マッチングアプリ=恋愛の相手探しというイメージは少しずつ変わってきている。
いま若者の間では、“友達作り”にアプリを使うことが広がっており、恋愛が前提でない関係性を築くツールとしても活用され始めている。実際、Tinderは大学生向けの機能「Tinder U」を展開しており、恋愛だけでなく友達関係も含めた「出会い」をサポートするプラットフォームとして定着しつつある。“アプリで友達探し”の実態に迫ってみたい。

大学生限定機能「Tinder U」とは?
Tinderのアプリ内機能「Tinder U」は大学生向けに設計されたサービスだ。Tinderアカウントを作成した後に、大学のメールアドレスを認証することで、通っている大学や学部、サークルなどの情報をプロフィールに追加できるようになる。同じ大学や共通の趣味を持つ近隣の学生と簡単につながれるとして人気の機能だ。
マッチングアプリと聞くと恋愛のパートナー探しを思い浮かべる人が多いだろう。しかしTinder Uは、恋愛を前提としない出会いをしやすいことが特徴だ。例えば、大学入学前に新しい同級生とつながってサークルの新入生歓迎会に参加したり、就職活動の仲間を探して情報交換をしたりと、使い方はさまざまだ。
さらに、つながる相手は異性に限らない。設定次第では同性とマッチすることも可能で、共通の趣味を持つ友達を探すこともできる。
Z世代の出会いの価値観
調査会社OnePollがTinder利用者を対象に行った調査によると、日本の18~25歳の若者の 74%が「マッチングアプリを通じて意義のある関係を築いたことがある」と回答している。また、65%が「オンラインで知り合った人と友達になった」と答えた。オンラインでの出会いが一般化しているのはもちろんだが、半数以上が友達をアプリで作った経験を持つという事実は注目に値する。
Tinderの広報担当者は次のように語る。
「Z世代である大学生にとってオンラインを活用した出会いはますます一般的になっています。そのような中で、恋愛、趣味、勉強など大学生活をより有意義に過ごしたい学生の間では、オンラインを活用して新しい出会いやつながりを求めていることが伺えます」
大学生活を“与えられた環境の中で楽しむ”のではなく、“自分の意思で広げたい”と考える学生にとって、アプリを使って普段出会えない人とつながることは、可能性に満ちた選択肢になっているのだ。
実際にマッチングアプリでできた同性の友達がいる女子大生は次のように語る。
「上京してきたばかりで、大学に知り合いが一人もいなかったんです。話せる友達が欲しいなと思って入学後にTinder Uを使い始めました。サークルの説明会に一人で行くのは不安だったので、一緒に行ける友達ができて心強かったです」
友達作りがオンライン化してきている理由
オンラインで友達を作る大学生が増えている背景には、やはりコロナ禍の影響が大きいと考えられる。現役大学生の多くは、高校時代を外出や対面での活動が制限される中で送り、他者とのつながりがオンライン上で形成され始めた時代を経験している。その結果、オンラインで人と出会うことに対する心理的なハードルが低く、デジタルを通じて関係を築くことを自然に受け入れていると思われる。

株式会社プレマシードが実施した調査でも、そうした傾向が示されている。
コロナ禍以降の生活・学習環境・価値観などが当たり前になっている2002~2010年生まれ(22~15歳)を対象に、「SNSなどを通じて出会う“リアルでは会ったことのない人”との関係について、あなたの考えに近いものを選んでください」と質問したところ、「趣味や推しの話が合えば、十分親しくなれると思う」と答えた人(「そう思う」「ややそう思う」の合計)は82.2%に上った。
現実の生活圏で自分と同じ熱量を持つ“推し活仲間”を見つけるのは難しく、オンラインでのつながりの方がむしろ自然だと感じる若者が増えていることがうかがえる。
恋愛のためのツールとして広まったマッチングアプリは、いまや“人と人をつなぐ場”へと変化している。
リアルな出会いに加えて、アプリを通じて自分と価値観や熱量の近い人とつながろうとする姿は、出会いのあり方そのものが多様化していることを象徴しているように見える。
取材・文/宮沢敬太







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