ジラール・ペルゴから、改良された巻き上げ機構を組み込んだ新キャリバー「GP4800」が登場したので、詳細をお伝えしよう。
1791年から続く、ムーブメントの芸術
ジラール・ペルゴにとって、ムーブメントの製造は単なる機械工学を超えた、哲学、デザイン、伝統の融合だ。1791年の創業以来、ムーブメントの考案から開発、製造までをすべて自社で行うことができる稀な能力を育んできた。
今では「統合型マニュファクチュール」として知られるビジョンを描き、キャリバー GP4800の発売でそれを不朽のものとした。
時を経ても、ジラール・ペルゴは決して技術革新の追求を止めることはなく、1965年には初めての高振動ムーブメントを発表している。
毎時 36,000回の振動数で、精度と信頼性が飛躍的な進歩を遂げた、機械工学におけるジラール・ペルゴの卓越性を完璧に具現化した画期的なムーブメントであった。
この業績は、1966年のヌーシャテル天文台100 周年に際して授与された特別な賞で公式に認められることに。これは、ジラール・ペルゴがクロノメーター精度の向上に果たした多大な貢献が評価されてのことであった。
最近でも2013年、柔軟性の高いシリコン製ブレードを採用したコンスタント エスケープメントL.M. を発表。これは、この年にジュネーブ時計グランプリの権威ある「金の針」賞を獲得している。
ジラール・ペルゴは、ケースの小型化への需要の高まりを受けて、コンパクトなムーブメントの製造に乗り出した。
キャリバーGP4800 は、現在だけでなく未来のユーザーの期待にも応えられるように設計され、ジラール・ペルゴの数々の高度な技術を酷使して開発された。
キャリバー GP4800は直径 25.60 mm(111/2’’’)、厚さ 4.28 mm。この設計により、将来的に基本のムーブメメントと追加の複雑機構を組み合わせることも可能。
これほどコンパクトでありながら、キャリバー GP4800には、精度、信頼性、美しさを兼ね備え、洗練された多くの技術が集積されている。
GP4800には優れた可変慣性テンプが採用された。ほとんどの時計では、歩度調整「ラケット(raquette)」を用いるがこの装置は、ヒゲゼンマイの有効長を調整して時計を早めたり遅くしたりすることが可能だ。
新しい可変慣性テンプでは、この有効長を固定し、テン輪の縁に取り付けられた4個のホワイトゴールド製のねじを調整することで歩度をより確実かつ正確に設定でき、香箱に収められた主ゼンマイは大きなトルクを供給する。
8mg/cmのテン輪の慣性モーメントは 、可変慣性テンプとともに時計に加わる衝撃を軽減。また、より大きなトルクをより安定して伝達できるため、精度も向上している。これらの改良点が相まって、GP4800は約55時間の長大なパワーリザーブを実現。
この自律性のレベルは大きな改良点であり、技術の進歩およびユーザーにとっての利便性の両方へのジラール・ペルゴの取り組み姿勢が反映された。香箱から調速機まで、ムーブメントのすべての部品は最大限の性能を引き出すために最適化されている。
クラフツマンシップの証、改良された巻き上げ機構に宿る調和の取れた仕上げ
キャリバーGP4800には改良された巻き上げ機構が組み込まれ、ローターはボールベアリングに取り付けられている。
ボールベアリングのボールはセラミック製で、巻き上げ時のノイズや衝撃を軽減して長期的な耐久性を確保するショックアブソーバー システムが備わっている。
ローターの動きは玉軸受のクラッチシステムに伝達され、主ゼンマイが収まった香箱を一方向に巻き上げる。
ムーブメントのデザインは、現代的でありなが、ジラール・ペルゴの豊かな歴史にインスパイアされたさまざまなディテールを取り入れた。
スケルトン加工が施された 18K ゴールド製ローターの下には、時計製造におけるブランド最古の象徴のひとつである 1867年に製造された懐中時計から着想を得た3本のブリッジ(受け板)を配している。
テンプ受、輪列受、香箱受からなる金属板は、機能だけでなく美しさも兼ね備えている。左右対称がこのムーブメント製造の基本理念で、これはコンスタン・ジラールが大切にしていた原則でもあった。
スケルトン加工が施されたテンプ受は、2点で固定されているため、安定感が増している。また、透かし彫りデザインにより、テンプが回転し伸縮するヒゲゼンマイやシリコン製エスケープメントの動作も眺めることが可能。
ジラール・ペルゴはキャリバー GP4800に施された 10種類もの仕上げを通して、改めて卓越性への揺るぎない取り組みを示した。そのクラフツマンシップは、目に見えるものばかりではなく、隠れたものもある。
細部にまで細心の注意を払うこの手法は、伝統的なオート・オルロジュリーへの深い敬意の表れであると同時に、現代的な美しさももたらす。
ロジウムプレートのブリッジには、鷲の紋章を含むゴールドのエングレービングが施されている。また、直線状のコート・ド・ジュネーブ装飾、ダイヤモンドカットの面取エッジ加工、鏡面仕上げのネジヤマも見事。
地板の見える部分は洗練されたサンドブラスト仕上げで、テンプ上に「SILICIUM ESCAPEMENT」の文字が刻まれている。
地板の下側にもペルラージュ装飾が施されており、表からは見えない隠れた部分も疎かにすることなくディテールまで大切にする姿勢が窺われる。
ローターには、1867年のオリジナルのブリッジに敬意を表したポリッシュ仕上げのアロー モチーフが配され、サンドブラスト仕上げ、スネイル仕上げ、直線状の装飾の組み合わせがサイドを優雅に引き立てる。
サンレイ仕上げのボールベアリングのクラッチ、スネイル仕上げの香箱、サーキュラーサテン仕上げのホイールといった部品も技術革新と伝統の融合をいっそう強調する。
キャリバー GP4800 は、このような伝統とモダンな装飾技術の調和の取れた組み合わせにより、単なる機械工学の産物を超え、ブランドのDNAの視覚的かつ感情的な表現となっている。
ジラール・ペルゴは、熟練の時計技師と装飾師の知識を結集することで、最上級の美しさ、精度、信頼性、長寿命を兼ね備えたキャリバーを製造してきた。
高度な専門技術は、ジラール・ペルゴの伝統と先進的な精神を反映した新世代のムーブメントである最新のキャリバー GP4800に凝縮され、今後もいくつもの魅力的な新作を生み出す原動力となるだろう。
関連情報
https://www.girard-perregaux.com/jp_jp
構成/Ara







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