
首都圏では新築マンションの価格高騰に伴い、中古マンション価格の上昇も続いている。では、東京23区において中古マンション価格が特に上がっているエリアは、いったいどこなのだろうか?
不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」はこのほど、首都圏で物件価格が上昇するなかLIFULL HOME’Sで掲載した東京23区の築30年以内の中古マンションについて、2020年と2025年(1月~7月まで)の駅別掲載価格の上昇率を調査し、発表した。
高騰する東京23区の中古マンション価格、エリアや駅に上昇率の違いや傾向はあるのか
2020年と2025年(1月~7月まで)にLIFULL HOME’Sで掲載した東京23区内の駅の築30年以内の中古マンションの掲載価格について駅別で調査した。
2020年は、平均掲載価格が「5,000万円未満」の駅の割合は全体の約6割(59.7%)、「5,000万円以上1億円未満」の駅は35.5%、「1億円以上」の駅は5%未満となった。2025年(1~7月まで)の「5,000万円未満」の駅は17.9%に減少している。「5,000万円以上1億円未満」の駅は56.2%、「1億円以上」の駅は25.9%とどちらも20ポイント以上増加している。
上昇率は掲載価格5,000万円ごとに区切り、さらに1億円以上は1億円以上1.5億円未満、1.5億円以上で分け価格帯別に比較する。
東京23区の駅別中古マンション上昇率ランキング
東京23区内の築30年以内の中古マンションについて2025年(1月~7月まで)の平均掲載価格が1.5億円以上の駅のうち、2020年の平均掲載価格と比較した上昇率1位は「六本木一丁目」(港区)の3.23倍となった。5年間で2億以上上昇して3億3,327万円となり、今回の調査全体を通して最高価格だった。1.5億円以上の中古マンションは、港区・千代田区を中心に上位10駅すべてが2.37倍以上の上昇となった。
「市ヶ谷」「半蔵門」の皇居周辺や「神保町」「秋葉原」の千代田区エリアでは2億円前後がスタンダード化している。ランキングからは職住近接と静かな住環境の両立ができ、これまでも掲載価格の高かった駅がさらに上昇していることがわかる。
[掲載価格1億円以上1.5億円未満] 東京23区の駅別中古マンション上昇率ランキング
東京23区内の築30年以内の中古マンションについて2025年(1月~7月まで)の平均掲載価格が1億円以上1.5億円未満の駅のうち、2020年の平均掲載価格と比較した上昇率ランキングでは、上位10駅はいずれも2倍前後だ。1位「豊洲」(江東区)は2.37倍、平均掲載価格が5,239万円から1億2,424万円へ上昇している。
上位には都心近接かつ生活利便が高い、湾岸の再開発エリア(豊洲・新豊洲・天王洲アイル・勝どき)やオフィスエリア(新宿・西新宿)、落ち着いた住宅エリア(代々木八幡・八丁堀・茗荷谷・大井町)が並んだ。
新築マンションの価格高騰と供給減により、中古マンションの優良物件へ需要が移るなか特に都心の利便性・資産性への評価が高まり、居住・投資の両面で選ばれる駅の価格が上昇している。
[掲載価格5,000万円以上1億円未満] 東京23区の駅別中古マンション上昇率ランキング
東京23区内の築30年以内の中古マンションについて2025年(1月~7月まで)の平均掲載価格が5,000万円以上1億円未満の駅のうち、2020年の平均掲載価格と比較した上昇率ランキングの上位10駅では1.73倍~2.09倍となった。1位の「辰巳」(江東区)は2.09倍で、平均掲載価格が4,173万円→8,719万円になっている。
上位10位には都心へのアクセスがしやすく生活利便性が高い城東エリアと、23区の南西・西側が伸長し、江東区が4駅を占め、世田谷区2駅、葛飾区・豊島区・目黒区・墨田区各1駅がランクインしている。
「金町」(葛飾区)、「経堂」(世田谷区)、「桜上水」(世田谷区)、「錦糸町」(墨田区)といった“日常の暮らしやすさ”に強みを持つ駅が並んでいる。掲載価格は8,000万~9,000万円台が中心で、「学芸大学」(目黒区)の9,718万円、「清澄白河」(江東区)の9,465万円など、複数駅が1億円に迫まっている。
[掲載価格5000万円未満] 東京23区の駅別中古マンション上昇率ランキング
東京23区内の築30年以内の中古マンションについて2025年(1月~7月まで)の平均掲載価格が5,000万円未満の駅のうち、2020年の平均掲載価格と比較した上昇率ランキングの上位10駅では1.42倍~1.49倍となった。1位「西台」(板橋区)は1.49倍で、平均掲載価格が3,325万円→4,958万円になっている。
上位10位は足立区4駅が最多、葛飾区3駅、板橋区2駅を中心に4,200万~4,900万円台となり2020年には“手の届く都心近接エリア”の駅も上昇している。いずれの駅も都心へ短時間アクセスが可能で、生活利便性や居住快適性も高いことから、幅広い世帯の需要が見込まれ堅調な伸びが見られる。
2020年には3,000万円程度だった「西台」や「西新井」(足立区)、「新小岩」(葛飾区)、「地下鉄成増」(板橋区)のような毎日の生活利便性の高さと通勤アクセスのバランスが良いエリアが5年で1,000万円程度上昇し、“5,000万円の目前”という新たな価格帯の基準となり始めていることがうかがえる。
LIFULL HOME’S総研 副所長/チーフアナリスト中山登志朗(なかやま としあき)氏 考察コメント
2025年8月のリリースで東京23区の“中古億ション率”が15.5%に達し、なかでも港区&千代田区では掲載物件の過半が中古でも億ションとなっている“異常事態”(LIFULL HOME’S「東京23区の中古億ション」調査参照)をお伝えしましたが、中古億ションだけでなく、東京23区では中古マンションの価格が全般に渡って大きく上昇しており、その上昇率もエリアによっては極めて高くなっていることが明らかになりました。
特に駅別で中古マンションが最も高額な「六本木一丁目」は、2020年比で3.23倍の3億3,327万円へと価格上昇している通り、価格の高いエリアほど価格の上昇率が拡大する状況にあります。これはまさに“局地バブル”の状態で、もともと物件価格が高額で資産性&ステータス性もともに高いエリアほど、実需以外の需要、すなわち不動産投機(買って貸すという“投資”とは異なり値上がりを待って売却)や相続税対策、株式からの資産付け替え、インバウンド需要などが特定のエリアに流入している証左とも言えます。
駅別ランキングの通り、2025年の平均価格が1.5億円以上の駅では上位10駅の2020年比が平均2.57倍であるのに対し、5,000万円未満の駅では平均1.46倍であることもほぼ実需のみのエリアとの価格上昇率の違いが浮き彫りになります。
ただし、5,000万円未満の駅でもわずか5年で1.46倍(多くの駅で1,000万円以上アップ)の価格上昇を示しているのは東京都内の中古マンションの特性であり、神奈川県では平均で1.30倍、千葉県では1.29倍、埼玉県では1.16倍の価格上昇にそれぞれ留まっています。交通&生活利便性の高さから居住ニーズ(実需)も投資価値の高さも東京都内の物件が突出して高いことが明らかです。
つまり、東京都内の中古マンションは実需と実需以外が重なり合う“分厚い需要”があり、新築マンションおよび新築住宅の価格高騰および供給減が継続する中では、今後もニーズが維持され、価格が上昇し続ける可能性が極めて高いと言えます。
<調査概要>
・集計対象:LIFULL HOME’Sで掲載された東京都内の中古マンション(築年数30年以内)
・集計期間:2020年および2025年1月~7月
出典元:LIFULL HOME’S 不動産データソリューション
構成/こじへい