日銀が2026年初めから、保有するETFを売却する。株式市場にはどのぐらい影響があるのだろうか?
FP兼金融ライターが解説する。
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日銀が保有するETFとは?
日銀は、2010年11月の金融政策決定会合で、ETF(指数連動型上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)の買い入れを決定した。
その当時、日経平均は、2008年のリーマンショックで最安値6,994.9円、2009年に二番底で7,054.98円を付けた後、1万台まで値を戻したものの、それ以上はなかなか上がらなかった。
物価も下落するデフレ状態が続いており、そのデフレを脱却するために、ETFやREITの買い入れが金融政策として導入された。そこから、2024年3月に終了するまで、ETFの買い入れが行われてきた。
導入当時、日経平均1万円台のころからETFは簿価約37兆円、REITは約6,574億円の規模まで購入され、今や日経平均4万円台後半と、当時の4倍強を推移するなかで、2025年9月末時点で、時価がそれぞれ約70兆円、約7,000億程度となり、含み益は約34兆円まで膨れ上がっている。
売却決定!でも…終わるのは「112年後」?
日銀は、2025年9月の金融政策決定会合で、日銀が保有するETF、REITを市場で売却することを決定した。その規模は、以下のとおりである。
・ETFは、年間簿価3,300億円程度のペースで、市場への売却を行う。
・J-REITは、年間簿価50億円程度のペースで、市場へ売却を行う。
・ETF、J-REITは、時期の分散に配慮して、各銘柄の保有割合に比例して売却する。
これは、金融機関から買い入れた株式の市場への売却(簿価1,500億円、時価6,200億円)と併せて行われる。
上記は簿価ベースであり、時価(2025年3月時点)にすると、ETFは6,200億円、REITは55億円程度となる予定だ。
現在日銀が保有するETF、REITは時価で合計約70兆あることから、このペースだとすべて売却するのは112年かかる。
また、日銀の売却の基本方針として、売却に際して、日銀の損失発生を極力回避することと、ETF等の市場を混乱させないことが定められているため、今後112年の間、株価が大きく下がることも考えられ、その間は売却が停止されることも考慮すると、112年以上売却には時間がかかりそうだ。
実際の売却は、2026年初めごろを予定している。
市場へのインパクトは…ほぼゼロ?
日銀が決めたETFの売却ペースは、東証プライム市場の売却代金全体の0.05%の規模にあたる。
日銀のETFの売却方針を受けて、その日の日経平均は一時大きく下げたものの、売却規模が小さいことから、下げ幅を戻し、結局前日比1%の下げで終わった。
今のような日経平均が5万円近くを試すような展開では、上記規模の日銀のETF売却は、ほとんど影響がないだろう。一方、株価が暴落したり、売買が低迷していたりする状況では、日銀の売却が影響を受ける可能性があるものの、そのような場合は、基本方針で売却を停止することができるとしているため、株式市場にマイナスの影響を与える可能性は低い。
とはいえ…リスク資産を抱え続ける重み
しかし、暴落時等に売却を停止できるのであれば、ただでさえ112年以上かかる売却ペースが長期化し、日銀のETF等のリスク資産を減らすことができない。ETFは、債券等に比べると変動幅が大きく、日銀の資産にこれほどの規模のリスク資産があるのはどうかという問題もある。
具体的には、日銀の収益は、国庫に納められ、国民の利益となるが、逆に収益の減少や債務超過となれば、政府が支援することとなり、国民の負担となってしまう。そのため、日銀の資産は安定的な国債等が主となっている。日銀が買い入れしたETF等の購入価格はかなり安い水準であり、損失が生じる可能性としては低い。ただ、株式市場が大きく暴落等してETFが下がり、日銀の資産が傷つき、国民の負担となる可能性はゼロではない。
そのため、できればETF等のリスク資産は早く処分したほうがよさそうだが、この売却ペースだと、株式場へのマイナスの影響を抑えられるものの、私たちが生きている間にリスク資産を減らすのは無理そうだ。
(参考)
日銀2025年9月末財務諸表
第140回事業年度上半期財務諸表等
日銀9月金融政策決定会合決定事項
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250919a.pdf
文/大堀貴子







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