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ニューヨーク歴22年のデザイナーが語る、「NY流コミュニケーション術」が日本の職場を変える理由

2025.11.04

ニューヨークのファッションデザイナー兼テクニカルデザイナーとして活躍しているあっちさん。運営しているYouTube「NEW YORK STYLE/ニューヨークのリアルな声」ではニューヨークの現状レポート動画が大人気で、「【恐怖】解雇地獄がスゴい!もう払えない!?スタグフレーション間近|今アメリカ人が心配していること」は再生回数90万回を突破した。

世界一厳しい競争社会を生きるあっちさんが、ニューヨークで身に着けた、ニューヨーク流の思考と習慣とは何か。あっちさんならではの自分らしさを貫くワークライフバランスや、キャリア設計、ニューヨーク流コミュニケーション術について教えてもらおう。

NY流のコミュニケーション術の前提にある「自分のスタンダード」

あっちさんは日本の大学で建築を学んだあと、「ファッションは建築物よりもっと身近でダイレクトに心に影響を与える『空間デザイン』なのだ」と感じ、サバンナ芸術工科大学に留学する。

そして、世界一厳しく「生き馬の目を抜く」ようなNYのファッション業界で働く中で、「運を引き寄せるNY流のコミュニケーション術がある」ことを発見したと言う。このほど発刊した、「ニューヨークとファッションの世界で学んだ『ありのままを好きになる』自信の磨き方」(KADOKAWA発刊、定価1,870円 )から、このNY流コミュニケーション術の一部を紹介しよう。

あっちさんが最初に働いていたキャサリン・マランドリーノの現場はとびきり忙しく、毎日22時過ぎまで残業するのが当たり前の状態だった。当時はみんなそれをことさら疑問に思わず、夜遅くまで働くのが当然という1種の諦めが蔓延していた。

しかしあっちさんはが退職してしばらく経った頃、新しく入った若いスタッフが「なぜ18時以降も働かなきゃいけないの?」と疑問を口にし、残業を拒否し定時で帰宅し始めたのである。

この出来事を通じて、あっちさんは「自分で基準を決めなければ、誰かに決められてしまう」「他人の価値観に振り回されず、自分軸で行動することが大切である」ということに気づいたという。

自分の基準や価値観が曖昧だと「ノー」と言えない

自分の基準や価値観が曖昧なままでは、なかなかノーと言い出せずいつのまにか他人の都合に巻き込まれてしまう。多くの日本人が、ブラックな職場環境で漫然と夜遅くまで働いてしまうのは、その人が「残業して当たり前だ」という価値観を受け入れたからで、あっちさんもそうだった。

しかし、残業拒否した若者のように、「ここから先はやらない」「これ以上は無理」と自分なりの線引きをしておくと、プライベートの時間を充実させることができる。短期的には生意気な奴だとか、周囲から風当たりの強さを感じるかもしれないが、「あの人に残業を頼んでもどうせ引き受けてくれない」と認識され、残業を振られなくなる。別の職場に転職することもあるだろう。長期的には「残業しないという自分のスタンダード(価値観)」が現実となっていくのである。

あっちさんは新刊書で「自分のスタンダードを持つことは、自分の人生の舵を自分で取ることにつながります。たとえそれが少数派の選択であっても、自分軸がある人は結果的に強いのです」と書いている。

もちろん自分流を貫きとおし、自分のスタンダードだけにこだわり過ぎると、新しい時代の変化についていけなくなったり、特に中年以降は老害につながってしまう。自分のスタンダードを持ちつつ、柔軟性や他人の意見を聞き入れるバランス感覚は常にキープしておきたい。

「今日、自分がどう行動するか。それが明日を作っていく。自分のスタンダードを持って行動することで、その未来も自分らしい形になっていく」とあっちさんはアドバイスしてくれた。

NY流コミュニケーション術では米国人の褒め方を身に着ける

米国人はとにかく褒めまくる。日常生活のあらゆる場面でグッド!ナイス!グレート!アメイジング!……そんな言葉があちこちに蔓延してる。私もソーホーのスーパーでレジ待ちをしていた時に、後ろに並んだ老婦人から「あなたの靴下の色が素敵」と声をかけられたことがある。靴下を褒められたのは生まれて初めてで感激した。

社会だけでなく、学校や家庭でも、子供が初めてのことに挑戦した場合、たとえ良い結果が伴わなくても「great job!」と声をかけると言う。あっちさんによると、結果そのものより、チャレンジしたことに対して、よくやったと認めているのだとか。

さらに日本人と米国人の褒めるポイントが大きく違っているそうで、日本では「色が白いね」とか「目が大きい」と外見を褒めることが少なくない。しかし、米国ではそういった褒め方はあまり見かけず、「たとえ褒め言葉であっても、他人の容姿についていうのは、むしろ失礼だという認識が強いのです」(あっちさん)。

その代わり、NYでは「あなたのシャツとパンツの組み合わせがとてもクール」や「その考え方に共感できる」など、その人のチョイス(選択)や判断について褒めるのが主流となっている。「そこには、あなたのセンスや意思を尊重している、というメッセージが込められているので、褒められた側にも、(心に)深く響かせることができるのです」(あっちさん)。

持って生まれた外見や身体的な特徴ではなく、その人のチョイスや、努力したプロセスに目を向けて「いいね」と言えるかどうか。そんな褒め方ができる人が増えたら、職場も明るく風通しがよくなるだろう。そして、そんな褒め方が日本でも広がったら、もっと多くの人が、ありのままの自分を好きになれるかもしれないと、あっちさんは考えている。

自分で自分の制限をかけないこと

さらにあっちさんがNYの一流メゾンのファッションデザイナーや業界で著名なカリスマ経営者、新進気鋭のアーティストに触れて実感したのが「思い込みの力」だと言う。

業界トップの人々は最初からその地位を得ていたのではない。覚悟と行動の連続で今のポジションにたどり着いていた。そして、最初は自分と同じような普通の人だが、自分ならできると信じ続けて動き続けた結果、最終的に周囲からすごい人と高く評価されるようになったのだと、あっちさんは分析している。

彼らが共通してもっている「思い込む力」は絶大で、自分にもできると思い込む力が強いのが、ニューヨークの成功者の特徴だった。いったんそう決めたら、あとはその自分にふさわしい行動をとるだけで、どこまでもシンプルだった。

裏を返せばできるかどうかを悩んでいる間に、どんどん行動して前に進み続けた結果なのである。

日本人の多くはどうしても「私なんか」と自分にリミッターをかけてしまう傾向が強い。自分で自分の限界を決めてしまっているのである。しかし、スキルや実力があるかないかは問題ではなく、自分で自分の可能性を制限せず、最初から諦めず自分でもやってみようと前向きに考えることが、全てのスタートラインだと、あっちさんは教えてくれた。

自分の感情を言語化して伝える重要性

新刊書「ニューヨークとファッションの世界で学んだ『ありのままを好きになる』自信の磨き方」では、自由に生きるためのヒントを教えてくれたあっちさん。私が日本で一番必要だなと感じたのが「自分の感情を言語化して伝える重要性」だった。感情を正しく言語化できれば、人間関係に悩むことも無く、ストレスは大幅に軽減されるはずだ。

ある日、あっちさんはファッションショーを目前に控え、いつものように夜遅くまでオフィスに残り、みんなで忙しく仕事をしていた。その時、一人の米国人の同僚がろくに手を動かさず、ブラブラとフロアを動き回りながら、あっちさんの英語の間違いをネタにして笑っていたのである。

あっちさんは悔しくて、情けなくて、恥ずかしくて、本当に腹が立ったが、その場では何も聞こえないふりをして作業を続けた。そして、自宅に帰り、ボーイフレンドに電話でこの出来事を話した。

するとボーイフレンドは「君は何に傷ついたのか?どんなことが悲しかったのか?」とあっちさんの感情を掘り下げて聞いてくれたのである。あっちさんは彼と話すうちに、「みんなが忙しく働いているのに、同僚が仕事をサボっていたこと。他人の揚げ足を取っていたこと。自分の英語を馬鹿にされたことに、私は深く傷ついた」と、自分の感情が徐々にクリアになっていった。

翌日、あっちさんは同僚にその点をありのままに伝えた。すると同僚は、言い訳をすることもなく、悪かったと謝ってくれたのである。この経験から、あっちさんは感情を言語化して伝えることの効果を実感したという。「言葉にして伝えることで、自分の尊厳を守れたようにも感じました」と書いている。

他人が何を思っているのか、どう感じているのか、推測するのは本当に難しい。特に日本の職場では、あまり波風立てずに穏便に済ましてしまおうという空気が圧倒的なので、相手に自分の感情を伝えるのは難しい。しかし、言葉で伝えなければ、誰も理解してくれないのである。

冷静で理路整然と、自分の気持ちを相手に伝えることができれば、恋人同士の関係も深まるはず。切れてヒステリックに叫ぶ前に、自分の感情を表現するスキルを身に着けたい。職場だけでなく、友人関係や、恋人との絆も深まるはず。

新刊書では他にもNYの恋愛事情や、キャリア設計などにも触れている。自由に自分らしく生きるあっちさんの生き方は、多くの人に希望を与えてくれる。YouTubeチャンネルと合わせて読んでほしい一冊となっている。

あっちさん
あっち:NYでファッションデザイナー、テクニカルデザイナーとしてアメリカの企業に勤務22年、ブルックリン在住。Catherine Malandrino, Club Monaco, Donna Karan, DVF, 自社ブランドIDeeeN New Yorkを経て現在 SUPREME勤務。YouTubeではニューヨークの常、ニュース、経済関連など現地民ならではの情報を発信。アメリカ経済の問題がわかりやすく解説されていると好評でチャンネル登録者数10.5万人(2025年10月現在)。

文/柿川鮎子

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Author
明治大学政経学部卒業後、経済系新聞社で自動車、ISOなどの担当記者に。退社後5年間、動物病院に勤務した経験から、飼い主さんの気持ちに寄り添ったペット記事を執筆中。 得意なテーマは 1)生産性向上などのマネジメント関連と、 2)犬猫やエキゾチックを含 めた飼育動物全般、の2つ。 作家として小説「犬にまたたび猫に骨」(講談社刊)、「極楽お不妊物語」(河出書房新社)を発刊。ノンフィクションでは小学館刊「全国から飼い 主が駆けつける!犬の名医さん100人データブック」、文春新書「動物病院119番」、ほか多数。趣味は野鳥観察、現在、2羽のオカメインコを溺愛中。

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