2017年に決定された酒税法の改正が2026年10月に最終段階を迎えます。この記事では、ビール・発泡酒の税率の統一化による生活への影響について解説します。
目次
2017年に政府によって発表された酒税法改正。その内容にしたがって、2020年10月から2回にわたって段階的に進められてきた酒税額の改正が、2026年10月に最終段階を迎えます。この変更によってビールや発泡酒などの税率が統一され、メーカーや販売事業者をはじめ私たち消費者にも影響が広がると予想されています。
この記事では、酒税法改正の目的やこれまでの酒税法改正の内容、2026年10月の改正のポイントを解説。ビールや発泡酒、その他の酒類にどのような影響があるのか、今後の動向についても見ていきましょう。
酒税法改正とは?目的とこれまでの動き
そもそも酒税法や酒税法改正とはどのようなものでしょうか。基本や目的を、これまでの改正内容とともにおさらいしておきましょう。
■酒税法改正の目的
まず「酒税法」とは、アルコール度数1度以上の飲料に課される酒税について定めた法律です。お酒は種類によって4つに分類され、ビールや発泡酒、日本酒、ウイスキーなどその区分ごとに税率のルールが設けられています。
酒税法の改正は、安定した税収の確保と区分が異なる酒類間の公平な税負担、市場の実態に合った酒類分類や税率設定のために進められてきました。これまで酒税が高かったビールに代わるアルコール飲料として、より税率の低い発泡酒や新ジャンルのアルコール飲料が登場し、人気を集めてきました。消費者の嗜好の多様化も相まってメーカー間の競争が激化するなかで、似た酒類の間の税率の差が懸念されるようになり、この格差をなくすことを目的に「複雑な税率を簡素化する」方針が打ち出され、酒税法の改正が続いています。
酒税法改正による酒税率の変更が段階的に行われるのは、一度に大きく税率を動かすと、価格や需給に影響が出るためです。メーカーと小売業者、消費者の負担を分散させる目的で段階的に実施されています。
■これまでの主な酒税法改正(2020年~2023年)
2017年4月に発表された酒税法改正にともない、これまで2020年・2023年の2回にわたってビール系飲料を中心に税率や分類が見直されてきました。ここでは、主にビール系飲料の変更を取り上げます。
2020年10月の改正
2020年10月の酒税改正では、ビールの税率が350mlあたり77円から70円に引き下げられ、新ジャンル(第3のビール)は28円から37.8円に引き上げられました。
2023年10月の改正
2023年10月の酒税改正では、ビールの税率が63.35円に引き下げられました。また、これまで「新ジャンル」とされていた酒類は「発泡酒」に統合され、税額は46.99円となりました。
2026年10月酒税法改正のポイント
2026年10月に行われる酒税改正では、ビール系飲料の税率が大きく変わります。
■ビール系飲料の税率が同一水準に
2026年10月の改正におけるポイントは、ビール系飲料(ビール・発泡酒)の税率が350mlあたり54.25円に統一される点です。ビールは63.35円から引き下げ、発泡酒は46.99円から引き上げとなります。また、ビール系飲料以外では、チューハイなどの「その他の発泡性酒類」の税率が350mlあたり28円から35円に変更されます。
ビール系飲料税率の変更(350mlあたり)
| 酒類 | 改正前 | 2020年10月~ | 2023年10月~ | 2026年10月~ |
| ビール | 77円 | 70円 | 63.35円 | 54.25円 |
| 発泡酒 | 46.99円 | 46.99円 | 46.99円 | 54.25円 |
| 新ジャンル | 28円 | 37.8円 | 発泡酒に統合 | 発泡酒に統合 |
参考: https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d08.htm
■2023年までの酒税改正との違い
これまで行われた2020年・2023年の酒税改正がビール系飲料の税率格差を縮小するための段階的な措置だったのに対して、2026年の改正では税率が統一される点が大きな違いです。この改正でこれまで据え置きだった発泡酒の酒税(46.99円)が増税され、3つのカテゴリーが同じ税率になります。
■2027年以降の酒税法改正はある?
2026年10月の改正をもって、2018年に決定された酒税法改正は完了します。今後の市場動向により新たな法改正が行われる可能性はありますが、2025年10月時点ではまだ発表されていません。今後のビール系飲料の税率一本化が市場に与える影響が注目されています。
【ジャンル別】酒税法改正による影響

酒税法の改正は、私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか。ここでは、お酒のジャンル別に見ていきましょう。
■ビール・発泡酒:「価格」から「味」で選ぶ時代へ
ビールは2026年10月の酒税改正によってさらに税率が引き下げられます。段階的な減税の恩恵を最も受けてきた酒類であり、発泡酒との税率の差が解消されることで、今後の需要拡大が見込まれます。消費者にとっては同じ価格帯で楽しめる選択肢が増え、より手頃に楽しめるようになるでしょう。
一方で、発泡酒はビールと比べて手頃な価格で手に入る点が魅力でしたが、2026年10月以降の増税によってビールとの価格差がほとんどなくなり、その優位性を失うことになります。これまでの「ビールの代替品」という位置づけから、独自の味わいや個性で選ばれるための差別化が課題となるでしょう。
■チューハイ:初の大幅増税へ
これまで手頃な価格で人気を集めてきた缶チューハイなどの商品は、2026年10月に初めて税率が引き上げられ、350mlあたり28円から35円になります。販売価格の上昇によって消費者の選択に影響を与える可能性はありますが、ビール系飲料の改正後の税額54.25円との価格差は依然として大きいため、増額してもビール系飲料の代わりに選ぶ人が増え、需要が拡大すると予想されています。
■日本酒・ワイン:2023年以降変更なし
日本酒とワインの税額は、2023年10月に350mlあたり35円に一本化され、 日本酒は38.5円から引き下げ、ワインは31.5円からの増税になりました。2026年10月の改正では税率に変更はありません。
2026年10月の税率の一本化によってビール系飲料の価格差がほとんどなくなることで、消費者は「価格」を重視した選び方から、「味の好み」や「品質」を重視する選び方へと変化していくと予想されます。メーカー側も、これまでの価格競争から味わいや製法、ブランド価値の向上に力を入れる流れが加速するでしょう。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。







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