
■連載/阿部純子のトレンド探検隊
2013年発売以来、11年連続でトクホ茶市場売上ナンバー1の「特茶」 ブランドから、初の水カテゴリー商品となる機能性表示食品「特水(とくすい)」(600ml・税抜150円)が、10月21日から新発売される。
体脂肪を減らすのを助ける「特茶」ブランドでなぜ水の開発をしたのか?
機能性表示食品「特水」には、ほぼ無味無臭・無色である植物由来のポリフェノール「HMPA」含まれており、HMPAは、BMIが高めの人のお腹の脂肪(内臓脂肪)を減らすのを助ける機能が報告されている。
「特茶」ブランドでありながら、お茶ではなく水カテゴリーの商品として開発された背景について、サントリー食品インターナショナル株式会社 SBFジャパン ブランド開発事業部 課長 野口裕貴氏はこう話す。
「昨今、特に若い方々を中心に水を飲むことが習慣として浸透しており、2018年と比べると、ミネラルウォーターの市場は約1.6倍の規模にまで成長を続けています。飲用理由として、無味無臭で嗜好や場面を選ばず飲むことができること、また、近年では健康目的で飲む方も増えています。
中でも効能感のある水に対するニーズの高まりには目を見張るものがあり、シリカ水、水素水、温泉水といった商品群の販売数量は2020年頃と比べて約3倍以上に急成長を遂げています。とはいえ、その市場規模自体はミネラルウォーター市場全体の1%にも満たないのが実情です。
このような商品群も、一定の効能感の理解は消費者の間でもされておりますが、『どうせ飲むのであれば明確に機能を謳っている商品を買いたい』というお声が多く存在することがわかりました」(以下「」内、野口氏)
効能感のある水の開発にあたり、現代人の健康課題のひとつである「内臓脂肪リスク」に着目。現代人はデスクワークの増加などによる活動量の低下や、不規則な食生活や栄養バランスの乱れなどによって、中高年のみならず内蔵脂肪へのリスクを多く抱えているといわれ、内蔵脂肪のひとつの指標である腹囲が基準値を超えている人の割合は女性で約2割、男性では約6割にも上る。
内蔵脂肪は放っておくと生活習慣病につながるリスクもあることから、生活習慣の見直しなど、日常生活の中で無理なく続けられる対策が必要な健康領域とされている。
「水を健康のために飲む方がこれだけ増えて、ミネラルウォーターの市場は無糖茶に匹敵するほどの規模にまで成長しているにもかかわらず、無糖茶においては、約2割が既にトクホ・機能性表示食品があるのに対して、明確に機能を謳っている機能性表示食品に該当する水商品はほぼゼロでした。
そんな現状を踏まえ、現代人の方々が抱える課題に合わせた、明確な健康価値を持ち、かつ日常の中であらゆるシーンに取り入れやすい水というカテゴリーで商品を展開することで、これまでの無糖茶では取り切れなかったニーズに、チャンスがあるのではないかと考えました」
「特水」開発にあたって障壁となったのが素材。明確な機能を訴求するための機能性関与成分は大抵のものに味や色があり、実際に過去の機能性ウォーターには液体に色がついていたり、あえて少し味を付けざるを得なかった。
しかし、水は無味無臭だからこそ日常に入り込むことができると、「特水」の開発においては無味無臭であることに強くこだわった。
また、消費者には水は自然のものでありピュアであるべきだというイメージが根強いことから、水への添加感は出さずに、機能の付いた飲料であることを瞬間的に理解してもらう、相反するこの2つをいかに両立することができるのかというのも、開発中の大きな壁になったという。
約50種類もの機能性素材を探索する中で、ほぼ無味無臭、無色の素材・HMPA(正式名称:3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸)を見出した。
さらに、「水に添加」ではなく、体脂肪対策飲料としての認知を得ている「特茶」の水バージョンとして理解の転換を行うことで、2つの課題をクリアした。
米ぬか発酵物が原材料の植物由来ポリフェノール・HMPAを、サントリーとして初めて機能性関与成分に採用。この成分はほぼ無味無臭、無色であること、内臓脂肪を減らすのを助けるという機能を両立できることが大きな特徴となっている。
製品ではなく機能性関与成分のHMPAにおいて機能性を担保していることから、通常のミネラルウォーター同様に、冷やしても常温でも飲めるが、温めた場合の機能性については確認していないとのこと。通常の水と同じように飲む時間は問わない。
「特茶」ブランドは、40~50代の男性層を中心に通勤時やオフィスでの購入が中心だったが、「特水」は水カテゴリー特性もあり、若年層や女性層にターゲットユーザーに見据え、軽い運動時や就寝前といった、緑茶を中心とした無糖茶では摂れなかったシーンにも利用されるとみている。
【AJの読み】HMPAを水で摂取できるので日常に取り入れやすい
HMPAは米ぬかを特別な乳酸菌で発酵させたものに含まれる機能性関与成分で、数年前からサプリメント、飲料、食品などは発売されているが、水にHMPAを使ったのはサントリーが初となる。
野口氏が話していたように、無味無臭の水に加えるということがやはり最大の難関だったようだ。冷えた状態の「特水」で試飲したが、確かに無味無臭ではあるが、飲んだあとに鼻腔を抜けるかすかな香りを感じる。常温で飲むとよりその香りが感じられた。この香りは米ぬか発酵物由来のものとのこと。
筆者もBMIが高く、現在通院して栄養指導を受けているため、HMPAには関心を寄せていた。普段から水は1日1リットル以上飲むので、サプリメントに比べると日常に取り入れやすいのは確か。いつも飲んでいるミネラルウォーターを「特水」に置き換えて試してみたいと思う。
取材・文/阿部純子