コオロギは最も身近な秋の昆虫の1つです。昆虫に興味がある方なら、鳴き声を聞くと、家で飼育したくなることも多いのではないでしょうか。そこで、今回はどんな道具をどのように使えばコオロギを飼育することができるのか?気をつけるべきポイントは?さらには、繁殖させて次世代に命を繋いでいく方法についても解説いたします。
コオロギ飼育に必要な道具とその使い方は?
コオロギは簡単に用意できる道具で飼育することができます。よくカブトムシやクワガタムシなど、他の昆虫の飼育と同じと思われることもあるのですが、コオロギの生態に合わせた環境作りやエサが重要です。ここでは、必要な道具5点とその使い方を紹介いたします。
(1) 飼育ケース
コオロギを飼育するためのケースです。ホームセンターや100円ショップで売られているプラスチックの虫かごで大丈夫です。密封機能が高すぎるものだと、コオロギにとっては湿度が高すぎる状態になってしまいがちなので、通気性が良いものを選ぶようにしましょう。
(2) ケースの底に敷くもの
飼育ケース内にはティッシュペーパーや園芸用の土などを敷いてあげましょう。土を使うと湿度が上がりすぎたり、カビが生えやすくなったりしまうので、ティッシュペーパーの方が扱いやすいですが、繁殖させる場合に必要な土については、後ほど解説いたします。
(3) 紙製の卵パックや新聞紙など
コオロギが隠れたり、登ったりするために紙製の卵パックや新聞紙を立体的な形にして、入れてあげましょう。これにより、コオロギ同士の争いを減らすこともできますし、ケースから移動させる作業も卵パックや新聞紙を持てば良いので、とても楽になります。
(4) エサ
コオロギは雑食で、植物質のものも動物質のものもよく食べてくれます。特にナスやきゅうりなどの野菜を切って爪楊枝などに刺しておくと、よく好んで食べてくれます。最近はコオロギ専用の市販の餌が売られていることもあるので、餌選びに迷ったらぜひ購入を検討してみてください。
(5) ペットボトルの蓋
コオロギにも水分は必要です。ペットボトルの蓋や小さな容器に水を入れて、飼育ケース内に置いてあげるようにしましょう。
コオロギ飼育では、ここに気をつけて!
ここまで、コオロギ飼育に必要な道具とその使い方について解説してきましたが、次は飼育において、見落としがちだけど、気をつけないといけない3つのポイントを解説いたします。これらは意識しておかないと、コオロギが弱ってしまったり、最悪の場合には死んでしまうこともあるので、注意が必要です。
(1) 1つのケースで飼育する数
コオロギは喧嘩はもちろん、共食いすることがよくあります。特に狭いケースにたくさんの数を入れすぎたり、餌が足りなかったりすると、すぐに共食いしてしまいます。ケース内で個体密度が高くなりすぎることや餌不足には注意するようにしましょう。
(2) 餌のバランス
先ほど、コオロギは雑食で、植物質のものも動物質のものも食べると申し上げましたが、野菜のみに偏ってタンパク質不足になるなどはあまりよくありません(共食いも起きやすくなります)。適度にどちらもあげるようにしましょう。動物質の餌としてはドッグフードなどがおすすめです。
(3) 湿らせすぎないように
ジメジメした湿度の高い環境を好む昆虫は多いですが、コオロギはそうではありません。もちろん、最低限の湿度や水分は必要ですが、湿らせすぎてしまうと弱ってしまいます。コオロギに直接、水をかけたりするのはよくありません。
次の世代に命をつなげよう
日本の多くの地域では、夏から秋にかけて成虫のコオロギをよく見かけますが、寒い冬が来ると、成虫は死んでしまうため、卵を産んで次の世代にバトンを繋ぎます。そして、卵の状態で冬を越し、次の年の春~夏頃に幼虫が生まれて、成虫に向けて成長していくというのがコオロギのライフサイクルです。
これは飼育下でも観察することができます。まず、飼育ケース内にメスが産卵する場所を作ってあげる必要があります。浅めのカップなどにバーミキュライトなどを4cmほどの深さになるくらいいれてあげましょう。メスがここに来て、産卵してくれます。
この時に、この産卵ゾーン内を霧吹きなどで湿らせておく必要があります。飼育ケース全体を湿らせると、コオロギが弱ってしまうため良くないですが、ここだけはよく湿らせておきましょう。
卵が産み落とされてから、孵化するまでの期間はコオロギの種類や温度などの環境によって大きく異なります。しかし、しばらくして幼虫が生まれてくると、成虫と同じく雑食であるため、同じように飼育して育てていくことができます。しかしながら、幼虫は体の大きさに合わせた餌が必要ですし、水不足にも弱いので、成虫以上によく注意しながら育てるようにしましょう。
昆虫ハンター・牧田習
博士(農学)。1996年、兵庫県宝塚市出身。2020年に北海道大学理学部を卒業。同年、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学し、2025年3月に同大学院博士課程を修了。昆虫採集のために14ヵ国を訪れ、9種の新種を発見している。「ダーウィンが来た!」(NHK)「アナザースカイ」(NTV)などに出演。現在は「趣味の園芸 やさいの時間 里山菜園 有機のチカラ」(NHK)、「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)にレギュラー出演中。昆虫をテーマにしたイベントにも多数出演している。
著書:「昆虫博士・牧田習の虫とり完全攻略本」(小学館)、「昆虫ハンター・牧田習のオドロキ!!昆虫雑学99」(KADOKAWA)、「昆虫ハンター・牧田習と親子で見つけるにほんの昆虫たち」(日東書院本社)、「春夏秋冬いつでも楽しめる昆虫探し」(PARCO出版)好評発売中。Instagram・Xともに@shu1014my







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