ここ数年の国内経済の変化として、〝令和の米騒動〟と言われた米価に象徴される「物価の上昇」が挙げられるだろう。これが株高の1つの要素と考えられ、また「賃金の上昇」もさまざまなルートを通じて株価を押し上げる方向に作用したと思われる。
そんな日本株を巡るマクロとミクロの環境変化について、三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から検証リポートが届いたので、概要をお伝えする。
なお検証はマクロ編とミクロ編に分かれており、1回目となる今回はマクロ編だ。
ここ数年の国内経済の変化として「物価の上昇」が挙げられ、これが株高の1つの要素と思われる
ここ数年で、日本株を取り巻く国内経済には大きな変化がみられ、また、国内企業の意識も顕著に変わりつつあるように思われる。そこで以下、経済全体レベルの「マクロ」と、企業レベルの「ミクロ」の環境変化について、具体的な例を挙げつつ、それらが日本株にどのような影響を与えているのか、検証していきたい。なお、検証はマクロ編とミクロ編の2回に分けて行ない、今回は1回目となるマクロ編である。
国内経済の大きな変化は、ここ数年の「物価の上昇」だ。企業の売上高や利益は「名目ベース」であり、物価変動の影響を受けるため、物価の上昇は、名目ベースの売上高や利益の増加要因となる。
実際、コロナ・ショックを経て、物価の上昇とともに株高が進行していることが確認され(図表1)、近年の国内物価の上昇は、株価を押し上げる1つの要素と考えられる。

■もう1つ挙げられるのが「賃金の上昇」であり、さまざまなルートで株価を押し上げる方向に作用する
そして、国内経済の環境変化として、もう1つ挙げられるのが「賃金の上昇」だ。2024年3月29日付レポートの図表1で示した通り、過去の平均賃上げ率と株価の推移は、相応の連動性が確認できる。
また、同レポートの図表2のとおり、賃金の上昇は、さまざまなルートで株価を押し上げる方向に作用するため、近年の賃金の上昇は、物価の上昇とともに、株価の押し上げ要因と考えることができる。
なお、日銀は現在、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムが今後も維持されるとみており、利上げのタイミングを慎重に計っている。
このメカニズムが維持される環境下では、企業が物価の上昇分を賃金に反映することで賃上げが継続し、物価の安定的な上昇が見込まれることから、株価には好ましい状況といえる。
そのため、このような環境下での利上げなら、株価への影響を過度に警戒する必要はないと思われる。
■近年のマクロ環境の変化で日本株の上昇基調は堅固に、長期展望では物価・賃金動向が重要
図表2は、1995年以降の名目GDPと東証株価指数(TOPIX)の推移を重ねたもので、総じて連動性の高さが確認できる。これも物価の上昇が影響しており、物価の上昇によって名目ベースのGDPが増えるため、結果的に株価との連動性が高まっているとみられる。
また、賃金の上昇も、消費の増加を通じて名目GDPを増加させることから、株価との連動性を高める一因と考えられる。

以上より、「物価の上昇」と「賃金の上昇」という近年の国内マクロ環境の変化は、日経平均やTOPIXを大きく押し上げた要因と推測され、日本株の上昇基調は、このマクロ環境の変化によって、相応に堅固なものになりつつあるとみている。
この先、長期的に日本株を展望するにあたっては、安定した物価の上昇が続くか否か、賃上げ傾向が続くか否かの見極めが、極めて重要になると思われる。
構成/清水眞希







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