ホラーもAI化が進むからこそ実話が貴重に
――ホラーの傾向や今の流行について教えてください。
ショウタさん 今年で言うと『事故物件ゾク 恐い間取り』『近畿地方のある場所について』『きさらぎ駅 Re:』、少し前だと『犬鳴村』など、実話といわれているものがベースにある作品が、大きく盛り上がっている印象があります。
先日実験的に、Googleの動画生成AI「Veo 3」で、ショートホラームービーを自分で作ったのですが、そこまで違和感がない作品ができて驚きました。
AIが進んで、小説も映画も、今後ホラーは現実か作り物かもっと分かりづらく、曖昧になっていきます。だからこそ、誰かが実際に体験したとされる「実話」の価値が、どんどん上がっていき、需要が増えていくのだろうと思っています。
ちなみにYouTubeの運営にAIを使っているので、AIは好きです。最近の使い方としては、取材した怪談を原稿化するのに使用しています。
まず視聴者の方に取材した実話怪談の録音データを、全文AIに文字に起こしてもらいます。それを私が、より分かりやすく、より怖くなるように構成し文章化します。事実と異なることを書いたり、話を盛ったりは絶対にしないようにしています。最後に文法に間違いがないかAIにチェックしてもらい完成です。GeminiとChatGPTを主に使っています。
ごまだんごさん 技術の進歩により、映像が綺麗な作品が多いと思います。僕自身は昔のビデオ画質のような映像の方が怖く感じたので、流行になるかは分かりませんが、そういう昔ながらの画質でホラーをもっと観たいかなぁと思います。
ホラーは背筋が凍るけど、脳は気持ち良くなっている
――そもそも、ホラーの一番の魅力って何ですか?
ごまだんごさん 怖いだけじゃなく、奥深さがある点です。幽霊も、元は僕らと同じ人間でした。なので怖い幽霊も居れば、優しい幽霊も居ます。性格もストーリーも様々で、触れれば触れるほど、1人のドキュメンタリーを観ている気持ちになります。そういった人間模様を観れるのが、魅力的だと思います。
ショウタさん 昔から、ホラーでしか得られない快楽物質が脳に出ていると思っています。フィンランドの研究で、「恐怖の処理に関係する脳の部位と、快感の処理に関係する脳の部位は、かなり重複している」とありましたが、体験や実感からも、「あぁやっぱり!!」と思いました。喜怒哀楽からくる感情にはない、「背筋が凍るけど、脳は気持ち良くなっている」という、不思議な魅力がホラーにはあります。自分にとってホラーは、お酒などの嗜好品と同じようなものです。
――ホラーのプロから、ホラーをもっと楽しむポイントを教えてください。
ごまだんごさん
1.想像を膨らませること。
体験者様から聞かせていただいた中に、「トンネルで礼をしながら近づいてくる幽霊をみた」という話がありました。一見そのシーンだけを切り取れば、ただただ怖いと思いますが、実はその幽霊は体験者様の結婚相手の祖父で、結婚の挨拶で彼の実家に向かう途中の出来事でした。祖父はもしかすると、あの世から彼女に挨拶に来たのかも?というお話なのですが、これも怪談の面白い点だと思います。「幽霊が出た→怖い」で終わるのは勿体無くて、何故幽霊が出たのかを想像を膨らませ考えることで、もっと楽しめるでしょう。
トンネルの幽霊では、なぜ幽霊が出てきたのかが分かりましたが、そういうお話ばかりではありません。実話ではオチが存在しないものもあります。だから、そのオチを考えるのも、また面白いと思います。
2.自身を話の中に入れてみる
僕自身がそうなんですが、ただ読んだり観たりするだけでは勿体無いと思います。「うお!」とか、「やば~」とか、話を読ませていただきながら物語の主人公目線になって、一喜一憂するのですが、その方が何気なく視聴するより楽しいです(笑)。
感覚的な話になっちゃいますが、第三者目線ではなく、自分だったらこうするかな?こう解釈するかな?と自分事として考えると、よりお話の世界に没入できますよ。
3.否定的にならない
僕が昔、そうでした。すぐに否定的に物事を見てしまって、その結果、全てがつまらなくなってしまったのです。なので、まず受け止めてから考えたら、全部が楽しくなりました。
ホラーやオカルトの世界には、正直なところ、嘘が混じっている事もしばしばあります。なぜなら幽霊やオカルトには、正解が無いからです。科学的な根拠がありません。つまりは嘘をつきやすいジャンルなのです。
しかし、それを基本と捉え、最初から否定していても、本物は見つかりません。本当の事を探すには、まず一度受け止めてからを心掛けると、色んな世界が見えてきます。そこに「楽しさ」があるのだと、数年前に気がつきました。
ホラーを楽しむコツは全力で信じること
ショウタさん
1.まずは全て信じる。
実話怪談に限ってのことですが、はなから疑ってかかると何も生まれません。まずは全力で信じて、楽しむ気持ちが大事です。そのあと疑わしい箇所が出てきたら、初めて疑問に思えば良いと思います。
2.自分の生活と重ねてみる。
怪談の多くは、自分の生活にも当てはまるシチュエーションで起きた出来事です。部屋・エレベーター・学校などなど、身近な場所であり、他人事ではなく、自分ごとだと思って考えると、より恐怖を味わえると思います。
3.人に話してみる
怖い話を仕入れて、それを誰かに話して、恐怖を共有するのはとても楽しいです。最近ハマっているのは、妻と夕飯を食べるとき、事前に怖い話と言わずに、勝手に怖い話を始めて、怖がってもらうというものです。
怖い話と言わずに始めると、ハードルが下がり切った状態で聞いてくれるので、怒られますが結構盛り上がります。あと人に話すと、自分にはなかった考えを聞けることもあり「それって実はこういうことだったんじゃ……」と新たな恐怖が発見されることもあり、それもまた楽しいです。
ホラーを介すると絆が深まる
――ホラーに対する造詣の深さを感じました!ホラーがコミュニケーションの役に立ったことはありますか?
ごまだんごさん 考えに考えたのですが、浮かびませんでした!すみません(笑)。普段全くホラーについて語ったりしないので、僕がこういう活動をしてると知っている友達も2人しか居ません。ホラーが好きで大切だからこそ、安易に色々話したく無いなと思っちゃってるのかもしれません。
ショウタさん 少し質問の意図とはズレてしまうと思いますが、ホラーが好きじゃなかったら絶対に出会えない人たちと友達になれたことが良かったです。
私たちは毎年、岩手県の大船渡で開かれている怪談イベントに出演しています。その主催の方が、ある年に突然DMで出演のオファーをしてきてくださり、最初は訳が分からなかったのですが、面白そうなので行ってみたら友達になり、それから毎年会っています。
ホラーを通して、SNSでコミュニケーションを取り、仲良くなれたので良かったです。
――最後に、ビジネスパーソンにおすすめの作品をご紹介ください。
ごまだんごさん まずは「眞霊」をオススメします。日常に溶け込んだリアルな物語が、貴方をお待ちしています。
また、最近改めて読んで凄いなぁと思ったんですが、僕がイチオシする作品はスラムダンクです。様々な人間模様があり、読んでいて一緒に成長した気持ちになりました。この2点をあげさせていただきます!
ショウタさん 手塚治虫の「ブッダ」「ブラック・ジャック」です。有名すぎて恐縮ですが、古い本なので読んでない方もいると思い挙げさせていただきます。どちらの漫画にも共通して描かれているのは、「すべての命は平等に扱われる権利がある」ということです。
お金持ちも貧乏人も、猫も虫も、みんな同じ。もしかしたら自分の来世は虫かもしれない。だったら今回たまたま人間に生まれた自分が偉そうにするのはどうなの?……みたいなことを考えさせられました。
今思うと、自分が会社員として働いていた時は、これを仕事に置き換えて働いていたように感じます。後輩が上司になることもあるかもしれないし、駅の自動改札にひっかかっていたおじさんが、就職したい会社の面接官かもしれないし……。
だれがいつどこで関わるか分からないのだから、その時の立場や肩書きで人を判断しないようにしていました。結果として楽しく働けていたと思います。
あとは「星新一」のショートショートシリーズです。これも因果応報、やったことは自分に返ってくる話が多いので考えさせられます。悪い行いもそうですが、良い行いも自分に返ってくるので、仕事をする上で誰かを助けることは、自分のためにもなってるんだな、と思える話が多いです。あと単純にSFとして、ずば抜けて話が面白いのでおすすめです。
――ありがとうございました。
ごまだんごさん
ショウタさん
登録者数51万人超え(2025年10月時点)の「ごまだんごの怪奇なチャンネル」を運営する兄弟。自サイトに投稿された体験談や実際にインタビューした怪談、世界の怖いニュースを動画で紹介している。日本各地の恐怖体験者を訪ねて怪談を蒐集したり、怪談の朗読イベントに参加したりと、意欲的に活動している。SNS総フォロワーは88万人超え。
YouTube「ごまだんごの怪奇なチャンネル」
実話怪談コミック「眞霊 ほんとに沼る実話怪談」
文/柿川鮎子
筆と墨で妖怪を描く〝妖怪書家〟逢香さんが語る、止まらない妖怪愛
古くから、日本の庶民文化として受容されてきた「妖怪」。 いまや、コミックやアニメが牽引役となって姿形を装い改め、お茶の間でも馴染み深い存在となっている。 他方、…







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