自社設計・自社施工の分譲住宅を手がける諸戸の家株式会社は、スイスの高級機械式腕時計ブランド「フランク ミュラー」の美学を建築空間として表現した邸宅「FRANCK MULLER HOUSE No.01」を開発。東京都目黒区八雲に完成させた。
フランク ミュラーを象徴するビザン数字とトノウ カーベックスの曲線を随所にあしらい、外観からインテリアまでブランドの美学を体現した世界で唯一の戸建住宅である。
プロジェクトの背景と意義

諸戸の家はこれまで、複数の邸宅でフランク ミュラーのインテリアコレクション「FRANCK MULLER FUTURE FORM」を採用するなど、同ブランドとの関係を深めてきた。

2024年6月に販売した弦巻の邸宅では、インテリアによる空間演出としての協働を行ない高い評価を得たが、今回はその関係をさらに発展させ、ブランド監修のもと建築設計が進められた。
フランク ミュラーの美学を空間として表現するために多くの検討を重ね、デザイン、構造、素材、照明などあらゆる要素を綿密に設計。時計づくりの精密さと邸宅建築の完成度を融合させた試みは、世界でも類を見ない。
■ラグジュアリー住宅市場の拡大と価値観の変化

近年、国内外のラグジュアリーブランドが高級住宅やレジデンス事業に参入する動きが活発化している。実際、ファッションや自動車、ホテルなど異業種のブランドが、自らの美学や世界観を空間デザインとして表現する事例が増え、同社では「住宅を『ブランド体験の舞台』として捉える流れが加速しています」と分析する。
その背景には、富裕層の価値観が「モノの所有」から「時間や体験の質」へと移行していることが挙げられる。ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)やナイト・フランク(Knight Frank)の調査でも、世界の富裕層消費が体験重視にシフトしていることが示されており、国内でも同様の傾向が報告されている。

諸戸の家は、こうした潮流の中で、建築に文化的価値を見出してきた企業だ。創業以来、住宅を単なる不動産ではなく「豊かさを形にする場」と捉え、職人技や地域文化との融合を重視してきたという。
その延長線上に位置づけられるのが今回のプロジェクトであり、フランク ミュラーが時計の世界で培ってきた「時を愉しむ」という哲学を、建築デザインという日常の空間にまで拡張する試みになる。
この件に関して同社では、「ラグジュアリー住宅市場が拡大する中にあっても、“文化と技術の均衡で価値を築く”という諸戸の家らしいアプローチを示しています」と説明する。

■フランク ミュラーの美学を邸宅建築として具現化

2024年6月に販売された「弦巻の邸宅 with FRANCK MULLER」は、同ブランドのインテリアを住空間に取り入れた邸宅として高い評価を得た。その成功を経て、本邸宅では同ブランドの美学を設計デザインから表現するという、より本質的な取り組みへと発展させた。
フランク ミュラーは創設以来、革新的なデザインと精緻な機構によって「時」を芸術に昇華させてきたブランドだ。今回の邸宅では、その創造精神を空間全体に投影。諸戸の家の建築力と融合することで、精緻さと品格、遊び心と秩序が共存する邸宅が完成した。
■プロデューサーのコメント
<諸戸の家レジデンスプロデューサー・吉川政弘 氏>
“時を愉しむ”というブランド哲学を、建築というかたちでどこまで表現できるか。その挑戦がこのプロジェクトの出発点でした。フランク ミュラーが描いたデザインを、諸戸の家の技術と審美眼で邸宅に昇華させる。異なる分野の美学が響き合い、ひとつの作品のような住宅が完成したと感じています。
邸宅概要

所在地/東京都目黒区八雲
交通/東急東横線「自由が丘」駅 徒歩14分、東急バス「産能大前」バス停 徒歩3分
敷地面積/237.05平方m(71.7坪)
延べ床面積/292.04平方m(88.34坪)
施工面積/362.12平方m(109.54坪)
間取り/木造2階建て 5LDK+SIC+WIC
主な設備/シャワールーム、パントリー、ホームエレベーター、ルーフバルコニー、バルコニー、ビルトインガレージ(2台)、ゲストパーキング、テラス、
販売価格/8億円後半
構成/清水眞希







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