2025年(令和7年)は税制改正により、年末調整や確定申告に変更があります。基礎控除・給与所得控除の引き上げなどの改正が行われるため、担当者は早めの準備が必要です。
目次
税制改正の影響による2025年(令和7年)の年末調整や、確定申告が気になる方も多いのではないでしょうか?基礎控除・給与所得控除の引き上げなどの改正により、年末調整担当者の仕事が大幅に変わります。
本記事では、2025年の年末調整の変更や必要書類、手続きの流れをご紹介します。
年末調整とは

年末調整とは、1年間に支払われた給与や賞与から源泉徴収された所得税の金額を精算し、正しい税額に調整する手続きのことです。
会社員など給与所得者は、毎月の給与から概算で所得税が差し引かれていますが、年末にその過不足を計算し直すことで、払いすぎた税金が還付され、不足している場合は追加で徴収されます。確定申告の手間を省き、正確な納税を行うための大切な手続きです。
年末調整はすべての人に行うのではなく、対象になる人とならない人がいます。
■年末調整の対象になる人
年末調整の対象となるのは、1年を通じて同じ会社に勤務し、給与の支払いを受けている人です。
基本的に、会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員等であり、正社員だけでなく、契約社員、パート・アルバイトなど、事業主と雇用契約を結んで給与の支給を受けるすべての人が該当します。
■年末調整の対象にならない人
年末調整の対象にならないのは、次のような従業員です。
- 1年間の給与の総額が2,000万円を超える
- 災害減免法によって源泉所得税・復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けている
年末調整の対象外となる人は、基本的に翌年の2月16日から3月15日までの期間に、自ら確定申告を行わなければなりません。
また、次に該当する人も、自社の年末調整の対象外となる一例です。
- 年の途中で退職し、その年の12月31日に会社に在籍していない人
- 給与を複数の会社から受け取っており、自社以外の勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している
- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が未提出
- 非居住者 など
■確定申告との違い
年末調整と確定申告はいずれも所得税を精算する手続きですが、申告・納税手続きを行う人と目的が異なります。年末調整は、会社が給与所得者に代わって1年間の税額を計算し、源泉徴収された税金の過不足を調整する仕組みです。
一方、確定申告は納税者本人が自分で1年間の所得や控除を申告し、最終的な税額を確定させる手続きです。給与以外に副業や不動産収入などがある場合は、年末調整だけでは完了できず、確定申告が必要となります。
2025年(令和7年)の年末調整における変更

2025年(令和7年)度の税制改正により、所得税の「基礎控除」や「給与所得控除」が見直され、新たに「特定親族特別控除」が創設されました。
これらの改正は原則として令和7年12月1日から施行され、令和7年分以降の所得税に適用されます。
そのため、令和7年12月以降に行われる年末調整やその他の源泉徴収業務では変更が生じますが、令和7年11月までの給与については現行制度での源泉徴収処理となり、源泉徴収業務に影響はありません。
令和7年12月以降の年末調整がどのように変わるのか、変更の内容をみていきましょう。
■基礎控除・給与所得控除の見直し
改正により、基礎控除と給与所得控除が見直されます。基礎控除とは、所得にかかわらず誰でも受けられる控除です。改正前は48万円が標準額でしたが、改正後は最大95万円に引き上げられ、所得が高い人ほど控除額が段階的に減少する仕組みに変更されました。
改正前後の基礎控除は、次の表のように変わります。
| 所得区分(合計所得金額) | 改正前の基礎控除 | 改正後(令和7年/8年) | 改正後(令和9年以降) |
| 132万円以下 | 48万円 | 95万円 | 95万円 |
| 132万円超336万円以下 | 88万円 | 58万円 | |
| 336万円超489万円以下 | 68万円 | ||
| 489万円超655万円以下 | 63万円 | ||
| 655万円超2,350万円以下 | 58万円 |
合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額には変更がありません。
給与所得控除とは、所得税の課税対象となる「給与所得」を算出する際に、1年間の給与収入額に応じて自動的に差し引かれる控除です。改正により、給与所得控除について55万円の最低保障額が、65万円に引き上げられます。
改正されたのは、以下の範囲です。
| 給与の収入金額 | 給与所得控除額(改正後) | 給与所得控除額(改正前) |
| 162万5,000円以下 | 65万円 | 55万円 |
| 162万5,000円超180万円以下 | 収入金額×40%-10 万円 | |
| 180万円超190万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
見直しの対象となるのは給与収入が190万円以下の給与所得であり、給与の収入金額190万円超の場合には変更がありません。従来どおりの段階的な控除率が適用されます。
■扶養控除・配偶者控除などの所得要件の緩和
基礎控除や給与所得控除の変更に伴い、扶養控除や配偶者控除などの適用条件となる所得の上限が、以下のように緩和されました。
| 扶養親族の区分 | 所得要件(改正前) | 所得要件(改正後) |
| ・扶養親族 ・同⼀⽣計配偶者 ・ひとり親の⽣計を⼀にする⼦ | 48万円以下 | 58万円以下 |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 48万円超133万円以下 | 58万円超133万円以下 |
| 勤労学⽣ | 75万円以下 | 85万円以下 |
この変更で、これまで控除の対象とされていなかった「年収103万円以上130万円未満の家族(配偶者・子・親など)」も控除の対象になる場合があります。
また、勤労学生控除の合計所得金額の上限が従来の「75万円以下」から「85万円以下」に引き上げられ、アルバイトなどで収入がある学生も控除を受けやすくなりました。
■特定親族特別控除の新設
改正では、新たに「特定親族特別控除」という控除制度が設けられました。これは、居住者(納税者)が生計をともにする特定の親族を持つ場合、その親族1人につき一定額を所得から差し引ける制度です。
特定親族とは、次の条件に該当する人です。
- 年齢が19歳以上23歳未満
- 配偶者や事業専従者は除く
- 合計所得金額が58万円超123万円以下
- 里子(児童福祉法に基づき養育を委託された子)も含まれる
この控除により、対象となる親族がいる場合、納税者の課税所得を減らし、税負担が軽くなります。
2025年の年末調整における留意点

2025年分の所得を対象とした年末調整では、その年の12月に次の点を確認しておきましょう。
- 新たに扶養控除の対象になる親族を確認する
- 改正後の基礎控除額等に基づいて計算する
ここでは、2025年に支給した給与の年末調整を正確に進めるためのポイントを解説します。
■新たに扶養控除の対象になる親族を確認する
令和7年の税制改正により、これまで扶養控除の対象外とされていた家族が、新たに控除の適用を受けられる場合があります。
そのため、年末調整の際には、従業員に控除対象となる親族がいないかを確認することが求められます。
該当する親族がいる場合は、「扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらい、正しい控除額を反映させましょう。
さらに、特定親族に該当する従業員については、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出も必要となります。
■改正後の基礎控除額等に基づいて計算する
改正では基礎控除額や給与所得控除額が見直されるため、年末調整ではこれらの改正後の控除額を正しく反映させて計算する必要があります。
控除額が変わるため、過去の計算方法のまま計算することのないよう、給与ソフトや計算ツールの設定も最新の内容に更新しておきましょう。
【2026年分以降】給与の源泉徴収のポイント

2026年(令和8年)分以後の給与の源泉徴収事務では、次の2点に留意しましょう。
- 源泉控除対象親族の記載内容を確認すること
- 新しい源泉徴収税額表で計算すること
ここでは、2026年以降に支払う給与にかかる業務で注意すべきポイントについて解説します。
■源泉控除対象親族の記載内容を確認すること
従業員から提出された扶養控除等申告書の記載内容について、しっかり確認しましょう。
「扶養控除等申告書」には、これまでの控除対象扶養親族に加え、新たに特定の特定親族も含めて「源泉控除対象親族」として記載する必要があります。源泉控除対象となる親族の記載が正確かどうかをチェックし、漏れや誤りがないよう注意が必要です。
■新しい源泉徴収税額表で計算すること
令和8年1月1日以後に支払う給与および公的年金等の計算には、改正された「源泉徴収税額表」を使います。
2026年(令和8年)分以後の給与の源泉徴収事務では最新の源泉徴収税額表を使用して計算することが大切です。
古い表を使って所得税の計算に誤りが発生しないよう、早めに準備しておきましょう。







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