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着用率はわずか16%!?アメリカ映画から「マントを着けたヒーロー」が消えた理由

2025.11.14

〝正義の味方〟はひょっとすると斜陽産業なのだろうか――。

スーパーマンやバットマン、スパイダーマン、アイアンマンなどのスーパーヒーロー映画が常に人気のアメリカ映画界だが、2025年はその人気に陰りが見えてきているという。

今年の全世界映画興行収入ランキングのトップ10からひょっとするとアメリカのスーパーヒーロー映画作品が消えるかもしれないとの懸念も生じているようだ。

人気低下の要因としては、多作による〝スーパーヒーロー疲れ(superhero fatigue)〟が指摘されており、メディアミックス戦略による供給の飽和状態、そして定型的な物語構成による質の低下といった要因が挙げられ、観客の飽きやマンネリ感を招いているともいわれている。

颯爽とマントをなびかせるスーパーヒーローの面々にはぜひとも人気の復活を期待したいものだが、新たな研究ではマントを着用しているスーパーヒーローはむしろ少数派であることが報告されていて興味深い。

そしてマントよりもスーパーヒーローであるためにもっと重要な条件があるのだという。

スーパーヒーローのマント着用率はわずか16%

ゴールウェイ大学、フロリダ大学、アーカンソー大学の合同研究チームが今年9月に「Irish Journal of Medical Science」で発表した研究は、スーパーヒーローのマント着用率と、スーパーヒーローである条件を特定するというユニークなテーマである。

研究チームは興行収入上位25位のスーパーヒーロー映画を調査する中で、スーパーマン、ワンダーウーマン、スパイダーマン、キャプテン・アメリカ、アイアンマン、アクアマンなど主要キャラクター68人を綿密に調査した。スーパーヒーローについては61件、悪役および中立キャラクターについては36件の観察が行われた。

その結果、マントが彼らをスーパーヒーローにしているわけではないことが判明した。

スーパーヒーローのマント着用率はわずか16%で、スーパーヒーロー以外のキャラクターの着用率は11%であった。

確かにスパイダーマンやアイアンマン、アクアマンなどはマントを着けていないし、マーベルのスーパーヒーローが勢ぞろいしている『アベンジャーズ』でも、マントを着けているのはマイティ・ソー、ロキ、ドクター・ストレンジくらいのようだ。

マントを着けていようがいまいが、スーパーヒーローである条件として最も重要な要素もまた判明した。それは他者のために身を粉にする利他的な使命である。ほぼすべて(98%)のスーパーヒーローが他者を助けるという強い意志を示していたのだ。

「この研究は、利他的な使命を持つことが、スーパーマン、医療従事者、救急隊員、教師など、誰であってもスーパーヒーローになるための重要な決定要因であることを明確に示しています」と研究論文で言及されている。

コロナ禍のスーパーヒーローはマント非着用

「すべてのスーパーヒーローはマントを着けているのか?(Not all superheroes wear capes)」というフレーズは、アメリカでは一種のことわざや箴言で、真のヒーローの条件は特別なコスチュームなどではなく、その行動や性質(利他主義など)によって定義されるべきであることを示唆している。身近な身の回りのヒーローが必ずしも派手な衣装を身に着けていないという事実もまた反映している。

コロナ禍中は、医療従事者やエッセンシャルワーカーを讃える言い方として、このフレーズがよく使われていたという背景もある。

この研究の著者らも専門が医学系である。スーパーヒーロー映画の熱狂的なファンである3人の共著者は仕事の合間や勤務時間外で「すべてのスーパーヒーローはマントを着けているのか?」の問題に楽しみながら取り組み、約2カ月かけて25本の映画すべてを独自に鑑賞し、分析を実施したのだった。

研究チームはヒーローが人間かエイリアンか、知性の程度、別人格があるかどうか(クラーク・ケントの例)、そしてもちろん利他主義とマントなど、スーパーヒーローとしての可能性のある属性のリストを作成し、利他主義を持たないがマントを着けている悪役についても調査した。

また研究チームは科学的なアプローチと厳密な方法論を用いて研究プロトコルを設定し、スーパーヒーローに求める特性を決定し、サンプルサイズを計算して分析を行ったということだ。

スーパーヒーローに燃え尽き症候群リスク

この研究はスーパーヒーローであることは困難であり、医療のような職業では多くの責任を伴い、燃え尽き症候群につながる可能性があると指摘している。大きな期待が寄せられているスーパーヒーローは心身共に消耗しきってしまう燃え尽き症候群と隣り合わせの危うい存在でもあったということになる。

「政策立案者はこのことを認識すべきです」と研究論文は指摘している。確かにコロナ禍中に疲弊し尽くしてしまった医療従事者は少なくないはずだ。

「マントはドラマチックに見えるかもしれませんが、スーパーヒーローの真の姿は利他主義です。私たちの分析はスーパーマンであろうと最前線の医療従事者であろうと、真のヒーローとは、大義のために無私無欲に働くことにあることを示しています」と研究チームは結んでいる。

スクリーンの中のスーパーヒーローたちのアクションに熱狂するのも一興だが、医療従事者やエッセンシャルワーカーなど、身の回りのヒーローたちへのリスペクトも忘れてはならない。

※研究論文
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40971124/

※参考記事
https://www.universityofgalway.ie/about-us/news-and-events/news-archive/2025/october/not-all-superheroes-wear-capes—altruism-not-accessories-defines-true-heroism–1.html

文/仲田しんじ

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北海道生まれ東京育ち。学業ドロップアウト後、小説家を志しつつ広告代理店営業マン、任期制陸上自衛官、家電販売員などを経て経て出版業界へ。アスキーなどで編集者として勤務した後、フリーライターとして活動。科学から心理学まで幅広いテーマを執筆。ネット上の研究論文を読むのが趣味。大型自動二輪免許を持っている。 X: @nakata66shinji

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