
2025年10月10日、自民党・梶山弘志国対委員長は立憲民主党・笠浩史国対委員長と国会内で会談を行ない、臨時国会を10月20日に招集、その冒頭に首相指名選挙を行なう日程を示した。
実は10月は26日からマレーシアにて東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議、28日には日米首脳会談を実施する方向で調整が進んでおり、さらに31日から韓国でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議と、重要な外交日程が続く。それだけに、遅くとも24日の金曜日までに新首相、および新内閣を発足させる必要がある。
しかし政局は公明党の連立離脱の影響から、先行きが見えにくい状況となっている。そんな中、三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から、政局と国内金融市場に関する分析リポートが届いたので概要をお伝えする。
公明党の自公連立離脱により、目先は首相指名選挙を控えた各党の多数派工作の動きが焦点
公明党の斉藤鉄夫代表は10月10日、自民党の高市早苗総裁に連立政権から離脱する方針を伝えた。
この結果、高市氏が臨時国会での首相指名選挙において、首相に選出されるかどうかが見通しにくい状況となり、仮に野党が結束して候補を立てれば、高市氏の得票を上回る可能性も出てきた。
そこで、今回のレポートでは、今後の政局の行方と国内金融市場への影響について考えてみたい。
まず、今後の政局について、目先は10月20日か21日の召集が見込まれる臨時国会での首相指名選挙を控え、各党の多数派工作の動きが焦点になると思われる。
首相指名選挙では、衆参両院で投票総数の過半数を得た候補が首相に選出される。1回目の投票で、誰も過半数を得られなければ、上位2人による決選投票となり、より多くの票を得た候補が勝者となる。なお、衆参両院で異なる結果となった場合は、衆議院の結果が優先される。
■野党が統一候補を擁立できなければ自民党の勝利、擁立できれば政権交代となる公算が大きい
衆議院の定数は465議席であり、過半数は233だ。10月8日時点の衆院会派の議席数は、自民党が196、立憲民主党が148、日本維新の会が35、国民民主が27、公明党が24。
野党が統一候補を立てることができなければ、196議席を有する自民党の高市氏が勝利、単独少数与党の政権が発足する公算が大きくなる。一方、立憲民主、維新、国民民主がまとまれば210議席となり、政権交代の可能性が高まる(図表1)。

立憲民主の野田佳彦代表は、首相指名選挙での野党統一候補の擁立に意欲的だが、国民民主の玉木雄一郎代表は、立憲民主とは安全保障やエネルギー政策で考え方に隔たりがあるとして野党協力に慎重な姿勢を示しており、維新の吉村洋文代表も立憲民主と国民民主が本気でまとまるならば真剣に話を聞くとの立場だ(図表2)。ただ、直近では、企業・団体献金の規制強化で、野党がまとまる動きも出てきた。

■勝者が誰であれ、政権に不安定さが残れば市場のボラティリティは上昇しやすく注意が必要

次に国内金融市場への影響を考えたい。高市氏の首相選出が見通しにくくなった現状、先週のような株高、円安、長期・超長期金利の上昇など、いわゆる「高市トレード」は、いったん巻き戻しが予想される。
また、ここにきて米中貿易摩擦が再び激しさを増してきたため、市場のリスクオフ(回避)の度合いが強まる恐れがあるものの、両国が協議の姿勢を維持する限り、リスクオフの反応は一時的なものにとどまることも考えられる。
首相指名選挙で自民党勝利なら、高市トレードの復活も見込まれるが、単独少数与党では安定的な政権運営の成否が焦点となり、先週ほどの勢いはみられないことも想定される。
一方、野党連合が勝利し、より拡張的な財政政策への思惑が強まれば、高市トレードを超える動きが予想できるが、政権自体の持続可能性がポイントになってくる。いずれにせよ、政権に不安定さが残れば、市場のボラティリティ(変動率)は上昇しやすく、注意が必要だ。
構成/清水眞希