2025年10月21日、衆参両院の指名選挙により、自民党の高市早苗総裁が第104代首相に指名され、初の女性首相が誕生。
これを受けて10月27日には日経平均株価が5万円台に到達、31日は終値として史上最高値である5万2411円34銭をつけた。
そんな中、開催された日銀の金融政策決定会合において、政策金利据え置きが決議された。この決定が市場に及ぼす影響や、今後の利上げ予測などに関する分析リポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から届いたので概要をお伝えする。
政策金利据え置きは予想どおりだが、前回と同じ2名が反対、展望レポートも目立った変更はなし
日銀は10月29日、30日に金融政策決定会合を開催し、三井住友DSアセットマネジメントを含む大方の予想通り、無担保コール翌日物金利の誘導目標(現行0.50%程度)を6会合連続で据え置くことを決定した。
今回も政策委員会の委員9名のうち7名が賛成票を投じた一方、高田創審議委員と田村直樹審議委員は、誘導目標の0.75%程度への引き上げを求めて反対票を投じたが、反対票を投じる委員は他にいなかった。
同時に公表された展望レポートでは、2025年度の実質GDPの見通しと2026年度の消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)の見通しが小幅に上方修正された(図表1)。
リスクバランスについて、2026年度の経済見通しは下振れリスクが大きく、物価見通しは概ね上下にバランスしているとの評価は変わらず、物価安定の目標の達成時期も見通し期間後半との見方が維持された。

■植田総裁は経済・物価に関する3つの点検ポイントを説明、春闘の重要度が高まっている印象に
植田総裁は記者会見において、今回の展望レポートにおける経済・物価見通しは前回から大きく変わっておらず、「中心的な見通しが実現する確度は少しずつ高まってきている」との判断を示した。
また、これまで挙げていた、経済・物価情勢に関する3つの点検ポイントのうち、1つ目の米国を始めとする海外経済の動向について、関税の影響は今後発現する見通しを改めて示している。
2つ目の関税政策が企業収益や賃金などに与える影響について、植田総裁は「企業の積極的な賃金設定行動が途切れることがないかどうか、もう少し確認したい」と述べており、春闘の重要度が高まっているように見受けられた。
3つ目の食料品価格を含む物価動向については、「中心的な見通しに沿って推移しており、現状は(政策が後手に回る)ビハインド・ザ・カーブに陥る懸念が高まっているとは認識していません」と述べた。

■賃上げの初動のモメンタムに関する十分な情報がそろうと思われる来年1月の利上げ予想を維持
また、植田総裁は春闘での賃上げ率について、「きちんとした姿を知るまで待ちたい」ということではなく、「初動のモメンタム(勢い)がどういう感じになるかというところをもう少し情報を集めたい」と話し、3月中旬頃公表される連合の春闘回答集計まで待つ必要はないとの考えを示唆した。
春闘などの主なスケジュールは図表2のとおりで、来年1月には「初動のモメンタム」に関する十分な情報がそろう公算が大きいと思われる。

そのため、三井住友DSアセットマネジメントは2026年1月に、日銀支店長会議での企業側からの情報も踏まえ、25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げが行われるとの見方を維持している。
なお、為替市場では、今回の会合の内容について、「ハト派的」との受け止めが多かった模様で、ドル高・円安の反応がみられたが、ここからさらにドル高・円安が進行した場合は、10月9日付レポートで解説したとおり、財務省の動きが注目される。
構成/清水眞希







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