ファミリーマートの『ファミチキ』は、今や「国民食」と呼ぶべきものではないだろうか?
コンビニのスナックフードを「ジャンクな食べ物」と言い捨ててしまうのは簡単だ。しかし、20世紀中葉に発生した「若者文化」とは常に(大人の目から見れば)ジャンクな服やジャンクな靴、ジャンクな音楽、そしてジャンクな食べ物と共にあったはず。現代人がこれを否定することはできない。

それ以前に、コンビニのスナックフードは手軽に食べることができるため、あれこれと忙しい現代人には欠かせないものになっている。そんなファミチキを食べる際、どんな酒と組み合わせればいいのか。それを科学的に検証してみた、という方向性のプレスリリースがPR TIMESで配信された。
「カベルネ・ソーヴィニヨン」って何?
10月1日のことである。筆者はこんなタイトルのプレスリリースを見つけてしまった。
“まだまだ続く、「ファミチキ あげあげ祭」 キャンペーン期間中はフライドチキンが前年同時期比118.7%越え ファミチキ・ファミチキ レッドに最もあうお酒を科学的に解明!”
その内容は、AI味覚センサーを使ってファミチキとファミチキ レッド、そしてファミリーマートで取り扱っている様々な酒の甘味・塩味・酸味・苦味・旨味を算出して相性を数字で算出するというもの。AIは今や様々な分野で活用されているが、まさかこの方向性でも使えるとは……。
該当のプレスリリースには、こう綴られている。
キャンペーンに合わせてAI味覚センサー「レオ」(OISSY株式会社が開発)を用いた「ファミチキ×お酒」のペアリング調査を実施し、ファミチキとの相性が最も良いお酒は「スーパーチューハイ グレープフルーツ 」、ファミチキ レッドとの相性が最も良いお酒は「カベルネ・ソーヴィニヨン」であることが判明しました。
(まだまだ続く、「ファミチキ あげあげ祭」 キャンペーン期間中はフライドチキンが前年同時期比118.7%越え ファミチキ・ファミチキ レッドに最もあうお酒を科学的に解明!-PR TIMES)
残念ながら、ここで「表記の仕方」について指摘しなければならない。
「ファミチキ レッドとの相性が最も良いお酒はカベルネ・ソーヴィニヨン」とあるが、カベルネ・ソーヴィニヨンは酒の名前ではなくワイン用のブドウの品種名である。赤ワイン向けのブドウの代表格で、日本酒で言うところの山田錦のようなもの。にもかかわらず、「カベルネ・ソーヴィニヨンという酒がある」と読者に解釈されてしまうようなニュアンスの書き方はやはり適当ではないだろう。
一応、同じプレスリリースの中に「レインボーロリキート カベルネ・ソーヴィニヨン 750ml」と商品名が書かれている。ならば「カベルネ・ソーヴィニヨン」とは書かずに当初から「レインボーロリキート カベルネ・ソーヴィニヨン」としたほうが、読者を混乱させずに済むのではないか。
ファミチキを「ご馳走」にするチューハイ
ともあれ、ファミリーマートが「ファミチキに合う酒を科学的に検証」した事実は非常に興味深く、メディアで取り上げる価値はあるだろうと筆者は強く感じた。
もちろんそれは、「自分の舌で検証してみる」という意味である。
というわけで、筆者は近所のファミリーマートでファミチキとファミチキ レッド、そしてスーパーチューハイ グレープフルーツとカベルネ・ソーヴィニヨンを使ったワインを購入した。ただし、ワインはレインボーロリキートではなく、代わりに『クルールドシュッド カベルネ 375ml』を買う。理由は簡単で、後者は個人的に好きなワインだから。
早速味わっていこう。まずはファミチキとスーパーチューハイ グレープフルーツから。筆者は普段はあまり柑橘系のチューハイは飲まない。味わいに変な「ベタつき」があるのが嫌だからだ。ただ、このスーパーチューハイは意外にも爽やかな味わいで、このテの酒にありがちな「ベタつき」が殆ど見当たらない。これには驚いてしまった。
そして、この爽やかさが確かにファミチキと合うのだ!
唐揚げにレモンの搾り汁をかけるかどうかは議論があるのだが、ファミチキ×スーパーチューハイ グレープフルーツはそれに似た味わいかもしれない。これはちょっとした「ご馳走」とも言える味で、下手をすればこのせいで今後路上飲酒をする者が増えてしまうのでは……と余計な心配をしてしまうほどだ。
赤ワインと「ライトな辛さ」の相乗効果
次に試してみるのは、クルールドシュッド カベルネとファミチキ レッドの組み合わせ。
ファミチキ レッドは通常のファミチキに比べたら、ピリッとした辛さがある。ただしそれは、耐えられないレベルの辛さでは決してない。激辛好きの人には物足りないかもしれないが、辛いものが苦手な人でも楽しめる辛さ……というのはいささかややこしい表現か。
ともかく、この「ライトな辛さ」とカベルネ・ソーヴィニヨン種の「重い感じ」のワインは(筆者の舌で判断しても)なかなか相性が良い。2種類の異なる刺激が、舌の上にちょうどいい圧力を与えてくれる具合だ。赤ワインは、やはりスパイスの利いた肉と一緒に口内へ押し込むべきものなのだ。
ワインの肴にコンビニのホットスナックを選ぶ行為に否定的な人もいるかもしれないが、この物価高の時代に「ホットスナックの再解釈」は必要不可避ではないかと筆者は考えている。手軽かつ安価に購入でき、さらに自宅の電子レンジで温める必要がないからだ。これを従来のような「その場で食べるジャンクフード」として扱い続けるというのは、いささかもったいない気がする。
自分なりのフェイバリットを探してみよう!
「ファミチキと相性の良い酒を科学的に探す」というファミリーマートの取り組みは、「消費者が自分なりのフェイバリットを探すようになる」効果も生み出すはずだ。
ファミリーマートがプレスリリースで発表したことは、あくまでも「科学の知見から算出したベターな回答」である。しかし、人間の好みは世界人口の数だけ存在する。自分の舌に合った「ファミチキの相棒」を探すのも、インフレーション時代を乗り切るためのテクニックと言えるのではないか。
また、これを一つの機会と捉えてワインを「平日就寝前の時間に飲む酒」としてみるのも悪い判断ではないだろう。
【参照】
まだまだ続く、「ファミチキ あげあげ祭」 キャンペーン期間中はフライドチキンが前年同時期比118.7%越え ファミチキ・ファミチキ レッドに最もあうお酒を科学的に解明!-PR TIMES
クルールドシュッド カベルネ 375ml
取材・文/澤田真一
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