2025年8月29日(金)に公開された映画『8番出口』が、公開されてから10月5日までの38日で興行収入45億円を突破し爆発的な大ヒットとなった。
本作は、地下通路に閉じ込められた二宮和也氏演じる主人公「迷う男」が脱出のため異変を探しながら「8番出口」を目指す日本の実写映画である。原作は2023年にリリースされた同名インディーゲーム(開発:KOTAKE CREATE)であり、こちらも累計200万本以上を売り上げた大人気作だ。
しかし、原作がゲームである映画『8番出口』がなぜここまでの爆発的な流行りを見せたのか。その理由をゲームをプレイしたVTuber目線で分析する。

ゲームをプレイしてから映画『8番出口』を見ることで分かった魅力
まず、『8番出口』は、地下鉄駅の地下通路に取り残された主人公が出口を目指すゲームだ。
「異変があれば引き返す、異変がなければ前に進む」、これを8回正解すると脱出が成功し、1度でも失敗すると初めからやり直しとなる。シンプルなルールながらもプレイヤーは、緊張や恐怖心、失敗できない焦燥感を感じながらプレイをしており、その面白さが配信界隈でも大きな人気を呼んだ。
私もプレイしたが、ホラーゲームが苦手なため作り込まれた演出に驚きすぎて、1時間程度で脱出できるところを2時間もかけてしまった。静かでどこまでも同じシンプルな空間に急に狂気的な異変が起こるギャップ。遊ぶうちに次第に異変を見つけられていく楽しさが癖になっていき何週も周回してしまった。






映画では原作ゲームにも登場した「笑うおじさん」や「押し寄せてくる赤い水」という異変がわかりやすい異変として登場する。「これこれ」と感じながらも、ゲームをプレイした当時の感情が思い起こされて懐かしく感じられた。こうして分かりやすい異変を登場させることで、原作を知らずに見ている人でも異変の怖さを実感しやすかったのではないかと思う。
さらに驚かされたのがゲームをプレイしていないと気づかないような異変があった点だ。私が気づいたのは、主人公が「異変なし」と判断したドアノブの位置が変わっている異変で、気づいた瞬間、思わず声を出しそうになった。また、主人公が「異変なし」と判断して通り過ぎた道にある蛍光灯が不規則な並びになっていた。これは伏線回収がされなかった異変でもあるため、こうしたファンサは原作ファンにはたまらない。まだ他にも見逃した異変があるかも…ともう一度見てみたくもなった
なぜ映画『8番出口』は爆発的大ヒットを記録したのか
1番の理由は、ゲームで主人公「迷う男」を演じる二宮和也氏の迫真の演技は、ゲームプレイヤーの緊迫した心理状況と非常にリンクしていたためだろう。恐怖や緊張が再現されていることによって、映画を見ているのにまるでゲームをプレイしているかのような感覚を味わえた。この要素はゲームのプレイ経験の有無を問わず、多くの人を魅了したに違いない。
また、ゲームと同じ一人称視点の映像を取り入れることで見る人の臨場感を高めていたのも重要な要素であろう。ゲームプレイヤーの感覚を疑似体験させることで、何度も見たくなるような満足度の高さに繋がっていたと考える。
さらに、不明瞭であったストーリー性の追加が映画のオリジナリティを高めていた。ゲームではただ異変であるだけの要素がストーリー性を有していたことによって、ゲームをプレイ済みの層も新鮮な気持ちで見ることができた。現に私も飽きることなく最後までドキドキしながら見ていた。
映画『8番出口』の公開に際して、私を始めとしたゲームプレイヤーからの関心度は非常に高かったであろう。しかし大衆はそうとは言えない。それを踏まえて私が今作の好手だと感じたのがタイアップだ。多様なタイアップがゲームを知らない層へのアプローチとなっていたと考える。CM放送などは勿論のこと、「東京メトロ」を始めとする実際の地下鉄や、人気アイドルユニット「PiKi」などとのタイアップはゲームを知らない多くの人が『8番出口』という映画を知るきっかけになっていた。また、有名YouTuberであるHIKAKIN氏の出演も幅広い世代への周知に寄与していたと思われる。
映画『8番出口』はさまざまな創意工夫の末に今までにあまり類を見ない形での大ヒットとなった。このように、個人が作ったインディーゲームが今年を代表する映画になったのはとても夢がある話だ。これを機にインディーゲーム界隈に日の目が当たることをゲーム好きとして期待したい。個人的には来年実写映画化されるインディーゲーム発の『夜勤事件』も『8番出口』に続くヒットになることを期待したい。
文/笑咲ゆぺ







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