2025年11月4日より衆議院本会議において各党の代表質問が始まり、高市首相にとって就任後初となる本格的な国会論戦が開始された。
就任直後、10月28日にアメリカのトランプ大統領との会談を終えると、韓国・慶州におけるAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議に出席。10月31日には中国の習近平主席との会談に臨むなど、外交では一定の成果を挙げた高市首相だが、内政に目を向けると衆議院の維新を含む与党議席は230であり、233の過半数には届いていない。
そんな高市首相は今後、どのように主要政策を打ち出していくのか。三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から考察リポートが届いたので概要をお伝えする。
高市政権は戦略的に財政出動を行うことを基本方針として、物価高対策を最優先に位置付ける
自民党の高市早苗総裁と日本維新の会の吉村洋文代表は10月20日、連立政権合意書に署名し、翌21日に高市政権が発足した。23 日には高市首相が18人の閣僚に出した指示書の全容が報じられ、24日には高市首相による所信表明演説が行なわれた。
これら一連の政治イベントを経て、高市政権の主要政策が明らかになったことから、今回のレポートではポイントをまとめ、考察を行なってみたい。
主要政策の概要は、所信表明演説で確認することができ、高市首相は強い経済の構築のため、責任ある積極財政の考え方のもと、戦略的に財政出動を行なうことを基本方針としている。
最優先として位置付けられた物価高対策には、ガソリン税と軽油引取税の旧暫定税率の廃止、診療報酬・介護報酬の引き上げ、中小企業・小規模事業者、農林水産業の支援、冬の間の電気・ガス料金の支援などが含まれる。
■物価高に対応した経済対策実施のため、今年度補正予算の成立などがスムーズに進むかが焦点
物価高に対応した経済対策を実施するには、財源の裏付けとなる2025年度補正予算を年内に成立させる必要があり、高市首相が所信表明演説で触れた主な政策について、予算との関係をまとめると、図表1のとおりになると思われる。

まずは高市政権が年内スムーズに、経済対策の閣議決定や2025年度補正予算の成立、2026年度の当初予算案・税制改正大綱の閣議決定を進められるか否かが大きな焦点になると考えられる。
また、高市政権は、経済安全保障、食料安全保障、エネルギー安全保障、健康医療安全保障、国土強靭化対策などの課題に対する危機管理投資を成長戦略の柱として位置付けている。
11月4日には、成長戦略の方向性や具体策を示す日本成長戦略本部が始動し、人工知能(AI)・半導体など17項目が戦略分野に設定された(図表2)。これらの一部が経済対策や2025年度補正予算に組み込まれることも想定できる。


■資産運用立国の路線は継続へ、また維新との連立持続性の観点からは議員定数削減にも注目
高市首相は、成長戦略を加速させるためには金融の力が必要とし、前述の指示書において、片山さつき財務相に対し、資産運用立国・投資立国の実現に向けて人的投資やインパクト投資を含めたすべての投資を促進し、企業統治の強化や資産運用の高度化などに取り組むよう指示した。
高市政権は、岸田政権以来の「貯蓄から投資へ」を促す「資産運用立国」の路線を引き継ぐことになる。
なお、衆議院議員定数の削減について、所信表明演説では言及されていなかったが、自民党と維新との連立政権合意書には、1割削減を目標として、12月17日まで開かれる臨時国会で議員立法案を提出し、成立を目指すと明記されている。
こちらは政治改革に関連する話ではあるが、今後、自民党と維新の連立政権の持続性を考える上では、注目しておきたい点だと考える。
構成/清水眞希







DIME MAGAZINE












