「なんだ、この乗り心地の良さとシートのかけ心地の良さ、車内の静かさは!!まるで高級車のようじゃないか!!」そんな想定外の第一印象で試乗を始めることになったのが、ホンダの新型軽電気自動車であるN-ONE e:だ。
軽自動車の常識を変える驚異の完成度
ホンダの軽自動車のNシリーズの1台、プレミアム軽のN ONEのFFモデルをベースに電気自動車に仕立てたのがN-ONE e:だが、最初に断言すれば、軽自動車の常識、歴史を変える、とんでもなく上質、上級な、完成度の極めて高い軽自動車、電気自動車だったのだ。
驚いたのは乗り心地の良さとシートのかけ心地の良さ、車内の静かさだけではない。一充電走行可能距離は同じく軽電気自動車として先に発売された日産サクラの180kmに対して、N VAN e:と同じモーター形式MCF7、64ps、16.5kg-mの電動パワーニットを持つこちらはいきなり295km!!(いずれもWLTCモード)を実現しているのである。
グレードは装備充実、普通、急速充電ポートを標準で備えるL(319.88万円)と、普通充電ポートを備え、急速充電ポートがメーカーオプションとなるG(269.94万円)の2タイプが揃う。サクラより約10万円高の価格設定だが、一充電航続距離が180kmから295kmになるのだから、航続距離が大きな性能評価になる電気自動車としてむしろ割安に感じてしまう。なお、満充電までの時間は6kWの普通充電で約4.5時間、CHAdeMO 50kWに対応する急速充電では約30分とのことだ。
ホンダN-ONE e:の概要、パッケージ、後席やラゲッジルームの広さについては、すでにこの@DIMEで報告しているので、ここでは公道で試乗した、驚愕の印象をお届けしたい。
航続距離は295km!軽EVの常識を覆すホンダ「N-ONE e:」のとんでもない完成度
とんでもない完成度を備え、軽自動車規格の電気自動車としてこれまでの常識を覆す1台が登場した。それがホンダの「N-ONE e:」だ。これまでも軽自動車の電気自動車…
上質なシートと風切音とロードノイズの見事なコントロール
N-ONE e:の運転席に乗り込んでまず感動したのが、前席のふんわり分厚いクッション感を持つシートのかけ心地の良さだった。N ONEのシートもなかなか快適なのだが、パッケージは不変・・・というのになぜ、そう思わせるのか。開発陣に聞けば、シート骨格はN-ONEと変わらないものの、座面後端のクッションをより沈み込みやすく(たわみやすく)手を加えているという。結果、背もたれ面とともに、乗員の体がより密着しやすくなり、同時にフランス車のシートがそうであるように、体重によるサポート性も向上しているのである。N-ONE e:は主に女性ユーザー、セカンドカー需要を目論んでいるというのだが、それではもったいない、ロングドライブの快適性に直結する、軽自動車最上級、いや、下手なコンパクトカーを凌ぐ前席のかけ心地の良さがあるということだ。
N-ONEのレバー式とは違うボタン式セレクターをDレンジに入れて走り始めれば、シートのかけ心地の良さ以上の驚き、感動があった。それはまず、冒頭の「なんだ、この乗り心地の良さは!!」である。具体的には、重厚でしっとりとした、到底、軽自動車とは思えない、素晴らしく乗り心地のいい中型上級車に匹敵する快適かつしっかりとした乗り心地が軽自動車規格で実現されているのだから。
車内の静かさも電気自動車として一級だ。エンジンを持たない電気自動車だから静かで当たり前と思えるかも知れないが、実はパワートレインからのノイズがないぶん、風切音、ロードノイズが目立ちやすいのが電気自動車だ。1000万円超えの電気自動車ならそれらの遮音、防音対策にもコストをかけられるから、静謐な室内空間を可能にしているが、そこまでコストをかけられない価格帯の電気自動車は、まさに風切音、ロードノイズとの戦いであり、苦戦しがちな部分でもある。が、N-ONE e:は軽自動車、300万円前後の価格帯ながら、遮音、防音性能は文句なし。ロードノイズの小ささに関しては、試乗当日、乗っていったVWゴルフ8.5を圧倒するほどであり、14インチのヨコハマブルーアースのタイヤの静音性能(乗り心地性能)も効いているはずである。
64ps、16.5kg-mの電動パワーニットによる動力性能はそうした快適性、静かさに支えられたもので、N-ONEのターボモデルの64ps、10.6kg-mに対してトルクで圧倒するのはもちろん、動力性能に余裕がある軽ターボモデルがエンジンを高回転まで回す登坂、加速シーンで一気に車内が騒々しくなるのに対して、こちらは同じ登坂、加速シーンでアクセルペダルを深く踏み込んだとしてもパワーユニットはスムーズで静かなまま。それに風切音とロードノイズの遮断の見事さが加わるのだから、快適至極なシートのかけ心地と乗り心地の良さが相まって、2クラス上の上級車に乗っているように思わせてくれるというわけだ。
ちなみにN-ONE e:の車重は両グレードともに1030kg。N-ONEのターボモデルが860kgだからその差は170kg。N-ONE e:のバッテリー重量はおよそ190kgで、エンジン搭載に対してモーターシステムが20kg程度軽いため、190kg-20kgの170kg増となっているとのこと。そうした重量増も、ドシリと重厚な乗り心地にプラス方向に作用していることは間違いないとこだろう。
気になるリアルな走行距離は?
今回の試乗は横浜みなとみらい周辺の一般道に加え、首都高を延々と走ることができたのだが、高速域での静粛性ともに、直進安定性の高さも軽自動車らしからぬ印象が持てた。ただし、緊急回避的なレーンチェンジではバッテリーをフロア下に敷き詰めた低重心パッケージであっても、軽自動車規格のトレッドの狭さによってスイスイ、並行感覚の身のこなしとは言えなかった。具体的にはロールが少なくなく、ステアリングを切って戻す際に”おつり”がくる場面もないではなかったのだ。もちろん、ゆっくりとステアリング操作をすれば問題はないから安心してほしい。
ところで、試乗を開始したとき、90%充電、エアコンOFFの状態でメーターに示される航続距離は258kmと表示されていた。が、外気温26度のこの日だからエアコンをONにすると航続距離は210kmに減少。前に乗ったドライバーの運転の仕方に影響されるとはいえ、その落差が気になったのも事実。が、その後、自身のドライブ中にエアコンOFF/ONでの航続距離表示を確認してみると、差は30kmほどに落ち着いたから一安心だ。
これから秋、そして電気自動車の大敵と言われる冬を迎えるが、シートヒーターの装備やバッテリー加温/冷却システムと合わせ、ホンダ独自のECONスイッチ(エコモード)でエアコンとヒーターを制御し、冬場で約24%の航続距離分が確保されるというから、心強い。
そんなホンダのN-ONE e:は、ホンダが言う20~40代女性をターゲットとした”セカンドカー需要”だけではもったいないと思える、素晴らしく上質で快適で、このクラスの電気自動車としては余裕ある航続距離を備えた、気軽に、身軽にも乗れる特上の軽電気自動車であると結論づけたい。
文・写真/青山尚暉







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