
犬用冷凍ペットフードはここ1~2年で急激に市場を拡大してきた。ココグルメの宅配型冷凍フードサービス、PETOKOTO(ペトコト)の冷凍フレッシュドックフードや、いなばペットフードの「今日はこだわりごはん」シリーズなどが進出する中、マース ジャパン リミテッド(東京都港区、後藤真一社長)が今秋から「ニュートロ フローズン 日本の恵み」を新発売する。
米国のグローバル企業が、日本の食材を使い、日本で作った冷凍タイプのドッグフードで市場に参入した。冷凍ドックフード市場の競争が、激化している。
ブームの背景にある安全と美味しさの追及
ドッグフードは飼い主のニーズや技術の進歩とともに、進化してきた。最初に受け入れられたのが年代別フードで、幼年期、成長期、老齢期など年齢に伴って必要となる栄養素が加わった。また、アレルギー対策や被毛に効果があるなど、特定のヘルスケアに役立つ機能性フードも定着した。ペットが罹患しやすい病気を予防したり、食事療法に特化した療法食も一般的となり、フードに対する意識と関心は高まっている。
SNSなどでフードに関する口コミが広がり、手作り食や、肉を加熱しないBARF(生食)に注目が集まったこともある。
こうしたドックフードの変遷の背景にあるのは、愛犬が健康で幸せに暮らして欲しいと願う、飼い主さんの愛情である。家族の一員として存在感を増すペットだからこそ、フードに対する期待は大きい。
特に今、フードに求められる要素は安全性と美味しさである。家族の一員である愛犬にとっては、保存料や食品添加物が含まれないフードへの関心は高い。さらに美味しく食べてもらいたいというニーズもある。冷凍フードはそうした飼い主さんの期待を受けて、新製品が続々と登場し、市場が拡大している。
グローバル企業のマースが日本で作るこだわりフード
冷凍フードに注目が集まる中、マース ジャパン リミテッドが今秋から「ニュートロ フローズン 日本の恵み(注1)」を全国のペット専門店やニュートロのホームページにて新発売する。国産の自然素材(注2)を使って、製造直後に冷凍することで、素材本来の香りや食感、栄養や美味しさを閉じ込めた、総合栄養食(注5)の基準を満たした冷凍ドックフードである。新製品は「海 真鯛(注3)」、「大地 はかた地どり(注4)」「山 鹿肉」の3種類のラインナップで、主食として単体で利用するだけでなく、ドライフードのトッピングとしても利用できる。
ペットケアマーケティング ニュートロ マーケティング マネジャー石渡茂樹さんによると、今回の冷凍フードは日本限定発売で、原料から製造まで国産の原材料にこだわり、構想から発売まで5年間を費やしたと言う。
「ニュートロは2026年に100周年を迎え、これまでずっと厳選した自然素材にこだわって愛犬・猫の幸せを第一に展開してきました。『いっしょに、めいっぱい、生きていこう』、というメッセージに則って、今回の冷凍食品を開発しました。冷凍・冷蔵のペットフードの市場は米国では急成長分野で、冷凍冷蔵フードは一般的な選択肢のひとつになっています。
冷凍フードは作り立ての状態に近いおいしさと香りを実現し、愛犬の食欲をそそるのが良い点としてあげられます。日本でも冷凍ペットフードには大きなポテンシャルがあると考えています。その理由のひとつは、犬がただのペットではなく、家族という認識が、日本では高いからです。家族である愛犬の食事に求めているものは、安心できる品質、美味しくて喜んで食べてもらえる食品なのです」と石渡さんは語っている。

犬の食欲は香りから
冷凍フードの良さは温めた時に、新鮮な香りが立つ点にある。研究者により諸説あるが犬は人間の数千倍から一億倍もの嗅覚をもち、ニオイで食べ物を判断すると言われている。美味しい食べ物かどうかの判断が香りにあるため、温め直した時の香りは愛犬の食欲を引き出し、食いつきの良さにつながる。
「ニュートロは、自然素材を使った食事で健康とおいしさを追求してきました。今回の国産の原材料は、香りをどう引き立たせるかに注力しました」と、石渡さんは言う。
食いつきの良さを実現させるため、香りだけでなく食材の大きさや食感などにもこだわり、試食を重ねた。食べた後の排泄物の調査も実施している。
さらに実際に製造を担当した製品開発・協力工場品質保証マネジャー秋元剛さんは、安全性評価を作成するため、40品ちかくの国産の原材料について、検証を重ねたと言う。「初めて国産の原材料を メインに使用する上で、徹底した安全性確認を行っています」(秋元さん)。
「衛生面など生産管理は人の食品レベルで、原料の品質にもこだわりました。持続可能な漁場で獲られた水産物に付与される国際的な認証制度のMSC認証を取得しているスケソウダラを利用するなど、環境への配慮も怠っていません」と製造面でも細かく配慮していた。
こうした背景もあり、新製品は飼い主さんからの評価は高く、特に食いつきの良さには多くの飼い主さんが実感していると言う。
激化する冷凍フード市場の今後
酸化防止剤や保存料を入れずに冷凍で流通できる冷凍フードは、ドッグフードの主流になる可能性も高い。水分が多いため、カロリーが抑えられる上、高齢犬では水分補給が食餌の課題になるが、冷凍フードはそうした課題もクリアしてくれる。冷凍フードは日本の飼育環境にマッチしたフードの一つだった。
ただし、一定の保存期間を過ぎると冷凍焼けしてしまう点や、いったん開封してしまうと劣化する恐れがあること。さらに、旅行時や震災といった非日常空間で利用しにくいほか、解凍に時間がかかる。また、流通コストが高いため、価格もドライフードに比べると割高になってしまう点も、普及を妨げている一因だろう。
米国では冷凍フードは近年、急成長しており、2019年には約4.4億ドル(日本円で約650億円)、2023年には約5倍の21億ドル(約3200億円)まで延び、2029年には約50億ドル(7400億円規模)に拡大すると見込まれている(出典1)。
日本では正式な数字は明らかになっていないが、国産メーカーの独自調査では冷凍フードの利用率は全体の5%以下と少ない。日本では今後、さらに伸びしろのある分野だけに、競争はますます激化するはず。「ニュートロ フローズン 日本の恵み」の新発売は日本のペットフード市場に大きな影響を与えそうだ。
注1) 国産食材を63~90%以上使用(大地:81%以上、海:63%以上、山:90%以上)
注2) 合成ビタミンなどの添加物を除くすべての原料に化学的合成物を使用しておりません。
注3) 国産真鯛を魚類原材料中37.5%使用、スケソウダラは米国産原料を使用
注4) 鶏肉中15%はかた地どり使用
注5) 総合栄養食とは、ペットフード公正取引協議会が定める愛犬・愛猫の健康維持に必要な栄養素が全てバランスよく設計されたフードです。
出典1
Source: Nielsen FDM + Pet Supers + Neighborhood Pet + ePOS, 52 weeks ending 3/23/24 ; Stackline Pureplay eCom; 52 Weeks ending 3/23/24 vs. YAG; Earnest projected D2C sales, 52 weeks ending 3/23/24 ; excludes all RX items