アメリカでは、2025年9月に政策金利を年率4〜4.25%へ引き下げ、年内にさらに2回の利下げが見込まれています。利下げは、住宅ローンの固定金利や株式市場に少なからず影響し、円高を通じて輸出企業の収益にも波及する可能性があります。今後のアメリカの利下げ動向にも、注目する必要があるでしょう。
目次
アメリカの利下げが、自分たちの住宅ローン金利や投資に今後どのような影響を及ぼすのか、気になっている方もいるのではないでしょうか。本記事では、アメリカの利下げの背景や今後の見通し、日本経済に与える影響について解説します。
アメリカの利下げを理解するために!基本用語をおさらい

アメリカの利下げを理解するために、まずは関連する基本的な用語を押さえておきましょう。ここでは、「FRB」と「利下げ」の意味を解説します。
■FRBとは
FRB(エフ・アール・ビー)は、アメリカの中央銀行制度の最高意思決定機関であり、金融政策を決定する日本の日本銀行にあたる存在です。正式名称は「Federal Reserve Board(連邦準備制度理事会)」で、FRBは頭文字をとった略称です。
議長を含む7名の理事で構成され、アメリカ全体の金利や金融システムの安定を保つ役割を担っています。FRBの理事たちは、FOMC(連邦公開市場委員会)を通じて政策金利の引き上げや引き下げを決定します。
FRBは、世界に及ぼす影響力が非常に大きい機関です。その判断は、世界経済や日本の金融市場にも波及するため、動向に対して常に注目が集まっています。
■利下げとは
アメリカにおける利下げとは、FRBが政策金利を引き下げることを指します。政策金利とは、FRBや日本銀行のような中央銀行が景気や物価の安定のために設定する、金融政策の基準となる短期金利です。
政策金利が下がると企業や個人が資金を借りやすくなるため、景気が停滞しているときに消費や投資を促す狙いがあります。
たとえば、金利が下がると、住宅ローンや企業の設備投資の負担が軽くなり、経済全体が活発化しやすくなります。つまり、利下げには消費や投資を促進する効果があり、「お金の流れを良くして景気を刺激する」ための金融政策といえるでしょう。
ただし、金利を下げすぎると物価上昇などの副作用も起きやすくなります。そのため、中央銀行は経済状況を見極めながら慎重に判断を行っています。
アメリカの利下げの背景と今後の見通し

アメリカでは、FOMCが2025年9月17日の会合で、今年5回連続で据え置いてきた政策金利を0.25ポイント引き下げ、年率4~4.25%とする決定を行いました。これは、景気減速への懸念を踏まえた対応です。
今後もインフレ動向や雇用情勢を見極めながら、さらなる利下げが実施されるかが注目されています。
■アメリカの利下げの背景
アメリカの利下げは、景気の減速リスクに対応するために実施されました。背景には、雇用統計で非農業部門雇用者数の増加数の伸びが鈍化し、労働市場の勢いが弱まったことが挙げられるでしょう。
パウエルFRB議長は、景気の下振れリスクを抑えるための、予防的な措置であると説明しています。
■今後の利下げの見通し
今後のアメリカの利下げについては、2025年中にさらに2回の追加利下げが行われるとの見方が示されています。FOMCが公表した政策金利見通し(中央値)では、年内に0.25ポイントずつ引き下げる方針が示唆されました。
つまり、今後も経済指標を見極めながら、段階的な利下げが続く可能性があるといえます。
利下げによるアメリカ市場の反応

アメリカのFRBが利下げを示唆し、ドルが下落し為替市場に変化が広がった一方で、株式市場は金融緩和を好感して上昇しました。それぞれの内容について解説します。
■ドルは下落
ニューヨーク外国為替市場では、アメリカの民間雇用者数が予想外に大幅減少したことを受け、ドルが下落しました。景気減速への懸念が強まり、投資家の間では「FRBが年内に追加で2回の利下げを行う」との見方が広がったためです。
金利が下がればドルを保有する魅力が薄れることから、為替市場ではドル売りが優勢となりました。この動きを受けて、一時ドル/円は146円台まで下落しました。
■アメリカ株は上昇
アメリカの株式市場は、FRBによる利下げ期待を背景に上昇傾向が続いています。追加利下げが見込まれる中で資金が株式に流入し、リスク資産への買いが強まりました。
景気を支える低金利環境は、企業収益を下支えし、投資家心理の改善に寄与します。とくに、ハイテク株などの株価は堅調であり、アメリカ株式指数は高値更新の勢いが見られています。
アメリカの利下げによる今後の日米金利差の予測と影響

アメリカの利下げは為替や株価だけでなく、私たちの住宅ローン金利や資産運用にも影響を及ぼすため、その動きの鍵となる「日米金利差」を理解することが重要です。
ここでは、日米金利差の意味や、日米金利差の縮小が日本経済に与える影響を確認しましょう。
■日米金利差とは
日米金利差とは、日本とアメリカの金利水準の差のことです。具体的には、日本銀行やFRBが決定する政策金利や、10年国債利回りといった長期金利の差によって測られる指標です。
アメリカは、経済成長率やインフレ率が日本より高いため、金利も相対的に高く推移する傾向があります。そのためアメリカの金利が上昇したり、日本の金利が低下したりすると金利差は拡大しますが、アメリカの利下げや日本の金利上昇で縮小します。為替相場や資金の流れに大きな影響を与えるのが、この金利差の変動です。
■日米金利差の縮小が経済に与える影響
アメリカは利下げ傾向にあり、日本も利上げの可能性が見込まれているため、日米金利差は今後縮小していくと予想されています。金利差の縮小によって想定される主な影響は、以下の3点です。
- 円高ドル安が進みやすい
- 円高で輸出企業の利益が圧迫されやすい
- 円高で輸入品や海外旅行は割安に
それぞれの内容を解説します。
円高ドル安が進みやすい
日米の金利差が縮まると、為替市場では円高ドル安が進みやすくなります。金利の高い通貨を持つことで得られる利息が減り、ドルを保有する魅力が薄れるためです。
その結果、「円を売ってドルを買う」動きが弱まり、逆に円を買う動きが強まります。つまり、アメリカが利下げを行ったり日本が金利を引き上げたりして金利差が小さくなると、ドルから円へ資金が流れ、円高ドル安の動きが起こりやすくなります。
円高で輸出企業の利益が圧迫されやすい
日米金利差が縮小し円高が進むと、輸出企業の利益が圧迫されやすくなる点に注意しましょう。
為替が円高になることによって、海外市場では相対的に日本製品の価格が高くなり、競争力が低下します。その結果、販売量や利益が減少しやすくなります。
さらに、海外で得た利益を円に換算した際の金額も目減りするため、業績への打撃は二重に及ぶでしょう。とくに、自動車や電機など輸出依存度の高い産業では、この影響が顕著にあらわれる傾向があります。
円高で輸入品や海外旅行は割安に
日米金利差の縮小により円高が進むと、海外からの輸入品や海外旅行は割安になります。
海外から原材料やエネルギーを安く仕入れられるため、企業はコストを抑えやすくなり、商品やサービスの価格を安定させられるようになるためです。また、円の価値が高まることで、海外旅行や留学の費用も割安になり、個人の消費活動が活発になる可能性があります。







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