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昆虫博士・牧田習さんが解説!数千kmも移動可能なスゴい飛行能力を持つ昆虫たち

2025.11.09

昆虫は私たち人間に比べると、とても小さな生き物ですが、人間にはできないスゴい能力を持っています。その一つが飛ぶことです。きっと、ほとんどの方がチョウやトンボが飛んでいる様子を見かけたことあるはずです。

でも、中には近場に飛んでいくだけではなく、数千キロも移動することができるとんでもない種類もいます。今回はそんなスゴい飛ぶ能力を持つ昆虫たちについて解説いたします。

2000km以上飛ぶチョウ・アサギマダラ

まず、最初はアサギマダラというタテハチョウ科の一種について紹介いたします。アサギマダラは翅を広げると10cmほどの大きめのチョウで、日本国内では北海道から沖縄まで全国的に見ることができます。しかしながら、季節によって見ることのできる地域が異なります。そう、彼らは日本列島を旅するチョウなのです。

アサギマダラは暖かい地域を好むチョウで、寒い冬の時期は沖縄や台湾などで過ごしています。しかしながら、春から夏にかけて各地の気温が上昇してくると、世代を繰り返しながら北上し、各地で姿が見られるようになります。秋に羽化した新成虫は、南下を始め、一世代で沖縄などの暖かい地域に戻っていきます。この移動距離はなんと2000km以上になるとも言われています。

では、この大移動はどのように裏付けられたのでしょうか?目の前にいるアサギマダラがどこから飛んできたなんて、彼らとコミュニケーションが取れない限り、分からないと思いますよね。実はこちら、「マーキング」という方法によって示されました。捕まえたアサギマダラの翅に文字や数字などを記し、再び放すと、同じ個体が数千キロ離れた場所で採集されたのです。これにより、大移動していることが示されました。

アサギマダラは大移動すること以外にも驚きの生態を持ち合わせています。それは幼虫時代にキジョランやカモメヅルなどの毒がある植物を食べて、成虫になっても体の中に毒を持っておくことで、天敵から食べられないようにしています。さらに、成虫になってからもフジバカマなどの毒を持つ植物の花の蜜を吸って、毒を体の中に蓄積し続けます。

とはいえ、人間が手で持つ程度であれば、危険性はほとんどありません。もし、大移動している最中のアサギマダラを見つけたら、近くで観察してみてくださいね。

大陸を縦断するチョウ・オオカバマダラ

日本のアサギマダラの移動距離はスゴいですが、世界にはそれを超える距離を移動するチョウがいます。北米~南米、オセアニアなどに分布するタテハチョウ科の一種・オオカバマダラは北米大陸を大移動することが知られています。

オオカバマダラも寒い冬はメキシコなどの暖かい地域で冬を過ごし、春から夏にかけて何世代も繰り返しながら北上し始めます。そして、カナダやアメリカ合衆国北部まで北上すると、夏の終わりから秋にかけて今度は南下を開始するのですが、この南下する世代は一世代で南下します。この移動距離は3000km以上にもなると言われています。

そして、メキシコや中米地域に戻ってくると、森を埋め尽くすほどの大集団を形成して越冬します。大集団を形成する理由は群れることで、天敵から身を守るためと考えられています。

最近は幼虫の食草であるトウワタの減少や気候変動によって、オオカバマダラの数や移動に影響が出てきていると考えられてもいます。

世界で最も広く分布するトンボ・ウスバキトンボ

さて、ここまで、アサギマダラとオオカバマダラという2つのチョウの移動について紹介してきましたが、もちろん他の昆虫でも長い距離を移動する種類はいます。3つ目に紹介するのはウスバキトンボというトンボです。ウスバキトンボは日本含む世界中の温帯・熱帯に広く分布する「世界で最も広く分布するトンボ」です。おそらく、日本にいる多くの方が1度は目にしたことがあるはずです。

ウスバキトンボは元々、暖かい地域に暮らすトンボで、毎年、南から北上してきて、世代を繰り返しながら日本列島を北上していきます。しかしながら、彼らは日本の多くの地域の寒い冬を越すことができません。そのため、寒い冬が来ると、成虫はもちろん、卵や幼虫も死んでしまいます。もちろん、アサギマダラやオオカバマダラのように北上した個体の繋いだ命が暖かい地域に帰っていくこともありません。

しかしながら、地球温暖化によって、越冬できる地域が広がり、分布域もどんどん広がってきているとも考えられています。

さて、今回は大移動する昆虫たちに焦点を当て、その驚くべき生態を紹介してきました。小さいながらも物凄い距離を飛ぶことができる能力からは私たち人間が学べることも多いはずです。また、昆虫は環境の変化にとても敏感な生き物であるため、彼らの移動も気候変動や人間の活動に大きく影響されています。彼らの移動に着目していくことで、地球環境のことを知る手がかりになるはずです。

昆虫ハンター・牧田習
博士(農学)。1996年、兵庫県宝塚市出身。2020年に北海道大学理学部を卒業。同年、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学し、2025年3月に同大学院博士課程を修了。昆虫採集のために14ヵ国を訪れ、9種の新種を発見している。「ダーウィンが来た!」(NHK)「アナザースカイ」(NTV)などに出演。現在は「趣味の園芸 やさいの時間 里山菜園 有機のチカラ」(NHK)、「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)にレギュラー出演中。昆虫をテーマにしたイベントにも多数出演している。

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著書:「昆虫博士・牧田習の虫とり完全攻略本」(小学館)、「昆虫ハンター・牧田習のオドロキ!!昆虫雑学99」(KADOKAWA)、「昆虫ハンター・牧田習と親子で見つけるにほんの昆虫たち」(日東書院本社)、「春夏秋冬いつでも楽しめる昆虫探し」(PARCO出版)好評発売中。Instagram・Xともに@shu1014my

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