EVシフトが注目を集め始めた頃、まことしやかに囁かれたのが、
「モーターやバッテリーを購入するEVは誰にでも作れる」
莫大な費用とノウハウが必要なエンジン開発をしなくて済むため、自動車メーカーでなくともEVは作れるというのだ。
実際に他業種の企業がEV開発に着手し、EV専門の新たな自動車メーカーが次々と誕生。既存の自動車メーカーを脅かすかに見えた。しかし、エンジンがないとはいえ、自動車の開発はそれほど簡単ではない。販売までこぎつけることができず、プロジェクトが放置状態の会社も出ている。
シャープがEVコンセプトモデル『LDK+』の第2弾を発表
そんな中、新たな製造手法で販売まであと一歩と迫ったのが、家電メーカーのシャープだ。シャープは「JAPAN MOBILITY SHOW 2025」において、EVコンセプトモデル『LDK+』の第2弾を発表した。
『LDK+』は車両をイチから開発するのではなく、鴻海科技集團のEV『Model A』をベースにして、車両開発のコストと期間を省いた。
シャープが培ってきたAIや家電、エネルギー機器などの技術を集結させて、車内の空間作りに専念。手掛けるのを得意とする分野に絞ることで、開発のスピードアップを実現した。
シャープの種谷元隆CTOはModel Aを採用した経緯を、
「バッテリーEVを作りたいという思いと、シャープの技術を何かに応用しようという思いがあり、基本的にはバッテリーEVを作りたいという思いの方が強かったですね。
国内においてはEVが普及していないということもあって、シャープにチャンスがあるのではないか。そんな中でバッテリーEVをやろうということになり、いろんなアイデアを出してLDK+にたどり着いたんです。
EVを1から作ろうという考えもありましたが、鴻海科技集團がすでにEVを持っていたので、それを使わない手はありません。事業サイクルは短くなり、投資も抑えられるので、シャープとしてはメリットがあると思っています」
新たな製造手法は、これまでにないEVを生み出した。
「一般的な自家用車は、動いている時間は全体のほんの5%。95%は駐車している状態です」(種谷CTO)
そこで移動手段として使えるだけではなく、駐車時に快適な室内として利用できる車を目指した。
具体的には、運転席を180度回転させてまるでリビングのような空間に。プロジェクターとロール式スクリーンも設置。さらにシャープお得意のプラズマクラスター発生装置も備え、快適な環境を作り出した。
エネルギー面もシャープの技術が支えている。家のエネルギーシステムとつながり、車内で家の電気が使え、逆に車体の太陽光パネルで発電した電気や、蓄電池の電気を住宅で利用することもできる。
これによってファミリーがさまざまな使い方ができる。時には父親がリモートワークをする部屋になり、子供が静かな環境で勉強に専念し、夫婦で映画やドラマを楽しむシアタールームにもなる。車を郊外に駐車すれば、思う存分に楽器の練習をしたり、大声を出してスポーツ観戦することもできる。住宅の部屋とも、自動車の車内とも違う独自の空間を生み出した。
今後、さらに完成度を高め、2027年度に市場参入を目指す。価格は、
「ファミリー層が購入できる価格。他社のこのクラスのエンジン車とほぼ同等の価格を目指しています」(種谷CTO)
『LDK+』が成功を収めれば、EVの作り方から使い方まで大きく変わることになりそうだ。
取材・文/金子長武
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