BMW「1シリーズ」はプレミアム・スモール・コンパクトに属するモデル。初代は2004年にデビューしているので、すでに20年以上も続いているシリーズになる。初代と2代目はフロントエンジン、リアドライブのFR方式を採用。当時のこのクラスの5ドア車は、室内の広さを重視し、FF方式を採用していたが、BMWは車両重量バランスを前50、後50で、走りの楽しさを重視したクルマに仕立てた。現行モデルは2024年10月にフルモデルチェンジし、4世代目になったモデル。しかし、パワーユニットはガソリンだけだった。
ディーゼルが加わったのは2025年3月だったが、試乗車の準備が遅れ、ようやく試乗できることになった。しかも試乗車は「MSport」。ノーマルの「120d」とは異なり、アダプティブMサスペンションを搭載したスポーツモデルに仕立てられている。4代目の「1シリーズ」は、フロントグリルが新デザインになった。BMWの特徴であるキドニーグリルに斜めのデザインが取り入れられた。「MSport」はグリルがブラックアウトされているが、斜めのバーとタテのバーが組み合わされている。新しいBMWの顔になるのだろうか。
120dのパワーユニットは、直列4気筒、2.0Lディーゼルターボ。7速ダブルクラッチミッションと、48Vマイルドハイブリッドを組み合わせることで、エンジン出力150PS、360Nmからシステム出力を163PS、400Nmに高めている。
内装は4世代目から大きく変わった。メーターは大型の液晶画面になり、その隣りのコントロールパネルも液晶画面なので、一板の横長のスクリーンに集約、全体に運転席のほうにカーブしたパネルになった。さらにセンターコンソール前のシフトレバーも、小さなツマミ状になり、コンパクトになった。シフトレバーの前には大型のスマートフォンなどを置き、充電できるパネル状の小物置き場が設けられた。
「120d」に乗り込んでみる。前席の着座位置はやや低め。後席はやや高めなので、身長170cmがMAXといったところか。足元はやや狭めで、床中央のトンネルもあるので、快適定員は2名だ。後席の背もたれは3分割、前倒しができる。中央のアームレスト部分も単独で倒すことができる。長尺物をセンターに搭載し、左右に人が座ることができる。
車体後部のラゲージスペースは奥行きこそ730mmと短めだが、左右幅は1m以上あり、高さも450mmを確保している。さらに床下のサブスペースは深さ17cm、奥行き30cm、幅870mmのボックス型で、荷物入れとして使える。実用性の高い荷室が設けられている。ボディサイズも全幅が1800mmに抑えられており、全高は1450mmなので、古い立体駐車場にも対応。都会で使うにはとても扱いやすい5ドアの実用車だ。
しかし、走りの性能は実用車レベルではない。ターボを装着、48Vマイルドハイブリッド+M専用のアダプティブサスの組み合わせは爽快な走りを楽しませてくれるスポーツディーゼルハッチだ。新設計の7速ATシフトの小さなツマミをDレンジにシフトする。シフトモードはP/N/D・Sで、Pはシフトゲート下にプッシュ式でレイアウトされている。ドライビングモードの「MY MODE」は、大画面のコントロールディスプレイに表示される。スタートは「パーソナル」モード。
4気筒2Lディーゼルターボはアイドリング時の振動、音の室内への侵入は抑えられ、不快ではない。スタートからの加速は軽快。エンジンは1200回転あたりからトルクが太くなってくる。この回転域でマイルドハイブリッドの力が発揮されているのだろう。不快な息付きもなくスムーズに回転が上昇する。4000回転を目安にマニュアルモードで加速すると、1速35、2速60、3速で90km/hに達する。ちなみに全開加速でも4500回転を上限にシフトアップする0→100km/hの加速は、手持ちのストップウォッチで7秒台。コンパクトハッチとしては、スポーティな部類に入る。
乗り心地は街中の低速域では路面からのザラつきや目地でのドンッという突き上げがある。中高速になると、ゴツゴツとした動きが抑えられ、フラットになる。最近のBMWはノーマルモデルでも乗り心地は硬めにセットされている。ブレーキも低速域では、若干オーバーサーボ気味にカクッと停止する傾向にある。その動きが「120d」にも感じされた。
「コンフォート」から「スポーツ」モードに切り替える。乗り心地は、細かい上下動が硬めになり、ゴツゴツ感は高速走行でも体感できる。操舵力も全体に重めになり、スポーツ感が高まる。「120d」はMSportということもあり、タイヤはグッドイヤーの「イーグルF1」でサイズは225/45R18というスポーツタイヤを装着しているが、これがオーバークオリティーと感じさせないぐらいの走りが楽しめる。「M135 XDrive」ほど、過敏なモデルでなくても、BMW「1シリーズ」は、全体にスポーティ志向のコンパクトカーなのだ。
■関連情報
https://www.bmw.co.jp/ja/all-models/1-series/bmw-1-series/bmw-1-series.html
文/石川真禧照 撮影/萩原文博







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