SNS上の投資家界隈で、「配当利回りが100%超!?」という信じがたい数字と共に、話題となっている米国上場ETFがある。「イールドマックス(YieldMax)」や「イールドブースト(YieldBOOST」などの名称がついており、テスラや、NVIDIAといった米国株を対象に、デリバティブという金融の仕組みを上手く組み合わせることで、高配当を実現している。が、数字的な魅力の裏には、何か見落としているリスクは無いのだろうか?
本記事では、高配当を実現する利回りのカラクリを紹介し、投資対象として“買い”なのか分析してみよう。
超高配当ETFの例
YieldMax TSLA Option Income Strategy ETF(シンボル:TSLY)
例えばテスラの株式とデリバティブを組み合わせた超高配当ETF:TSLYでは、年あたりの分配金利回りが101.78%と驚異的に見える。他、NVIDIAを対象にした、NVDVや、アップルを対象にしたAPLY、複数の企業の株式を対象にしたULTYなどがある。
後述するがULTYは、類似のものと比べても分配金利回りは、突出して高い。
出典:yieldmaxetfs
超高配当のカラクリは「カバードコール戦略」にあり
超高配当ETFの分配金を生み出す源泉が、「カバードコール戦略」である。個人投資家には馴染みがあまりない戦略だが、数百数千憶円以上の資金を動かす機関投資家にとっては、一般的な戦略である。
この戦略を一言でいうと「保有している株式の値上がり益を一部手放す代わりに、手数料(プレミアム)収入を得る」という手法になる。金融用語的には「カバード」と「コール」に分けられ、それぞれ以下の意味が組み合わさった戦略でもある。
1.コール:オプション取引でコールオプションを売る
まず基本となるのがオプション取引だ。これは、株式そのものを売買するのではなく、「将来、あらかじめ決められた価格で、その株式を売買する『権利』」を取引すること。元になる原資産の株式から派生した金融取引の総称である「デリバティブ」の一種でもある。
・コールオプション: 将来、特定の株式を「買う権利」
・プットオプション: 将来、特定の株式を「売る権利」
カバードコール戦略では、保有する株式に対し、「コールオプション(買う権利)」を他の投資家に「売却」する。相手の投資家は、その権利を得るための対価として、「プレミアム」という手数料を支払ってくれる。この「プレミアム」が、高配当の源泉となっている。
2.カバード
「カバード」とは、売却する権利の対象とした株式を、実際に保有している状態を指す。なぜ保有している状態を作るかというと、「損失が無限大になるリスク」を排除するためだ。
もし株式を保有せずにコールオプションを売ってしまうと、打った相手に対しては、どんなに株価が高くなったとしても、市場で買って、約束の値段で安く売らなければなりません。つまり、損失が無限大になるリスクとなってしまう。
一方、「カバード(株式を保有している)」状態であれば、万が一株価が上昇して、権利を行使されたとしても、手持ちの株式を渡せばよいだけなので、リスクを「将来の値上がり益が得られない」点に限定できる。
つまり、カバードコール戦略とは、「株価が爆上がりした時の大きな利益を諦める」制約を受け入れる代わりに、「毎月安定した高い収入(プレミアム)を得る」ことを目的とした、投資手法である。
○オプションの買い手と売り手の関係

○カバードコール戦略の図解








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