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「AIと地域創生がカギに」KDDI松田新社長が語った通信の次なる5年と循環の戦略

2025.11.03

KDDIはグループ最大級のビジネスイベント「KDDI SUMMIT 2025」を開催した。今年4月に松田浩路氏が新社長に就任し、7月には本社をTAKANAWA GATEWAY CITYに移転するなど、節目のタイミングを迎える中、基調講演では、AIの活用に加え、地域課題解決への具体的な取り組みが中心に語られた。

通信業界が5G通信サービスの提供開始から5周年を迎え、次なる成長へのステップが求められる中、KDDIが未来像として提示したのは、過去の投資から学び、AIを次の成長の「カギ」とする戦略だ。

AIインフラへの巨額投資:堺データセンターとソブリンGPUクラウド

AI関連の話題の目玉は、かねてより計画されていた「大阪・堺AIデータセンター」である。旧シャープ堺工場跡地(大阪府堺市)に建設されているこのデータセンターは、2026年1月下旬から稼働を開始する。このセンターの技術的優位性は、その迅速な構築と最先端の設備にある。

データセンターには、NVIDIA GB200 NVL72などの最新世代のAIサーバーを備えた設備が設置される。大規模工場跡地という立地を活かし、大規模な電力設備と冷却設備を再利用できたため、通常3年程度かかるデータセンター構築を、4月の取得から半年程度で整備完了できたという。

高度な計算能力と冷却技術に加え、カメラ映像や秘匿映像など機密性の高いデータも国内に保管できるソブリン性(主権性)を確保している。

この堺データセンターの第1弾サービスとして発表されたのが「KDDI GPU Cloud」である。2026年4月1日に申込受付を開始し、正式サービスに先立ち、2026年1月下旬にはトライアルでの提供が開始される。ユーザーは、サーバー1台単位からクラスター単位までをオンデマンドで、初期投資不要で利用できるのが大きな魅力だ。

これにより、キャリアグレードのネットワーク環境下で、モビリティー事業者による大容量かつ機密性の高い走行データを用いた自動運転モデルの開発や、金融、法律、医療といった専門領域に特化したLLM(大規模言語モデル)やAIエージェントの開発など、幅広い活用が期待されている。

Google Cloudとの提携:信頼できる情報の「コンシェルジュ」へ

AIサービス展開においては、Google Cloudとの戦略的提携が発表された。これは2026年春ごろのサービス提供を目指すもので、グーグルの生成AIモデル「Gemini」やAIアシスタント「NotebookLM」などのAIを活用する。

この提携の核心は、信頼性の高い情報源の確保にある。近年、AIによるWeb上の情報の無断利用が社会問題となり、メディアやコンテンツ産業の持続可能性が危ぶまれている中、KDDIは、コンテンツプロバイダーから許可を得た情報のみをAIが読み込み、ユーザーに合わせて最適に要約・提供する仕組みを計画している。

松田社長は、収益化戦略について、コンテンツホルダーとのレベニューシェア(収益分配)を検討しており、「KDDIだけではなく、コンテンツプロバイダー、ユーザーにもメリットがある、Win-Win-Winを目指したい」と語った。提供されるサービスやコンテンツが良質であれば、ユーザーはAIに関連して料金を支払う意欲が出てくるという考えを示している。

KDDI株式会社 代表取締役社長 松田浩路氏

KDDIが担う役割は、情報を整理する「コンシェルジュ」あるいは「アドバイザー」のようなユーザーインターフェイスの開発であり、メディアを作るよりも、裏側の仕組みを開発し、その塊を一括提供する側面がある。すでに複数のコンテンツプロバイダーが参画を決めている。この信頼性の高いAIインターフェイスは、地方自治体の課題解決や、旅行コンテンツを持つ事業者との連携など、さまざまな課題解決に役立つ可能性を秘めている。

地域課題解決と「循環」の力:良品計画からの学び

松田社長は、テクノロジー単体では意味がなく、それをどう社会実装するかが重要であるという考えを強調し、地域課題に対する取り組みを重点的に語った。災害や少子高齢化といった社会課題は地方が先行しているが、「いずれは都市にも来る問題」であり、KDDIはその街に安心して住み続けたいという願いに寄り添う。

社会課題の解決に向け、KDDIが重視するのは「テクノロジーの力」「リアルの力」「循環の力」の3つの力である。

通信品質(Opensignal社の国内調査でauが3連覇を達成)を軸としつつ、auショップに加え、ローソンの店舗がユーザーとのリアルな接点として重要視されている。auショップは毎日行く場所ではなく、auユーザーしか来ないが、ローソンは他社ユーザーも含めてみんなが立ち寄る場所であるため、地域貢献や取り組みを知ってもらう場所としてローソンでの展開を重視している。

また、課題解決への取り組みが局所的、一過性なものに終わらないよう、社会的に意義があることをしっかりと事業につなげ、持続的なものにしていくには「循環」の力が必要だと松田氏は語る。ドローン事業や、衛星通信(Starlinkとの連携を新しい料金プランとセットにできたこと)は、すでに循環に成功しつつある事例とされる。

基調講演の後半では、地域活性化を「土着化」と表現する良品計画の堂前宣夫会長との対談が行われた。松田氏は、良品計画が地域の店舗に裁量権を与え、その活動がコア事業に跳ね返ってくる「循環」のサイクルに感銘を受け、「KDDIの地域への取り組みはまだ浅いと実感した」と述べている。

そして、この「循環」をローソンで実現するための具体的なAI活用も進行中である。展示ブースでは、ロボットがローソン店内の欠品を見つけて品出しまで行う実証実験や、店員が着用し、AIが助けてくれるAIグラスの実験が紹介された。これらの取り組みは、フィリピンのローソンでもスタートするなど、海外への展開も視野に入っている。

KDDIは、Opensignal社の調査に裏付けされる通信品質という「ど真ん中」の事業を進めながら、AIへの大規模なインフラ投資と、Google Cloudやローソンとの戦略的な連携を通じて、「AI推し」の潮流の中で具体的な事業を社会実装し、au回線を契約していないユーザーにも届く可能性の高い新たな接点を積極的に増やしている。

取材・文/佐藤文彦

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