かつては娯楽の象徴だったゲームも、いまや巨大産業に成長し、文化としての厚みを増している。そんなゲームの多面性を「歴史」「ビジネス」「雑学」という切り口で読み解く3冊を元プロゲーマー・ライターの桑元康平さんが選書。
開発者の視点から業界の変遷を語る岩崎啓眞氏の一冊、世界的クリエイター・桜井政博氏による制作哲学のコラム集、そしてeスポーツの未来を描くカプコンの戦略書。プレイヤーも、ビジネスパーソンも、好奇心旺盛な読者もきっと新しい発見があるはずだ!
「歴史」「ビジネス」「雑学」。ゲームの様々な一面を知る

『本当にためになるゲームの歴史 1本のゲームが億を生む仕組みのすべて』
著/岩崎啓眞 ぱる出版 1760円
ゲーム業界の歴史を扱った書籍はいくつかありますが、「ビジネスモデル」という切り口で振り返った本は珍しいでしょう。著者の岩崎啓眞さんは、80年代から開発現場を知る一方で、書き手としても業界を俯瞰してきた人物。だからこそ、アーケードゲームの隆盛、家庭用ゲームの黄金期、そして現代のダウンロード販売や基本無料プレイへと至る流れが、仕組みと経験を交えて語られます。「アーケードはワンコインでなぜ儲かるのか」「基本プレイ無料のゲームがなぜビジネスとして成立するのか」……プレイヤーとしては深く考えたことのない問いでしたが、読めばその仕組みが腑に落ちる。知識が増えるだけでなく、ゲームに対する視点が少し変わった気がします。歴史をたどる読み物、ビジネスを学ぶ実用書、そして誰かに語りたくなる雑学本、どの用途でも楽しめる〝本当にためになる〟1冊です。
世界的ゲームクリエイターの目にゲーム業界はどう映るのか

『桜井政博のゲームについて思うこと 2015-2019』
著/桜井政博 KADOKAWA 1650円
遊ぶ側には見えない、作る側の本音はどのようなものなのか。『星のカービィ』シリーズなど数々の名作を生み出してきたゲームディレクター・桜井政博さんが、その視点からゲーム業界を語ったコラム集です。世界的ゲームクリエイターでありながら、膨大な数のゲームをプレイするヘビーゲーマーでもある桜井さん。制作側とプレイヤー側、2つの立場からゲームを語り、制作哲学やゲームの楽しみ方、さらには仕事への向き合い方まで幅広く掘り下げています。両方の視点を持つからこそ抱く悩みや葛藤も垣間見え、作り手であることの難しさにも触れられます。書籍化にともなう過去記事の振り返りや、仕事道具の紹介など、読み物としての楽しさを増す要素も。本書は『週刊ファミ通』での2015~19年連載分をまとめたもので、このほかにも8冊刊行されており、いずれも読み応え抜群です。
eスポーツの未来は『ストリートファイター』から見えてくる

『CAPCOM eSports 「ストリートファイターリーグ」から見るeスポーツの未来』
著/CAPCOM eSports 白夜書房 1980円
いまやゲーム業界を語るうえで欠かせないeスポーツ。中でも2023年発売の『ストリートファイター6』は大きな成功を収め、eスポーツ業界を牽引しています。本書では、その『ストリートファイター』シリーズを手掛けるカプコンが、プロリーグ「ストリートファイターリーグ」を通じてどのように業界を盛り上げてきたかを語っています。特に印象的なのは、2021年以降に導入されたチームオーナー制の背景について。プロゲーマーのセカンドキャリアを支える仕組みとして、企業とeスポーツの接点を増やす目的だったことが書かれており、持続的な発展を視野に入れた戦略だったことがわかります。本書は2021年刊行で、旧作『ストリートファイターⅤ』の事例を扱っていますが、そこに示される戦略や思想は、現在の盛り上がりを理解するうえで重要な原点といえるでしょう。

〈選者〉
元プロゲーマー・ライター 桑元康平さん
2019から22年まで「すいのこ」として『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズのプロ選手として活動。現在は執筆活動に従事している。著書に『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館新書)。
撮影/黒石あみ(書籍) 編集/寺田剛治
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