ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産(仮想通貨)は、価値の変動が激しいため、決済手段としての安定性に欠けるのが難点です。
この課題を克服するものとして、近年では「ステーブルコイン」が注目されています。日本においても、ステーブルコインに関する法規制の整備が進みつつある状況です。
1. ステーブルコインとは
「ステーブルコイン(stable coin)」とは、価格が安定するように設計された暗号資産(仮想通貨)をいいます。
一般的に、暗号資産は現金などの裏付け資産がないため、相場における価格が乱高下しやすいという特徴があります。決済手段には価格の安定性が求められるため、暗号資産は決済手段としてあまり活用されていません。
ステーブルコインは、このような暗号資産の課題を克服するために設計されました。額面と同等以上の裏付け資産を確保するか、またはアルゴリズムによって現物資産の価値と紐づけることにより、価格の安定性を実現します。
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2. ステーブルコインの主な種類
ステーブルコインは、価格を安定させる仕組みによって、主に以下の4種類に分類されます。
(1)法定通貨担保型
米ドル・ユーロ・日本円などの法定通貨を裏付け資産とします。
(2)暗号資産担保型
ビットコインやイーサリアムなど、特定の暗号資産を裏付け資産とします。
(3)コモディティ型
金や原油など、特定の商品を裏付け資産とします。
(4)無担保型
裏付け資産を確保せず、アルゴリズムによって供給量を調整して価格を安定させます。
3. ステーブルコインに関する日本の法規制の状況
ステーブルコインは暗号資産であるところ、従来の日本の法制度においては、価格変動の大きい暗号資産と同様の枠組みで規制されていました。
しかし、法定通貨担保型のステーブルコインについては、決済手段としての活用可能性が高いため、その他の暗号資産とは異なる枠組みで規制することが適切と考えられます。
2023年6月1日に施行された改正資金決済法では、信託を用いた法定通貨担保型のステーブルコイン(=特定信託受益権)などを新たに「電子決済手段」と位置づけ、通常の暗号資産とは異なる枠組みによる規制が設けられました。
一例として、特定信託受益権の発行者に裏付け資産の全額を要求払預貯金で保有することを義務付けるなど、価格の安定性が制度的に担保されています。
また2025年6月13日に公布され、公布日から1年以内の施行が予定されている改正資金決済法では、特定信託受益権の裏付け資産の保有方法が柔軟化されました。具体的には、発行額の50%を上限として、満期・残存期間が3カ月以内の日米国債や中途解約が認められる定期預金での保有が認められます。
この改正は、日本初のステーブルコインについて、国際競争力を強化することを意図したものです。
4. ステーブルコインの活用に関する今後の展望
ステーブルコインの特徴は、暗号資産の利点と価格の安定性を併せ備えていることです。
暗号資産を決済手段として用いることの利点としては、その他のキャッシュレス決済手段よりも送金手数料が安いことや、送金の履歴を容易に辿れることなどが挙げられます。
一般的な暗号資産は価格の不安定さがネックですが、法定通貨担保型のステーブルコインなら克服可能です。
ユーザーにとっての大きなメリットに着目した事業者が、ステーブルコインを活用した決済サービスを広めていく可能性は十分にあると考えられます。
そうなれば、クレジットカードやQRコード決済などが次第にステーブルコインへ置き換わり、決済に関する市場の様相は大きく変化するでしょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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