シミュレーションから分かる「5年で120%」のワナ
では、実際にGPUサーバー投資を行った場合、どのくらいのリターンが得られるのだろうか?具体的なモデルケースを設定し、4つのシナリオでその損益をシミュレーションしてみよう。
■シミュレーションの前提
・投資家: 年間課税所得3,000万円の中小企業
・投資額: 1,000万円(GPUサーバー1台、即時償却を適用)
・法人実効税率: 30%
・運用期間: 5年間
・GPUサーバー投資を扱う業者が提示している情報より計算シミュレーション
■GPUサーバー投資のシミュレーション結果:市場の過熱が5年続くと見込むならアリ
このシミュレーションからリターンの振れ幅が非常に大きいハイリスク・ハイリターンな投資であることがわかる。
シミュレーションの見方だが、「収入合計」は、投資したGPUサーバーからどのくらいの収入が得られるかを計算した。また、投資結果は、元本を差し引いた金額で最終的な手残りの金額となる。例えば「楽観シナリオ」では、100万円が手に残るので、投資に対するリターン(ROI)は、5年で10%となる。
標準的なシナリオでは、節税効果が主なリターンとなり、運用益は投資元本をカバーする程度になる。大きな儲けにはならないが、有効な税務戦略として成立する可能性があるともいえる。しかし、やはり収入が見込めないと損が発生してしまうので、ハイリスク・ハイリターンとした。
■広告で煽っている、5年で120%の正体は?
「超楽観シナリオ」で、緑色背景の部分に注目してほしい。5年間運用してみての純利益に注目すれば、+120%という説明が作れる。一方、最終的なリターンは800万円なので、5年で80%となる。数字的には、これでも悪く無いのだが、実現可能性は極めて低そうだ。節税という“ドーピング”がなければ、この投資は超楽観シナリオ以外では必ず損失を生む構造にもなっている。
ゆえに、@DIME読者のみなさんのような給与所得が主体の方は、手を出すのは特に慎重になってほしい。
リターンの数字やブームに煽られることなく、投資を向き合うか冷静に考えよう
AIブームと国の税制を背景にしたGPUサーバー投資は、大きなリターンが期待でき、社会の波に乗っている実感がもてる一方、やはり、元本割れの可能性が高さもはらむ、諸刃の剣とも言える投資スキームだ。
この投資の本質は「課税の繰り延べ」効果にあり、税務メリットがなければ投資単体での利益確保は極めて難しい構造となっている。
したがって、これが選択肢となり得るのは、最悪の場合に備えて、投資した元本を全て失ってしまっても許容できるリスク許容度があり、「節税」という言葉の響きだけで安易に判断しない、冷静な経営者に限られるといえる。
もちろん、すべてのGPU投資を否定しているわけではない。下表に投資検討時のチェックリストも作成したので、投資を検討する際活用してほしい。
■GPUサーバー投資検討時のチェックリスト
むしろ積立投資で毎月買い付けできる数量が多くできる「時間分散」の考え方を見失わないことが重要である。米国の信用取引残高のデータなどを定期的にチェックし、暴落の兆候をつかむようにしておくと、いざという時に慌てない。
2026年は、投資家の真価ひいてはビジネスパーソンがもつべき資質である「冷静に戦略と規律を守る力」がより問われているともいえる。
文/久我吉史
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