2013年にヨーロッパで販売が開始されたルノーのコンパクトSUV「キャプチャー」。発売翌年にはヨーロッパSUVで販売台数No.1を獲得するヒット作となった。その後、2019年に2代目になると翌20年には再び同セグメントで販売台数No.1を獲得するなど、これまでに世界で200万台以上を販売するルノーの人気車種になっている。
新型「キャプチャー」は2代目からのマイナーチェンジモデル。今モデルからパワーユニットの構成が変わった。ガソリンエンジンがカタログから落とされ、フルハイブリッドとマイルドハイブリッドの2つのパワーユニットに整理された。グレードはマイルドハイブリッドに「エスプリアルピーヌ マイルドハイブリッド」と「テクノマイルドハイブリッド」、フルハイブリッド1グレードの3タイプ。マイルドハイブリッドの2グレードはタイヤサイズや前席シートヒーターや運転席電動シートが装備されるなど機能面が異なる。
外観は水平なボンネットと多面的グリルやフロントマスクが特徴的。グリルの中心にはルノーのロゴ。それを囲むようにバンパー上部とグリルのブロック模様が新しい。薄型のLEDヘッドライトと縦長のハーフダイヤモンド型LEDデイタイムランプも新しいデザイン。これらはデザイン責任者のジル・ヴィダルのデザインテイスト。これからのルノー車のメインデザインだ。デイタイムランニングライトのとなりのエアインテークは空力向上とブレーキ冷却のためだ。
試乗はフルハイブリッドとマイルドハイブリッドを乗り較べる形で行った。最初にハンドルを握ったのは、フルハイブリッド。ルノーのフルハイブリッドは、独自に開発したハイブリッドシステムを実用化している。
フルハイブリッドシステムはトヨタが特許を持っており、他社が開発しても特許に抵触するので、実用化を断念してきた。しかし、ルノーはF1で培ったノウハウを生かし、トヨタの特許に抵触しないフルハイブリッドを実用化した。
メインモーターであるEモーターとハイボルテージスターター&ジェネレーター(HSG)の2つのモーターと1.6L、4気筒ガソリンエンジン。これらを繋ぐトランスミッションの電子制御ドグラッチマルチモードATで構成されるフルハイブリッドシステムだ。デビュー当初はミッションとモーターのマッチングがイマイチで、ギクシャクしていたが改良を重ねており、今回のモデルではギクシャク感も大幅に改良されスムーズだった。しかも燃費もWLTCモードで23.3km/Lを達成。これは2025年7月時点で輸入車トップの数値だ。
ドライブモードは「コンフォート」を選択したがスタートからの立ち上がりはモーターのトルクで一気に加速する。途中でエンジンがかかるとエンジンのうなり音と振動が室内に伝わってくるが、軽快感は変わらない。走行中の電池への充電は、クルマまかせ。ドライバーが操作することはできない。
動力性能はコンパクトSUVというカテゴリーなので、速さを期待するのは限界がある。今回も一般公道上での0→100km/hの加速は9秒台。ちょっとスポーティーなSUVレベルにとどまっていた。燃費はカタログ値の23.3km/Lには届かなかったが、それでも16~18km/Lは記録した。ハイブリッドシステムがこれまで得意としてこなかった高速走行での燃費が良いのは、高速走行の多いヨーロッパ車に合うように設計されているからなのだ。
フルハイブリッドには1.2kwhの駆動用バッテリーが搭載され、新採用のE-SAVE機能は電池の充電量を40%以上に維持し、モーターのアシストを最適化している。マイルドハイブリッドもスポーティな走りではフルハイブリッドに負けていない。フルハイブリッドが1.6Lの自然給気に対し、マイルドハイブリッドは1.3Lガソリンターボを搭載。エンジン性能もフルハイブリッドが94ps、148Nmに対し、158ps、270Nmを得ている。しかも車両重量はフルハイブリッドが1420kgに対し、1330kgと90kgも軽い。ミッションも進化途中のドグクラッチマルチモード4速+2速ATより、7速ATのほうがスポーティで、運転していて楽しかった。
例えば、「スポーツ」モードを選択すると、エンジン回転は2500以上にならないとシフトアップせず、1500回転に下がるとシフトダウンする。常に2000回転前後にキープしつつ、加速をするので、トルクの盛り上がりとシンクロしている。アクセルレスポンスがよいのだ。さらに、フルハイブリッドではなかったパドルシフトもマイルドモデルには備わっている。このシフトは操作も小気味よい。ただし燃費に関しては、スポーティな走りを多用したこともあり、11~13km/Lどまりだった。
経済性を重視するか、スポーティさを重視するかでグレード選びは変わる。ちなみに車両価格はフルハイブリッド454万9000円、マイルドハイブリッド409万円(いずれも税込)、マイルドは389万円の廉価版も用意されている。
居住性に関しては、リアシートはやや高めの着座位置で視界も良く、足元も狭くない。頭上は身長170cmクラスまで快適。リアドアガラスのウエストラインはやや高めなので、包まれ感はある。後席は4対6で分割前倒し。荷室との段差は約10cmあり、フルフラットではない。サブトランクはマイルドハイブリッドが、床ボードが2段式で、内張りもあるが、フルハイブリッドは空間が設けられているだけの簡素な造りだ。
ヨーロッパ市場でSUVの販売台数トップを走るフレンチモデルはフルハイブリッド、マイルドハイブリッド、18インチタイヤのマイルドハイブリッドがラインアップされている。そのクルマ選びは、燃費か走りかで分かれそうだ
■関連情報
https://www.renault.jp/car_lineup/captur/index.html#grade
文/石川真禧照 撮影/萩原文博







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