10月28日にニデックが前日比19%安となり、その後の日経平均が好調のなかでも、ニデックの株価は不調が続いている。
ニデックとは、もともと永守重信氏が「日本電産(株)」として京都に設立した、小型モーターの会社である。
永守氏はM&Aにより、ニデックを世界一のモーターメーカーにしたカリスマ経営者。そんなニデックは、2025年3月期の売上高は2兆6,078億円、純利益は1,676億円と好調な業績だった。
10月28日に株価が19%も急落した材料は、日本取引所グループ(JPX)による「特別注意銘柄」への指定であった。ニデックは、その前の9月にも大きく急落していた。業績が好調だったニデックが、大きく下がっている原因は何だろうか。本記事では、金融を専門とする著者が3つの原因を解説する。
ニデックの株価が下がった原因とは?
ニデックの株価が大きく下がった原因は、以下の3つ。
(1) 不適切会計の疑い
(2) 特別注意銘柄
(3) 日経平均除外
ニデックは2025年7月に不適切な会計処理を行った疑いのある資料が発見された影響で9月に株価は大きく下落した。
そして、2025年9月26日の有価証券報告書にて、監査人から「意見不表明」とされた。
「意見不表明」とは
監査人が監査を行うなかで、財務諸表全体に対して意見を表明するための証拠が得られなかった場合に監査人が表明する。
通常は、決算等で公表される財務諸表には、監査人が会計監査を行った結果、財務諸表が適正であるという監査意見が財務諸表に付されるが、ニデックのように監査するための証拠が得られなかったときに、財務諸表が適正であることの表明を拒否する「意見不表明」が行われる。
ニデックに対する「意見不表明」の原因は、監査報告書に記載されており、2025年6月ごろから続々と発覚した不適切な会計処理に関する証拠が、現在第三者機関による調査中で、未だ解明できていないからである。
そして、内部統制についても、適正な財務諸表を表示するためきちんとした内部統制が行われているかどうか、第三者委員会の調査中であり、これについても「意見不表明」とされている。
この「意見不表明」の結果として、特別注意銘柄に指定された、というわけだ。
特別注意銘柄とは、有価証券報告書等の監査報告書で、監査人が「不適正意見」または「意見不表明」とした銘柄、あるいは有価証券報告書に虚偽表示をした場合で、JPXが判断して指定する。
さらに、特別注意銘柄となった結果、ニデックは日経平均とTOPIXの銘柄からも除外された。
個人投資家や機関投資家の多くは、何かの指数に連動させるファンドに投資するインデックス投資をしている人が多い。
日経225インデックス、TOPIXインデックスといった日経平均やTOPIXで構成されるファンドは、その銘柄から外れれば、ファンドの投資対象からも外れ、その銘柄を売却する。
今回、ニデックが構成銘柄から外れたことで、ファンドが保有していたニデックは、大きな規模で売却され、売り圧力となった。
不適切な会計処理の内容は?
まず、ニデックのイタリア子会社が、申告に誤りがあり、未払いの関税が発生した。そこで、第三者の専門家と社内調査が行われたが、7月に中国子会社で2024年9月下旬にサプライヤーからの値引き(約2億円)に関して不適切な会計処理が行われた疑いが出た。
この結果を受けて、さらに調査をすすめると、ニデックやそのグループ会社で、リスクのある資産の評価減を恣意的に先延ばしにする、不適切な会計処理が行われている疑いのある資料が発見された。これを受けて、第三者委員会が設置されることに。
リスクのある資産に対する不適切な会計処理に関して、経営陣が関与したと疑われる資料も発見された。
さらに、中国への輸出取引に関して、適正金額より低い関税申告、内部通報により中国子会社の源泉所得税を過少申告していた疑いも出ている。







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