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声の権利を守りながら本人の声音の再現や多言語に変換した音声データを提供するNTT西日本の音声AI事業「VOICENCE」

2025.11.05

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

NTT西日本は、声優や俳優、アーティスト、芸人などの声の権利を守ると同時に、AIで加工して提供する音声AI事業「VOICENCE(ヴォイセンス)」を開始することを発表した。事業は新たに設置された社内独立組織「VOICENCEカンパニー」が担う。

NTT西日本が独自開発した「トラスト技術」を活用して声の権利を守り収益化へつなげる

日本の声優、俳優、アーティストたちの独自の表現力が海外でも高く評価されている一方で、AIの急速な普及によって本人の許可なく声を生成、模倣することが容易になり、声の無断利用やフェイク音声が問題となっている。

「声の権利や価値を守る仕組みは、まだ十分に整っていないのが現状です。VOICENCEが目指すのは、声を安全に扱い、正しく活用し、その価値を高めていく新しい声のインフラを整え、声の経済圏を作っていくことにあります。

無断で使われる偽物のAIの対極にある、本人の承諾と契約に基づき信頼できる技術で声の権利を守り、社会に生かす本物のAIを作り、本物AIが共存する世界を目指します」(VOICENCEカンパニー カンパニー長/CEO 花城高志氏)

VOICENCEを支えるのがNTTの研究開発技術。「トラスト技術」はブロックチェーンを活用した真正性証明により、実演家本人の声から生成されたAI音声であることを証明する。さらに契約に基づいた利用範囲を記録し用途証明データとして付与、実演化の許諾を得た本物のAI音声として無断生成やフェイク音声と区別できる環境を整備する。

トラスト技術とは「この音声が本物であり、正しく生成され、正しく使っているか」を客観的に検証できる仕組み。

コンテンツとして生まれるまで、本人が許諾しているか「出所の証明」、どのように生成されたか「トレーサビリティの証明」、どう使えるのか「用途の証明」、この3つをパブリックブロックチェーンの技術と階層型分析の技術を組み合わせることによって、デジタル証明書を付与することができる。

声の権利に関して法的な側面からの検討とルールメイキングを進めている、NTT株式会社 社会情報研究所 研究員の荒岡草馬氏はこう話す。

「声自体には権利性が認められていない、法律もない、裁判所の判例もないというのが現状です。声を使われてしまう側が自分の声を勝手に使うなと権利主張ができないですし、NTTのような事業者がサービスを展開する上でも基準が設けられていない。それが契約違反や権利侵害、あるいは炎上といったリスクにつながっている問題がありました。

NTT社会情報研究所では、諸外国の動向や、有識者との意見交換、一般向けの社会調査なども通じて、声の権利を明らかにしていこうと取り組みを進めています。

今は社内向けの解説資料(下記画像)をグループにも含めて展開しているところですが、今後これを業界ガイドラインのようなものとして育て、みなさんがそれを参照できるようなものを作っていければと思っています」(荒岡氏)

ワタナベエンターテインメント顧問の中井秀範氏は、芸能プロダクションの業界団体である日本音楽事業者協会の専務理事の経験があり、音声肖像等のパブリシティ権を守る法整備に動いていたこともあって、VOICENCEの取り組みに大きな期待を寄せている。

「生成AIの進歩の速さに法律が追い付かず悩んでいましたが、NTTが技術を活用し、しっかりとしたガイドラインを作りたいというお話を伺い、画期的な取り組みとして非常に期待をしています」(中井氏)

話者の声の印象や口調を高精度で再現、多言語変換も可能な音声処理技術

NTT人間情報研究所の音声処理技術を活用することで、テキスト入力により実演家の声色のままAI音声合成ができる「NTT音声印象制御技術」や、「多言語変換」(現在は日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語に対応可能)ができるようになった。これらの技術によって声のトーンや感情、言語を自在にデザインし、声の可能性を世界へ広げていく。

「声を安全に保管、管理、活用できるVOICENCEプラットフォームを立ち上げ、まずは声優や俳優などのIPホルダーのみなさまの安全なコミュニケーションの場として運用を開始します。今後は、クライアントやパートナー企業が直接アクセスし、AI音声の企画から契約、制作、活用までを安全に行える開かれたプラットフォームへと進化させていきます。

声優や俳優など声の持ち主と正式に契約した上で、音声の収録からAI音声モデルの構築、そしてその人の声から生成されたことを証明する真正性データの付与までを行い、音声IPとして管理します。

もう一つの機能として、音声コンテンツの企画制作があり、音声IPをクライアント企業の様々な施策やサービスに組み込んで企画から制作、運用までをトータルでプロデュースしていきます。単なる製作会社ではなく、IPホルダーと企業そしてファン、社会をつなぐハブである役割を担います。

3年目に単年の売上10億円、5年目に100億円、10年でNTTグループ全体として1000億円規模のビジネスへと育てていきます。まず3年目までに積極的なグローバル展開を実現、5年目までには自社のオリジナルコンテンツ開発にも挑んでいきます。

AI音声コンテンツを生み出すクリエイター人材の育成、流通にも取り組み、NTTグループが持つ技術や人材のケイパビリティを生かしながら、音声だけではなく映像も含めたコンテンツプロデュースへと広げていきます」(花城氏)

【AJの読み】声の権利を守りながら音声データとして広く利用できる

実演家の声音を使いAIで生成して、あたかも本人の発言のように装うフェイク音声が炎上につながり、実演家本人が否定するといった事例が続いている。VOICENCEとパートナー契約を結んだ声優の春日望さんはこう話す。

「声が無断で使われる問題に、タレントさんや声優さんは本当に頭を抱えています。日本国内であれば今回のNTTさんの取り組みのように、実演家の権利を守ることに対応、注力している企業もありますが、海外になってしまうと、自分の声がどう使われているのか追跡が難しく、言語が違うためどのように使われているのか把握しにくいところが大きな問題でした。

こうした問題をどう各国がどのように法整備していくのかとても気になるところですが、VOICENCEが真正性証明を出して、対応まで取り組んでくれることはとても心強く感じます」(春日さん)

同じくVOICENCEパートナーで俳優の別所哲也さんは、株式会社ビジュアルボイス代表取締役社長でもあり、デジタル時代のクリエイター支援やパーソナルデータ活用の社会実装にも取り組んでいる。

「僕は実演家でもあるのでまさに声は財産。この財産がこうして法的に侵されて違う形で使われてしまう状況に憂いています。VOICENCE の取り組みでWeb3の時代に変革が生まれるのであれば大変朗報だと思うし、そのことによってビジネスチャンスがもっといろいろな形で広がるのではないかと期待しています」(別所さん)

VOICENCEは声の権利をライセンス化することで、実演家の権利を守るだけでなく、本人の声音や口調を合法的に再現したせりふや言葉、多言語に変換した音声データを企業等が利用することができ、実演家にライセンス料を支払われる。声を通じて、社会と産業の循環を生み出すNTT西日本の新たな取り組みに注目が集まる。

取材・文/阿部純子

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