
スターバックスが紅茶専門店「STARBUCKS Tea & Café」を続々とオープンし、タリーズも「TULLY’S COFFEE&TEA」を展開するなど、ここ数年、カフェ業界では“紅茶”に力を入れる動きが目立つ。「カフェ=コーヒー」というイメージは変わりつつあり、その背景には若年層の紅茶志向の高まりがあった。本記事ではそんな紅茶ブームの実態に迫ってみたい。
令和の紅茶ブーム
日経MJ(8月9日)によると、2024年の紅茶市場規模は過去最高を記録した。背景には、コーヒーの苦みを避ける若者世代を中心に紅茶へのシフトが進んでいること、そして大手コンビニエンスストアやコーヒーチェーンが積極的に紅茶市場へ参入したことがあるとされる。
実際、セブン-イレブンは専用マシンで淹れたての紅茶を提供する『セブンカフェ ティー』を、2026年2月までに全国約2000店に順次拡大する予定。ローソンもマチカフェから初めての紅茶メニュー「アイスアールグレイティー」を発売し、従来のコーヒー中心のラインナップに新たな選択肢を加えた。少しずつ私たちの日常に“紅茶”が浸透しはじめていることが見て取れる。
紅茶ブームの火付け役「ゴンチャ」

昨今の紅茶ブームを牽引している若者世代に、特に人気を集めているのが「ゴンチャ」だ。ゴンチャといえば、2018年ごろに全国的なタピオカブームを巻き起こし、その先駆者として確固たる地位を築いたカフェチェーンである。その後、タピオカブームの終息やコロナ禍による影響で一時的に売上を落としたものの、現在は店舗数・客数ともに過去最高を記録している。2024年時点では、全国で176店舗を展開し、年間客数は2128万人に達した。
再び勢いを取り戻した背景には、タピオカ屋から紅茶専門店への大胆なシフトがある。具体的には、コーヒーをメニューから排除し、紅茶メニューにフォーカスしたこと、そして茶葉や抽出技術にこだわることで品質を向上させたことが挙げられる。ベースとなる5種類のストレートティーは、それぞれ最適な湯温と抽出時間で淹れ、本来の美味しさを最大限に引き出すよう計算されている。さらに、学割の導入や店内でのおしゃべり歓迎など、学生を主要なファン層に据えた独自のスタイルは、他のカフェチェーンとの差別化にもつながっている。
紅茶と若年層の親和性
株式会社ゴンチャジャパンの調査によると、「お茶しよ?」という誘いに対して思い浮かべる飲み物は、全体では約7割(68.9%)が「コーヒー」であるのに対し、「お茶」を挙げた人は約3割(30.4%)にとどまった。しかし、年代別に見ると傾向は異なる。40代では82.7%が「コーヒー」を想起したのに対し、29歳以下では53.8%にとどまり、若い世代ほど「お茶」を連想する割合が高いという。
さらに、マーケティング・リサーチ会社クロス・マーケティングの調査では、「コーヒーが好きではない」と答えた20代が36.8%で、前年より6.3ポイント増加していた。
こうしたデータから、若年層の嗜好がコーヒーから紅茶へと移りつつあることが見て取れる。専門家はその背景として、茶葉の種類の多さや甘さ・トッピングなどのカスタマイズのしやすさ、飲む場面やスタイルが固定されていないため柔軟に楽しめる点などを指摘している。いずれにせよ、若者が紅茶への関心が高くなっているのは事実だ。この紅茶ブームは単なる一過性のトレンドにとどまらず、これからのカフェ文化を変えていくのかもしれない。
文/宮沢敬太