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森保監督を超えられるか?長谷部誠が語る名選手が名監督になるための条件

2025.11.03

 2026年北中米ワールドカップ(W杯)に向け、チーム強化が進んでいる日本代表。10月には過去13戦戦って未勝利だったサッカー王国・ブラジルを3-2で撃破。しかも前半は0-2という劣勢だったにも関わらず、後半に入って南野拓実(モナコ)、中村敬斗(スタッド・ランス)、上田綺世(フェイエノールト)がゴール。決めるべき選手が決め切り、ミラクル逆転勝利を飾ったことで、代表への期待値が一気に高まった。

森保監督は日本代表監督就任から7年以上が経過

 そのチームを率いるのは、ご存じの通り、森保一監督だ。彼は94年フランスW杯アジア最終予選であと一歩のところで逃した”ドーハの悲劇”の一員である。彼自身はW杯出場経験を持たないものの、代表レジェンドの1人として広く知られている。

 その森保監督が現役引退後、初めて指揮を執ったサンフレッチェ広島で2012・2013・2015年と3度のJリーグ制覇を達成。2017年10月に東京五輪代表監督(U-23)に抜擢され、2018年8月から日本代表監督を兼務。7年以上もの長きにわたって日本の顔に君臨し続けているのは特筆すべき点だ。

 2021年夏の東京五輪ではメダルまであと一歩及ばず4位にとどまったものの、2022年カタールW杯でドイツ・スペインを撃破。2023年以降の第2次体制でもドイツに勝ち、今回ブラジルにも初白星を挙げたのだから、やはり森保監督の実績は目覚ましいものがある。

10月のブラジル戦初勝利で評価が上がった森保監督(筆者撮影)

森保監督以外の日本代表レジェンド指揮官は苦戦が目立つ

 しかしながら、彼以外の日本代表レジェンド監督の成功例がなかなか出てきていないのも事実だ。

 2025年に入ってからも、森保監督と同じドーハ組の中山雅史監督が2023年から率いていたJ3・アスルクラロ沼津指揮官を9月に辞任。今季からJ3・高知ユナイテッドを指揮していた98年フランス・2002年日韓両W杯参戦の秋田豊監督もパワハラ問題で、9月に志半ばで退任した。そして若手世代の注目株と位置づけられていた2010年南アフリカW杯参戦の岩政大樹監督も今年頭から采配を振るっていたコンサドーレ札幌の指揮官を8月に解任されてしまった。「名選手が名監督になる」ことは、本当に難しいと言っていい。

8月頭まで札幌で奮闘していた岩政大樹監督(筆者撮影)

長谷部コーチは「監督は失敗してナンボ」だと強調!

 そこで気になるのが、2024年5月に現役引退し、指導者に転身した2010年南ア・2014年ブラジル・2018年ロシアW杯の日本代表キャプテン・長谷部誠コーチの動向である。

2024年5月の引退後、指導者道をひたはしる長谷部誠コーチ(筆者撮影)

 彼は引退後、選手として10シーズン在籍したフランクフルトU-21コーチに転身。2024年9月からは日本代表コーチも兼務するようになり、代表活動のたびに欧州とアジアを行き来して、森保監督の下で経験を積むようになった。

 10月シリーズ前に取材に応じた彼は、「日本でJFA公認A級ライセンス講習会に参加するために今回は1週間早く帰ってきて、講習を受けて、その間に代表活動の準備をしたり、フランクフルトの情報収集をしたりしていました」と語っていた。

 選手時代は午前中の全体練習をこなし、その後は筋トレや自主トレ、自らのコンディション調整に集中していればよかったが、今は代表・フランクフルトのトレーニングの準備や選手個々の動画のチェック、指導者としての勉強とやることが山積している様子。「本当に働いて働いて働き倒してます」と苦笑していたほどだ。

 そういう生真面目さとインテリジェンス、豊富な国際経験、代表でW杯に3度出た経験値があれば、彼こそは「代表レジェンド監督の成功例」になれるのではないか。

日本代表のトレーニングで率先して体を動かす長谷部コーチ(筆者撮影)

「大事なのは失敗を恐れないこと」という長谷部コーチは壁を越えられるのか?

 実際、そういう期待は非常に高く、「森保さんの次、あるいは次の次の代表監督」という呼び声も高い。外野の声が本人に届いているのかどうかは分からないが、「名選手が名監督になるために必要なことは何だと思うか」と彼にストレートに問うと、「簡単に言えば失敗を恐れないことじゃないですか」という答えが返ってきた。

「指導者って『失敗してナンボ』の世界じゃないかと僕は思うんですよね。選手としてある程度、高いところまで行った人が、失敗もなしに成功したかと言えば、必ずしもそうではない。

 レアル・マドリードのシャビ・アロンソ(レバークーゼンで成功を収めて、今季からレアル指揮官に就任した元スペイン代表)にしても、ボルシア・ドルトムントのニコ・コバチ監督(バイエルン・ミュンヘンなどビッグクラブの指揮官を歴任している元クロアチア代表キャプテン)にしても、うまくいく時といかない時を経験してきていると思うんですよね。

 どんな名将でも、右肩上がりにどんどん階段を上っていくのは本当に難しい。困難にチャレンジし続けることで、自分の目指す大きな目標にたどり着けると僕は信じています。他人が思う成功・失敗ではなく、自分にとって大事なことを貫いて、やっていきたいですね」と長谷部コーチは語気を強めたのだ。

98年フランスW杯をキャプテンで優勝し、2018年ロシアW杯の優勝監督になったディディエ・デシャン監督。長谷部にはこういう成功ロードを歩んでほしい(筆者撮影)

選手時代のキャリアに関係なく、指導者としてチャレンジできる環境を作ることが日本のレベルアップの必須条件

 確かに彼が言うように、失敗のないキャリアなどあり得ない。ただ、代表レジェンドの場合、選手時代の実績が輝かしい分、どうしても周囲の期待値や注目度が上がり、大胆なトライをするのが難しくなりがちだ。

 彼らを雇う協会やクラブ側も「長谷部には失敗させられない」という思いが働くからこそ、なかなかトップチームの監督に抜擢しない傾向もある。そういう配慮が妨げになって、才能や可能性のある人材が采配を振るうチャンスが減ってしまう。彼らがいつまでも温室に入れられ、守られるような状況になることだけは回避しなければならないだろう。

 欧州で世界的レジェンドが指導者に転身して成功する例が多いのは、「かつての名選手を大事に扱うべき」という固定概念が少ないからかもしれない。選手時代の経歴に関わらず、「優れた人材はどんどん登用すべきだ」という価値観が一般化しているからこそ、チャレンジの場が幅広くあるのだろう。日本もそういう環境を作るべきだし、レジェンド自身もリスクを冒してチャレンジするマインドが必要ではないか。

 40歳そこそこで鹿島アントラーズと札幌を率いた岩政監督も「自ら進んで外に出ないと何も始まらない」と口癖のように強調していた。2023年末に鹿島の監督続投が叶わなかった時には「どうしたらいいか」と苦悩したというが、ベトナム1部・サイゴンFCからのオファーを受け、半年間でチームを躍進させたことで、「東南アジアに目を向ければ、いくらでもチャンスはある」という前向きなマインドになれたという。今は2度目の浪人中ではあるが、彼ならばまた次のキャリアを切り開いていけるはず。これまで解任された経験のある代表レジェンドにはより視野を広げて、自身の活躍の場を見出してほしい。

森保監督も広島時代には3度のJリーグ制覇を経験したが、最後は途中退任している。それだけ厳しい仕事なのだ(筆者撮影)

長谷部コーチには早く監督のできる指導者ライセンスを取得してほしい!

 長谷部にしても、早いうちに一度、トップチームを指揮するべき。今はまだJFA公認プロライセンスもなく、欧州最高峰のUEFAプロライセンスも持たないため、欧州クラブや日本代表の指揮官になることはできないが、その作業をできるだけ早く進めて、2~3年後には監督として采配を振るってほしいところ。それが実現すれば、2030年W杯後の日本代表監督就任も夢ではなくなるだろう。

 長谷部ジャパンの発足を夢見るファン・サポーターは少なくない。本人も重圧を感じているかもしれないが、とにかく貪欲に学んでいくしかない。フランクフルトのディノ・トップメラー監督、日本代表の森保監督の下で働きながら、成功している指揮官のアプローチやマネージメントを体得できるメリットを最大限生かしつつ、彼なりの成功への道筋を見出すこと。それを我々は楽しみに待ちたいものである。

長友佑都や堂安律もいつか監督業に挑戦する日が来るかもしれない(筆者撮影)

取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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