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NTTのキャンプ場!?テクノロジーの力で不安を解消するスマートキャンプ場「LScamp山中湖」に行ってみた!

2025.10.26

■連載/大森弘恵のアウトドアへGO!

機能的で扱いやすい道具の増加、そしてSNSや動画を通して楽しそうなキャンプシーンを目にする機会が増えたことで“初めてキャンプ”のハードルは以前よりも低くなった。しかし、キャンプをはじめやすくなったからと言って不安がなくなるというものではない。

とくに家族と出かけるファミリーキャンプでは子ども関係の不安が尽きない。

和式トイレを使えない・嫌がる小さな子は多いし、迷子など安全面も心配だ。最近は野生動物の出現が増えていてクマやイノシシに遭遇すると太刀打ちできない。

こうしたファミキャンの不安を解消すべく最新テクノロジーを取り入れたキャンプ場を作っているのがNTT東日本グループのひとつ「NTT Landscape」だ。

2025年10月にグランドオープンした山梨・山中湖村「LScamp山中湖」(山梨県南都留郡山中湖村平野555)で“ファミキャンの不安を解消する最新テクノロジー”とはどういうものなのか教えてもらった。

迷子への不安→スマートウオッチの貸し出しサービスで解消

「LScamp山中湖」は山中湖の東側に位置し、サイト数は約50区画+フリーサイト(10組ほど)。収容人数は大規模というほどではないが、総敷地面積は約2万m2で東京ドームの半分ほどの広さ。

もともとテニスコートだった土地を利用しており見晴らしがいいのだが、ところどころに林があるため管理棟の屋上からでも全体を見渡すことはできない。また、場内はフラットで小さな子でも歩きやすい一方、一般道に面しているため冒険心のある子なら親が作業しているうちにひとりで出かけてしまうこともありそうだ。

「LScamp山中湖」ではチェックインの際、希望者(小学生以下の子ども対象)にスマートウオッチを貸し出ししているという。

3分ごとにGPSで位置を記録できるので場内はもちろん、万一、場外に出てしまったときも場所を特定しやすい。また、子ども自身も場所がわからなくなったらSOS発信で親に知らせられるなど、迷子や事故、事件に素早く対応できるサービスとなっている。

電池切れや電波が通じない場所に出てしまった場合はお手上げだが、直近の位置を特定できれば探す際の助けになるのはありがたい。

野生動物への不安→ドローンで対策

▲レーザー光を照射する鳥獣忌避ドローン。なお、場内でキャンパー個人によるドローン飛行は禁止

キャンプではゴミや食品を放置しないなど各自の動物対策が不可欠だが、ちょっとしたスキにカラスやアナグマ、野良猫に荒らされることがある。

「LScamp ⼭中湖」では定期的に⿃獣忌避レーザーを照射できるドローンを⾶ばして野⽣動物が近寄りにくい環境を維持できるかどうか有効性を検証する実証を行う。

上空から赤と緑のレーザー光をいろいろなパターンで照射し、赤い光が動物の興味をひき、緑の光で目の痛点を刺激するという仕組みだ。養鶏場等での実証実験ではカラスやハト、イノシシ、シカ、ハクビシンなど多くの鳥獣がそのエリアを離れていったとか。

常時ドローンを飛ばしているわけではないので、キャンパー自身の食品・ゴミ管理はマスト。それでも鳥獣被害のリスクが低減されるのはありがたい。

気になるクマへの効果は「クマへの効果も実証されています。ただ、ドローンは800m先まで飛ばせますが、クマが向かってくる速度(時速50kmほど)を考えるとパイロットが危険。どうすれば安全に運用できるのかを思案しています」(NTT e-Drone Technology担当者)とのこと。

今のところクマ出没情報をチェックするしかない。

電波なしの不安→全エリアWi-Fi接続で解決&利便性アップ

▲チェックインシステムはR.projectよりサービス提供。写真提供:NTT Landscape

道具の使い方に迷ったとき、多くの初心者キャンパーが頼りにしているのが動画だが、キャンプ場によっては電波が通じず途方に暮れている姿を見かけることも。「LScamp山中湖」では場内全域でWi-Fiを使えるようにしており、安心して説明動画を確認できるようになっている。

そして全域Wi-Fi完備とすることで実現したのが、オンラインでのスムーズなチェックインとデリバリーサービスだ。

混雑しがちなチェックイン時でも1組ずつ並んで待つ必要がなく、手持ちのスマホで駐車場にいながらチェックイン作業ができ、自分の区画へ直行できる。

利用規約や場内案内を見ないとチェックインできないので確認事項は従来型チェックインとほぼ同じ。質問があれば、あいている時間に管理棟に聞きにいけばいい。

運営する「NTT Landscape」木下健二郎社長によると、オンラインチェックインとすることで人件費を削減でき、利用者の満足度も高められたとも。

▲サイトにいながら売店で買い物できるデリバリーサービス。写真提供:NTT Landscape

おもしろいのがデリバリーサービス。

「LScamp山中湖」は敷地全域がフラットなのでキャリーカートでもなんとかなるが、だれもがカートを持っているわけではない。

▲山田製作所の特定小型原動機付自転車「Lactivo」でデリバリー

デリバリーサービスでは、アプリを使って注文・決済すれば「Lactivo」を使ってスタッフがサイトまで運んでくれる。

カートのない人、売店から離れたサイト利用者も安心のサービスだ。

▲重い薪を積める。写真提供:NTT Landscape

購入できるのは場内売店で販売されている薪や飲み物など。

「Lactivo」は斜面でもブレーキ後は下がることがなく安全性は高い。また、4輪だが最小回転半径3.5mでキャンプ場内であれば楽に取り回しできるので、利用者自身が薪などの運搬にレンタル利用できると便利かも。

ちなみにデリバリーサービスは売店営業時間内しか利用できないが、薪の購入だけなら売店営業時間外でも手続きOK。

アプリでクレジットカードかQR決済すれば、カバーを開けて持っていける。薪の消費量が思いのほか増えたときも安心だ。

水回りの不安→クリーンで高規格な設備で解決

子どもだけでなく親も気になるのが水回り。

男女別トイレは洗浄機付きで広さも十分。小さな子といっしょに入ってもゆとりがある。

▲無料のシャワー室

シャワー室には石鹸やシャンプーなどは備えられていないが、リファのドライヤーを装備。手早く髪を乾かせるので風邪ひきの不安を低減できる。

▲給湯器付きの炊事場

炊事場は子どもが手伝えるよう踏み台が用意されている。個別のシンクで気持ちよく使えるのもいい。

唯一残念なのが、シャワー室や炊事棟、トイレ、売店はトレーラーハウスを利用した高床式でスロープがないということ。キャリーやベビーカー利用者、ケガなど歩行が困難な人は利用しづらい。

スロープ設置等対策を考えているとのことなので今後に期待したい。

遊びの不安→自然とテクノロジーを融合したイベントで解決

▲遊具の両端に広がるサイト

キャンプサイトは5タイプ。

遊んでいる子どもの様子を見やすいよう遊具を挟むように区画が並ぶ「パークサイト」(4名まで5,500円~)を中心に、ドッグランをぐるりと囲む「ドッグパークサイト」(4名まで6500円~)、ボール遊びができる「フリーサイト」(4名まで4000円~)、富士山と植栽が美しい「ガーデンサイト」(4名まで5500円~)、そして2名まで利用できる「ソロ・デュオサイト」(3500円~)だ。

「パークサイト」の端にはでっかいスターシェードが張られており、ここでは小学生を対象とした「XR宝探し」ゲームを開催。

隣り合わせた親子といっしょに宝探しをするチーム戦で、「LScamp山中湖」を再現したマインクラフトでヒントを得てから、リアルな場内で探索する。自然とテクノロジーを融合したNTT東日本グループらしい遊びだ。

「NTT Landscape」担当者によると、アウトドア型チームビルディング研修のノウハウを活かしたゲームで、初対面の家族でも短時間で仲良くなれるとのこと。ゲーム後に親同士が連絡先を交換するケースも見受けられたそうだ。

ちなみにファミリーとは活動時間が微妙に異なる「ソロ・デュオサイト」や鳴き声やアレルギーへの配慮が望まれる「ドッグパークサイト」は「パークサイト」の反対側に位置しており、いろいろなスタイルのキャンパーがすごしやすいようレイアウトされている。

▲取材日は雨だったが、富士山がどーんと広がる抜群の眺望が自慢。写真提供:NTT Landscape

「NTT Landscape」はキャンプ場運営のほかにDX推進、アウトドア研修、トレーラーハウス活用という4つの事業を行っており「LScamp山中湖」は「NTT Landscape」の真骨頂というべきキャンプ場に仕上がった。

「自治体が90年代に作ったキャンプ場は老朽化が問題になっていますが、設備投資できません。かといって公共サービスなので簡単には閉じることもできず、年間2000~3000万円の赤字となっている施設も。

われわれは委託費不要で運営し、そのかわり利⽤料はそのままいただくというビジネスモデルを展開していますが、全国の⾃治体から声をかけていただいています」(NTT Landscape 松尾雄大副社長)

今後、静岡県内などいくつかの施設をオープン予定とのこと。

“キャンプは不便を楽しむもの”とも言われるが、ファミリーキャンプでは子どもの安全が第一。

初ファミキャンでは設営・撤収作業をしながら子どもの様子を見るのはなかなか大変なことなので、見守りサービスや鳥獣忌避といったテクノロジーでサポートしてくれるキャンプ場は心強い存在となる。地域活性にも役立つので今後、どんなエリアに展開していくのか楽しみだ。

文/大森弘恵

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