JPYCは日本円と価格が連動するステーブルコインで、電子決済を可能にする暗号資産として注目されています。本記事では、JPYCの具体的な特徴や仕組みを暗号資産に詳しくない方にもわかるように解説します。
目次
JPYCは、JPYC株式会社が発行する日本円連動型のステーブルコイン。「1JPYC=1円」の価値が保証されており、電子決済手段や、個人あるいは海外間の送金手段、オンライン決済手段など、さまざまな活躍が期待される注目の暗号資産です。
本記事ではJPYCを初心者にもわかりやすくご紹介。ステーブルコインとは何かといった初歩的な知識からJPYCの特徴、企業情報まで解説していますので、新しい暗号資産のかたちに興味がある方はぜひ参考にしてください。
JPYCとは
冒頭でもお伝えした通り、JPYCは日本円と同じ価値を持つ新しいデジタル通貨です。ここでは、JPYCの概要や、発行する企業の情報をチェックしましょう。
■ステーブルコインを理解しよう
JPYCを知るにあたって理解しておきたいのが「ステーブルコイン」です。ステーブルコインとは、価値が安定した暗号資産のこと。具体的には、日本円や米ドルなどの法定通貨や金といった資産と価値が連動するように設計されたデジタル通貨を指します。
価格の安定性を確保することで、実物通貨と同じように送金したり、決済したりするなどの実用的な利用を目的としています。
ステーブルコインと仮想通貨の違い
ステーブルコインも仮想通貨(暗号資産)の一種ですが、ビットコインやイーサリアムといった一般的な仮想通貨とは目的や性質が異なります。
ステーブルコインは価格変動がほとんどなく、安定した資産の維持や送金、決済などに使われるのに対し、一般的な仮想通貨は価格変動が大きく、投資・投機的な側面が強い点が大きな違いです。
■JPYCの概要
JPYCはブロックチェーン上で流通する暗号資産の一種であり、銀行を介さずに24時間365日スピーディーな取引が可能です。また、ブロックチェーン技術の性質上、透明性・信頼性が高く、堅牢なセキュリティのもとで記録や管理が行われます。
2025年8月には、資金決済法に基づく資金移動業者としての登録を済ませており、電子決済手段として発行する準備も整っています。
■JPYC株式会社の企業情報
| 会社名 | JPYC株式会社 |
| 設立 | 2019年11月 |
| 代表者 | 岡部典孝 |
| 所在地 | 東京都千代田区大手町1丁目6-1 大手町ビル4階 |
| 資本金 | 100,000,000円 |
JPYC株式会社は2019年に設立されたスタートアップ企業です。JPYCを含む電子決済手段の発行や、ブロックチェーン関わるコンサルティング事業も行っています。
2025年10月時点では未上場ですが、JPYC株式会社代表 岡部氏によれば2027年春には東証グロース市場上場を目指すと明言されています。
JPYCの3つの特徴
JPYCの主な特徴は次の3つです。
1.前払式支払手段型の採用
2.電子決済手段として利用できる
3.ブロックチェーン上での発行・流通
■前払式支払手段型の採用
「前払式支払手段」とは、お金を預かる代わりに一定の価値を発行する仕組みのことです。交通系ICカードやギフト券などが該当します。
発行当初のJPYCは前払式支払手段として認可を受けており、投資に利用する暗号資産というよりも、決済手段として位置づけられていました。
原則として円への払い戻しができない特徴がありましたが、次に紹介する新たな決済手段としての認可を受けたことで、円への払い戻しも可能となっています。
■電子決済手段として利用できる
JPYCは2025年8月に電子決済手段として金融庁の認可を受け、新型JPYCとしてグレードアップ。事前にお金を預けずともリアルタイムで決済したり資金移動したりできるほか、いつでもJPYCから円への償還が可能です。
また、発行者は法に基づいて厳格な資産の保全と開示が求められるため、信頼性・透明性の高さも新たな魅力と言えるでしょう。
■ブロックチェーン上での発行・流通
ブロックチェーンは、銀行のように中央管理者が取引を記録するのではなく、世界中のコンピューターで同じ取引記録を共有・管理するデータベースです。
あらゆるコンピューターが同じ記録を保有しているため、改ざんがほぼ不可能であり、透明性の高い取引を維持できるほか、NFTの購入や国境を越えた送金なども自由に行えます。
JPYCはブロックチェーン上で発行・流通するため、電子マネーとしてだけではなく、投資や送金など幅広い使い方ができることも特徴です。
JPYCのメリット・デメリット
ここまでの解説でJPYCのメリットはなんとなく想像できるのではないでしょうか。ここでは、メリットとあわせてデメリットにも注目してみましょう。
■JPYCのメリット
JPYCのメリットをまとめると以下の通りです。
●24時間365日取引が可能
●価格変動がほとんどない
●ブロックチェーン上での発行・流通で透明性が高い
●送金・決済コストが低い
●日本円の価値を保ったままDeFi(分散型金融)やNFTなどのサービスへスムーズにアクセスできる
JPYCは日本円のようでありながら、オンライン上でスピーディーかつシームレスにやり取りできる「デジタル版のお金」と言えます。
■JPYCのデメリット
JPYCのデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。まとめると次の通りです。
●デジタル通貨の性質上、高齢者にとっては利用ハードルが高い
●発展途上であるため利用場面が限定的
●ブロックチェーンである以上セキュリティリスクを捨てきれない
データの改ざんがほぼ不可能であるなど、透明性の高い運用が魅力のJPYCですが、ブロックチェーンの性質上どうしてもサイバー攻撃を受けるリスクは捨てきれません。
また、JPYCはまだまだスタートを切ったばかりの通貨であるため、PayPayやSuicaなどの既存の決済サービスに比べて利用できる場面・店舗がかなり限定的な点もデメリットと言えるでしょう。
JPYCの今後の展望は?

JPYCは日本の経済圏に新たな風を吹かせるインフラサービスとして、大きな期待が寄せられています。今後、どのような発展が予想されているのかをチェックしておきましょう。
■クレジットカードへの対応
こちらはすでに対応を実現した内容になりますが、2025年9月、JPYC株式会社は、ナッジ株式会社が提供するクレジットカード「Nudge(ナッジ)」の返済方法としてJPYC払いを導入することを発表しました。
これにより、全国のVISA加盟店にてNudgeカードを利用した際、カード利用額の返済をJPYCで行うことが可能です。
■オンライン決済手段としての活用
新型JPYCは電子決済手段としての認可を受けており、円への払い戻しが可能です。
そのため、今後は新たなオンライン決済手段として、さまざまなECサイトへの幅広い導入が期待できます。メリットの見出しでもお伝えしたように、JPYCは送金・決済コストが安いため、身近なオンライン決済手段として普及する可能性があるでしょう。
■スムーズな個人間送金・海外送金
ブロックチェーンの特徴を活かし、個人間や海外間における送金手段として普及することが期待されます。24時間365日、銀行振り込みなどを利用せずに直接通貨のやり取りできると便利ですよね。
また、従来の海外送金手段では高額な手数料と送金完了までの期間がネックとなっていますが、JPYCの海外送金ができれば手数料を抑えられます。
■報酬・給与の支払い手段としての活用
フリーランスやギグワーカーへの報酬支払い、あるいは新しい給与支払い方法として活用される可能性も高まっています。銀行を経由する必要がなく、企業側の事務負担軽減にもつながるでしょう。
安価な手数料や即時送金といったメリットは、このようなビジネスシーンでも活躍する可能性を秘めています。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/まじめさん







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