破する大ヒットとなった。

また、背筋の『近畿地方のある場所について』は、近畿地方の「ある場所」にまつわる怪談を集める形式のホラー小説。小説投稿サイトのカクヨムで連載後に書籍化され、映画化も決定した。

梨による『かわいそ笑』も、ネット上に伝わる怪談を収集した読者参加型のモキュメンタリーホラー小説として注目されている。

モキュメンタリーの人気の理由、楽しみ方は?

最後に、モキュメンタリーが多くの人を惹きつける理由、モキュメンタリー作品を最大限に楽しむポイントを見てみよう。

■なぜモキュメンタリーは人気なのか?

モキュメンタリーの最大の魅力はリアリティだ。特にホラー作品において「本当にあったかもしれない」という臨場感は、通常のフィクションよりも強い恐怖心を喚起させる。

制作者にとっても大掛かりなセットや特殊効果に頼らず、アイデアと演出で勝負できるため、挑戦しやすいジャンルと言えるだろう。

SNSとの親和性の高さも人気を集める理由だ。視聴者が作品についての考察や謎解きを楽しみ、その内容をSNSで共有することで新たな視聴者を獲得し、作品が広がっていく流れが作られている。

■モキュメンタリーの楽しみ方

モキュメンタリー作品を鑑賞する際は、まず、どこまでが本当でどこからが嘘かの虚実の境界を楽しみたい。細部に隠された伏線や矛盾点、作り手側の意図や仕掛けを探すのも、モキュメンタリーならではの楽しみ方だろう。

ただし、過去には視聴者がモキュメンタリー作品を真実と誤解して問題となったケースもある(フジテレビ『緊急結婚特番』2006年など)。鑑賞時は作品情報をよく確認し、フィクションであることを理解した上で楽しむようにしたい。

※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。

文/長尾尚子

Author
ライター歴18年。2018年に独立し、フリーランスに。複数のWebメディアで記事を執筆中。育児・教育をはじめ、住宅ローン、保険、金融、エンタメなど幅広い分野の取材・執筆を手がける。【資格】消費生活アドバイザー、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。子ども3人を育児中のママでもある。

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