 
						ビューティーディレクター MICHIRUさんとおくる、連載「Wellbeing beauty by MICHIRU」。連載第6回は会員制オンラインスーパーマーケット「Table to Farm(テーブルトゥファーム)」。ディレクター・発起人 の相馬夕輝さんに、食の世界の課題と新しい取り組みについて伺った。
美味しいものが減っている!会員制オンラインスーパー「Table to Farm」が挑むウェルビーイングな食卓の提案
ビューティーディレクター MICHIRUさんとおくる、連載「Wellbeing beauty by MICHIRU」。 連載第6回はビューティーの世界を飛び出し…
中編では、Table to Farmのもの選びのプロセスと、届け方を中心に話しを伺っていく。
理屈を超える美味しさに出会うまで
MICHIRUさん(以下、MICHIRU):食事会でいただいたものは、知らなかったものがほとんどでした。鯖の灰干しのふわふわ感や、上品な薄口醤油、香り高い臼引きの朝倉粉山椒……。どうやってあんなに美味しい「素の味」を見つけてきているんですか?
相馬さん(以下、相馬):探すカテゴリーを決めたら、まずはとにかく全国から集めて食べてみます。1つの食材で、2週間~3週間に1回くらいの頻度で何度も試食会を繰り返し、4ヵ月程度かけて決めていっています。その上で、必ず取り扱い前に生産者さんのところに伺います。干物なら、下処理、塩の当て方、干し方……それら製造工程を学びながら、美味しい理由を探っていきます。何度も食べ比べて心底自分たちが美味しいと思っていますから、いつも3時間くらいは聞き込んでいることが多いです。
MICHIRU:選ぶまでに「11ヶ月」かかると伺ってどういうことかと思っていたのですが、試食会を何度も繰り返しているとは。相馬さんたちの舌で厳選したものが並んでいるのですね。
相馬:米や味噌は日本中にあるので、初めはどうしようと思うくらいの数の食べ比べでした。面白いもので1回目の食事会では意見が散るんですが、2回目くらいから少しずつ揃い始めるんですよね。そして最後になると、「これしかない!」と全員一致になることがほとんど。
相馬:たとえば「亀の尾」という自然栽培で育てられている在来米は、私たちが一番初めに選んだ商品です。初めは食べ慣れた品種の米を美味しいと感じていましたが、「亀の尾」に出会ったら、なんだか美味しさの種類が違うように思えて、まるで身体が喜ぶような美味しさで、もう仕方なくなってしまった。そんなふうに自分たちの五感で選んだものを並べています。
MICHIRU:理屈を超えて、誰もが美味しく感じるもの。それを見つけてこられているんですね。
相馬:そうやって選んでも、すぐに取り扱いができるわけではありません。少ない人数で生産・製造しているところも多いので、取り引きが難しいと難色を示されることもあります。また繁忙期と重なって交渉を待たなければならなかったり、取り引きが決まっても旬を待たないといけない場合もあります。Table to Farmに商品が並ぶまで作り手に無理強いをせず、対話を重ねていくことを大切にしています。
3つの「素の味」が教えてくれる食の物差し
MICHIRU:米や調味料、野菜などカテゴリーごとに取り扱う商品を3つまでと決めているんですよね。それはどんな狙いがあるのですか?
相馬:情報もですが、物が多すぎても選ぶのが難しいですよね。選べる範囲の数で、また3種類なら家に揃っていても良いかなと考えて3つとしました。3つの「素の味」を一つの食品を知る入り口にしていただいて、いろいろなものを選んでいってもらえたら良いなと思っています。
MICHIRU:Table to Farmさんが選んだ味を知ることで、自分の中に美味しさの基準ができていきそうです。
相馬:そうなっていただけたら嬉しいです。納得しきったものだけにしたいので、まだ3つが揃っていないカテゴリーもあります。これからまた出会う可能性がある枠として、無理に揃えたりもしていません。
MICHIRU:どんな出会いがあるのか。そのために「素の味に出会う旅」を続けているのですね。
物語を通して価格の裏側を丁寧に届ける
MICHIRU:商品の説明ページや記事ページで、生産者さんや生産方法の紹介をとても丁寧に書いていますよね。それを読んで、作り手のことや生産方法のことを私たちは知る機会がとても少ないことに、改めて気づきました。
相馬:私たちは新しいオンラインショップなので、実店舗がある場合と比べて生産者の方たちに信頼していただきにくいというのがはじめの理由ではありました。商品ページや記事を掘り下げて書いて、“伝えていく意志”を示していく必要があったのです。とはいえ記事を書いているときは、いつも生産者へのラブレターを書いているような気持ちでしたね。
MICHIRU:あのドラマチックな記事から、相馬さんの想いがとても伝わってきます。
相馬:そもそも本来、流通の間に立つ人たちが“伝える仕事”をするべきだったんです。それをあまりやらなくなってしまって、「とりあえず生産者を呼んでイベントをしよう」などになってしまっている。でもそのためには作業の手を2、3日止めてもらうことになりますし、生産量や質の低下につながる場合だってあるのを忘れてはいけないと思います。
MICHIRU:伝えてもらうことで、どうしてこの価格なのか、どうしてそんなに丁寧に作らないといけないのかもわかって、購入に納得感も生まれました。
相馬:今はスーパーに並んでいる価格が基準になっていますが、かけている時間や美味しさを比較すると、うちに並んでいる商品の価格は妥当なんですよね。読んでいただくことで、その考え方をベースに世の中の事象なども見てもらえるようになったら。そういうきっかけになるようなものを残していきたいなとは思っています。
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次回、後編ではTable to Farmが取り組む生産者と消費者をつなぐ新しいプロジェクトについて聞く。
相馬夕輝(あいまゆうき)
郷土料理や食文化をフィールドワークとして学び体験してきた経験を活かし、新たなフードシステムを構築することを目指して「Table to Farm」のプロジェクトを始動。ブランドディレクション、商品選定、ウェブメディアや食事会など、日本各地の生産者をめぐる。またD&DEPARTMENT PROJECT飲食部門「つづくをたべる部」ディレクターとして、その土地の食材や食文化を活かしたメニュー開発や、イベント企画なども手がける。
MICHIRU(みちる)
メイクアップアーティスト・ビューティーディレクター/渡仏、渡米を経て、国内外のファッション誌や広告、ファッションショーやメイクアイテムのディレクション、女優やアーティストのメイクなどを数多く手がける。また体の内側からきれいになれるインナービューティーを提唱するなど幅広く活躍中。本連載ではナビゲーターを務める。
取材・構成/福田真木子
写真/黒石あみ
 
						








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